第三十三話 動き出す思惑
遅れました。
ふぅ。今日も一日が終わった。
まぁまだ魔法は続きがあるけど、明日もやるそうな。
俺的には情報が貰えて嬉しいけど、信用に値しているのだろうか?
いや、殿下からは値しているだろうけど……
まぁあれだけ見張られてる中で行動できるやつなんていないだろうなぁ……
遠透視の魔眼に慣れるために魔法のことをやりながら周りを見てたら、影に隠れてはいるけどじっーとこっちを見てる使用人、騎士等が多数いた。
いや、遠透視の魔眼。「遠」って文字入ってるけど近い距離のも透過出来るみたいだ。
そして転移は基本、行ったところにしか転移できないはずだけど、遠透視の魔眼にリンクつつ、発動すると視線の先に転移出来るみたいだ。
殿下に教えつつ実践でやってみたら出来た。
この魔眼は重宝するけど、表世界で使えるかなぁ……まぁ今は眼の前のことに集中しようか。
と言っても夕飯食べた後だし、やることないから寝るか。
明日も魔法の訓練的なとこするんだから英気を養わないとね。
そう思い、部屋の灯りを消し、ベッドに入る。
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----side:???
夜の闇に紛れて動く人影が二つ。
それは、コーストロア王国。王都中央部に位置する王宮へ向かっていた。
「おい。何処だ?」
「王宮の中だ。恐らく警備が厳重だろうからターゲットの部屋に直接窓から侵入し、喉を掻っ切り次第即……」
「作戦までまた説明しなくて良い。時間が惜しい。とはいえ、もう準備は整っているからな。後はいつ顕現して下さるか」
「そうだな。……っとここだ。お前は反対側へ向かえ。ここにも、もう一人厄介なやつがいるからな。一つの場所に固まってくれたのはありがたい」
「……おう」
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--------side:リルグレイシア
パリン!!
ん?なんか今窓ガラスが割れる音がしたような?
ちょっと待て。ちょっと待て。この王宮の中にいる者じゃない気配がッ!!
違う気配を感じ取った次の瞬間、俺は思い切りベッドから飛び出す。
なんだ!?
そう思い、ベッドに目を向ける。すると人影が見えた。
そして、先程まで俺の喉があった場所には右手で柄を支えながら、刃はベッドに深々と突き刺さっていた。
俺がこれは不味いと思い、意識を切り替えると、既にベッドの上から人影が消えていた。
何処行った!?
いや焦ったら隙が出来てしまう。落ち着け。
まず。魔法での対処は、対クガベットの際のやつとか使うと部屋水浸しになってしまうし、そもそもそれ以外の魔法も部屋を破壊してしまう可能性がある。
そして剣。割と長めだから振り回せるほど部屋はでかくない。それにこれも部屋を破壊してしまう可能性がある。
だったら、外だ。ちょうどガラスを割って入ってきたのでそれを利用する。
剣、鎧を手に取り、外に出る。
「神之宴」
「神之宴」を外に出た瞬間発動させ、空中に浮く。
敵が攻撃してくる前に鎧を装着し、剣を鞘から抜き、対応出来るようにする。
って。忘れてた「小サキ王」をOFFにしたままだった…
すぐさまONに切り替え、敵の様子をうかがう。
すると、効果が現れたのか、敵の動きが鈍くなり、目で追えるようになる。
敵は王宮の壁、王宮を護っている壁をすごいスピードで動いていたようだ。
で、俺がその中央にいる訳だから、俺に攻撃したらその反動で受け身が取りづらくなるからいまいち動けていなかったらしいな。
外に出たのは2つの意味でプラスに出たのはラッキー。
そう思いつつ。敵に近付いて攻撃する。
勿論情報を聞き出すため、持ち手の部分でだ。
あっさりと気絶したのでそれをなんとか受け止め、部屋に持っていき、舌を噛み千切って死なないように猿轡を噛ませる。
ついでに抵抗できないように、そして、自殺出来ない様に椅子に固定しておく。
俺だけのところに来ていたのか調べる為に遠透視の魔眼を発動させようとすると、忠臣が入ってきてた様で話しかけてくる。
「リルグレイシア殿!!ご無事ですか!?何かありましたか!?」
「ん……?あぁ……。はい大丈夫です。どうやら侵入者の様ですね。もう撃退して、処置も施したのであとの対応はよろしくおねがいします」
王宮内を観察しながら返答する。
そして、殿下の部屋に向かっている人影を見付けつつ、忠臣に向き直る。
「情報を引き出させる為、そして逃げれない様に猿轡を噛ませ、あそこの椅子に固定してます。とりあえず対応よろしくおねがいします。自分はちょっと、殿下が危険に晒されるので助けに行ってきます」
そう言い、目で挨拶して、転移する。
ついた。っと。
殿下を切らないように上手く剣を伸ばして、侵入者の短剣を弾く。
流石に金属音が間近で聞こえたため、殿下も起きたようだ。
ガラスの割れる音で起きない点は目を瞑ろう……
剣を強めに弾いたので敵はしばらく動けないため、その隙に一瞬だけ殿下と目で会話し、侵入者の硬直が解ける前に剣の持ち手の部分で首の後ろの部分を死なないように叩いて気絶させ、猿轡を噛ませる。
それを見ていた殿下が、口を開く。
「流石だね。更には情報を手に入れるため生かすとは。恐れいったよ」
「いえいえ、こんな状況だからですし、たまたま相手が割と長めにスタ……硬直してたからですよ。少し短かったら外に出てからやってましたよ」
危ない危ない。スタンって言いかけた。伝わらないから、以後気を付けよう。
「ところで殿下、この人の加護って見れます?」
「見れるけど……いや。うん。分かった」
殿下は何を察したんだろうか。
まぁ、それはどうでも良くて、俺の被害妄想かも知れないけど、俺を狙ってきたと言う事は、人類滅亡組織員であると思うから、クソ神の加護持ちな気がする。
まぁ、何故殿下を狙ったかは不明だけど、恐らく俺と同じで計画を進める上で、邪魔。いや障害になるから。
とりあえず、全ては敵が情報を吐いてからだな。
加護に関しては殿下の「顕示の魔眼」で分かるけどね。
って俺のことを襲ってきた人物の加護を調べてもらう必要もあったわ……
まぁ……後からで良いか……?
「……リルグレイシアこいつの加護に、ジュグメア神の加護がある……」
殿下は何故か悲しそうに俺に伝えてくる。
俺も悲しそうに返事をしたいが、生憎理由が分からない為、普通に返事をする。
「なるほど。ありがとうございます。見てもらった理由は後から話しますので、とりあえず、この人と後、自分の方も襲われて、撃退済なんですけど、そちらの人が目を覚ます前に監禁しましょう。ちなみに、自分を襲った人物は自分を見張っていた騎士に対処を頼んだので恐らく監禁されています」
「あぁ……分かった」
殿下はそう返事をすると俺の後ろの方を見て指示を出す。
「この縛られてる人物を地下牢に監禁して、見張りを付けておけ。すまぬが、監禁でき次第この部屋の見張りも頼む。」
そう言うと、俺の後ろにいた騎士は俺に一礼し、縛っておいた人を連れて行く。
「さて、私は王に報告しに行くけど、リルグレイシア、君にもついてきて欲しいな」
「あっ、大丈夫ですけど、部屋に付いてきて貰っても良いですか?」
「ふむ。じゃあそちらから向かうとしようか」
殿下がそう言ったので一緒に転移する対象に殿下を含めて、俺が借りている部屋に転移する。
戻ると、俺を襲ってきた人物の姿は無く、俺を見張っている騎士の姿だけあった。
恐らく、地下牢にでも連れて行ったのだろう。
騎士が俺と殿下の姿を見て反応する。
「あ、殿下、リルグレイシア殿、侵入者の監禁を致しました」
それを聞くと殿下が応答する。
「ご苦労。私とリルグレイシア殿は共に王のところに報告しに行くから、この部屋を見張っててくれ」
「はっ!!」
「それで、リルグレイシア、ここに来た理由は……?」
「あっ別に、特別な理由があった訳じゃないんですけど、この王宮の兵士、騎士達の実力を疑っているわけじゃないんですけどもし、他にも侵入されていたりとかして、それに気づかず王の部屋に向かうと被害が広がる可能性があるので、それらを解決しつつそれも含めてちゃんと王に報告した方がいいかなと思ったからですね」
なんで、殿下がいるのに俺が偉そうに仕切るようなこと言ってるんだろうかね……?
幸い、良い人達なので、文句を言わずに同意してくれる。
「分かった。じゃぁ向かうとしようか。リルグレイシア、付いてきて」
殿下はそう言い、部屋から出ていく。
俺はそれに黙って付いていく。
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--------side:アルフレクス
なんとかバレずに侵入出来たが……
思ったよりも入り組んでいてどこに向かえばいいか分からない。
敵が来そうになったらたまたま習得していた「迷彩」で一時的に壁の中に空間を作って隠れることは可能だが……
虱潰しでやって行くには時間がかかり過ぎる。
どうやら思ったよりもリルグレイシアに頼り過ぎていたようだ。
あいつがいなくなった途端このザマとは……合わせる顔がないな。
そう自分の中で落ち込んでいると、フェルミステが助け舟を出す。
「アルフレクスさん、あっちから凄まじい程の腐敗臭がします。あっちに向って見ませんか?」
そう言って、フェルミステが指したのは何やら怪しい光が見える通路だった。
行く宛も無いので、そちらに向かう。
「分かった。そっちに向かおう。何もなかったら、しょうがないから虱潰しに探して行こう」
「了解です」
敵にバレないように静かに会話し、フェルミステが指した方に向かっていく。
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--------side:人類滅亡組織(裏世界)
……ここは?
そうだ、私はターゲットを殺しに来た筈だが……?
目が明るさに慣れてきつつ飛び起きる。
しかし、勢い良く飛び起きたら、それを阻止するものがあり地面に大きな音を立てながら体当たりしてしまう。
何だこれは!!と思い自分の様子を確認してみる。
手と足には手錠。口には猿轡。
どうやらターゲットの殺害に失敗し、身柄を拘束されたらしい。
私が担当したターゲットを殺害できなかったのは痛いが、王子を担当した方は成功したからマシだな。
そう思い周りを見渡すと、私の隣に人影があり、それをよく観察して見ると王子を担当した人物の様だ。
……あぁ……どっちも殺害に失敗したようだ。
そう落胆しつつも、これはチャンスだと思い、「魔力流出」を行う。
私と隣にいる人物の魔力全部と生命力をジュグメア様に捧げる!!
きっとジュグメア様が私たちの不甲斐ない失敗を世界を創り変えると言う華々しい成功で飾ってくれるだろう。
ジュグメア様のお姿をこの目で拝見出来ないのは何たる不幸だ。が、これ程、悔いの無いように死ねるのはジュグメア様のお陰だ。
あぁ……私は幸せでございます。
ジュグメア様……
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--------side:リルグレイシア
殿下についていくと、一昨日辺りに行った謁見の間ではなく、王の私室に向かっているようだ。
まぁ……こんな夜中まで謁見の間に居るのがおかしいか……?
そんな事を考えつつ、廊下から見えるこの街の一帯を眺めながら歩く。
すごいなぁ……ハウロスジェーン王城から見た王都の景色も凄まじかったが、コーストロア王城からみる王都も凄まじい。
そんな壮大な景色を眺めていると、遠くの方でピカッと光る。
何だ?と思いつつ遠透視の魔眼で見る。
次の瞬間俺は殿下を守る様に魔法の防壁を張る。
そう。俺が見たのは魔法陣であったからだ。
その魔法陣の輝きは王城まで包み込むほど眩く輝き、一瞬にして消えていった。
そして、ここからじゃよく見えないが、俺の魔眼はその正体を捉えていた。
それは、神々しく光り輝き。
それは、神より生まれたかの如く美しい人物。
そして、それに思わず見惚れていると、その人物は高らかに宣言する。
「表裏世界の神々が一柱。堕落神ジュグメアとは私のことぞ。さぁ、裏世界の民たちよ!畏れよ!恐れよ!!今から滅びゆく民たちよ。私に願わくば、生かしてやろうぞ。私に反抗するなれば世界とともに滅びてゆけ。どちらを選んでも私は慈愛を持って接してやろうぞ!」
と。
そう言えば「…」と言う記号「……」って6つ続けなきゃいけないことを忘れてました。
後で直さないと……頑張らなきゃ……
無理しない程度に頑張ります(?)