第三十六話 顕現
ここではどうでもいいが、裏世界と表世界で転移後が違うようだ。
裏世界ではこんなに光り輝いていなかったから即座に攻撃にチェンジ出来たが、表世界では光が強すぎて一瞬頭痛がし、クラっとしかける。
まぁこの程度の痛みは慣れっこなので倒れると言うことはないけどね……
さて。光が淡く消えていったところで、一瞬で周りを見渡す。
アルフレクス、フェルは固定されていて、謎の容器を持っている男?女?まぁ……オカマだとして。がいる。
その間に俺はちょうど転移したようだな。
とりあえずアルフレクスとフェルを固定している物体を切る。
しっかりと切り終えると、待ってくれていたオカマが喋り始める。
「リルグレイシア何故ここに!?」
「何故って仲間のピンチには駆けつけるからね」
「まさかぁ、ジュグメア様より頂いた空間を破ったとでもぉ?」
「破った訳では無いけどね……運が良かったってだけの話ですよ。そもそも俺よく分からない空間に閉じ込められていたのか……」
最後の方はボソッと呟く。
そう言えば今全然緊張感がないな……
緊張し過ぎてた今までも良くないけど、緊張してないのも良くない。
油断大敵だ。自力で頑張ってきたものもあるが、俺が所持しているスキルはほとんどが神たちからの贈り物。
確かに自分の力ではあるけれど、貰い物の力で人より上だと勘違いするな?
まぁこう言うふうに余裕そうに考えてる時点で、お察しだけどね……
「まぁいいわぁ。強力な下僕が増えると思ったらぁ、プラス・マイナスがプラス出しねぇ。それに私にはまだ秘密兵器があるんですものぉ」
「秘密兵器が何だか知らないけど、お前らの主ジュグメアは俺がこの手で殺した。だから恐らく神的権限とやらは使えないだろうな。そもそも、この前の迷宮でクガベットが使用したことにより判明したことだが、神的権限とやらは俺にも効かないし、俺のパーティメンバーにも効かないようだぞ?」
アルティメットスキルのお陰だけどね。と心の中で補足説明する。
そう言うと、チラッと驚きの視線を向けて反応を示す。
えっとつまり、秘密兵器と言うのは神的権限ということかな?
神の力で命令するみたいな形なのに兵器なのか……とは思ったが、敢えてツッコまないし今ここではどうでもいい事なので触れるのはここまでにしておこう。
と、余裕ぶるな言っといて余裕ぶってる内容を思っていると、まだ他にもあったようで、高らかに声を発する。
「Only in this moment should magic and skill not exist」
英語だと!?
いや魔法の詠唱にも英語使われてたからなんら不思議ではないけど……
そんなことを考えている暇はない。
?えっと……魔法もスキルも否定している……つまり使えないということか……?
まぁ……いいさ、これで相手も使え無いだろうからな。
そう思っていると、突然メッセージが流れる。
【NAME:RILGLAYSIAはスキル「護為之力」によってスキルと魔法の封印をレジストし、成功しました】
ん??おや??
スキル「護為之力」とは??
まさか、名前にビクトレア入ってるけど、ビクトレアが言ってた加護がスキルと化してサポートしてくれるってやつか?
とりあえず今はラッキーだと思って流しておこう。
悠長に効果でも見てたら死にかねん。
はてさて。しかし、弾くのも困った物だな……いや、使えない振りをして相手が油断して近づいてきたところを殴るか?
俺の演技力にかかっているけど、自身はない。
いや、俺には無詠唱と言うパッシブスキルかどうかは分からないけど、それがあるではないか。
殿下に教えてもらった、自動で迎撃できる魔法。それを相手が認知できない程まで魔力を消すか。
よし、とりあえずは相手の出鼻を挫いてやるか!
そう思い、無詠唱で氷属性の自動迎撃魔法を発動させる。
雷属性でもいいが、いざとなった時に、即座に拘束に移せるのは氷属性魔法だ。
そして、剣を構える体勢をいつもと少し変えて、弓を引くような体勢にし、準備を完了させると、舐めているのか、こちらの準備を待っていた相手が、戦闘態勢をとる。
それを開始の合図と捉え、俺は相手に突っ込み、一瞬で間合いを詰める。
そして、剣を切りつける振りをすると、ゴブリィンを呼び出し、盾にしてくるが、本命はそちらではない。
俺の魔力が、相手を検知し、氷の槍を創り出し、追い打ちをかける。
相手は一瞬驚いた顔をしつつも、すぐさまゴブリィンを呼び出し、盾にする。
しかし、いくらか防ぎきれずに攻撃を喰らっていたいたが、どれも致命傷に至るほどの傷ではなかった。
相手が、一旦態勢を整えようと距離を取ろうとする。
そうはさせまいと、俺はすぐに距離を詰め、剣を切りつける。
相手は攻撃を防ごうとゴブリィンを呼び出そうとするが間に合わずに、攻撃が当たるかと思われた。
しかし、突然、世界がドクンっと脈うつ。
そして続けて俺の中に何かが入り込もうとしてくる感覚と共に激しい頭痛が襲ってくる。
一体……なんだ……?
飛びそうになる意識の中、ヘルクレットが喋りだす。
(リルグレイシア耐えろ!!耐えてくれ!!恐らく異状生命体が孵ったようだ!!お前の身体と意識を侵食しようとしておる!!)
返事は出来ないがさっきからずっとそうしている。
アルフレクス達が、俺を殺そうとするのを防ぐ為に守ろうとしている気配を感じる。
それらに応えるように少しずつ少しずつ、侵食しようとするものを押し返していく。
その間にも、意識が飛びかけるが、必死に繋ぎとめ、押し返す。
しばらくすると、押し返せたようで、痛みが収まる。
ほっとし、再び意識がとびかけるがなんとか留める。
すると、ヘルクレットが「よく耐えた」と褒めてくれているのを横耳で聞きつつ立ち上がる。
すると、相手も苦しんでいた。
先程まで完全に存在を忘れていたが、異状生命体は相手にチェンジしたようだ。
アルフレクス達にお礼を言いつつ、若干鈍くなっている腕で相手を殺そうと突き刺そうとするが、またもや当たる寸前で防がれてしまう。