第ニ十七話 臨機応変
脳が激しく混乱する。
しかし、混乱しながらもフェルが叫び声を出そうとしてたのを止める。
一体どういうことだ?
何故アルフレクスの部屋にゴブリィンがいる……?
いや、布団の上に転がってる服を見れば分かるけど、もしかして、アルフレクスがゴブリィンになっている……?
恐る恐る声をかけてみる。
「……お前……アルフレクス……か……?」
声を出さずにこくんと首を縦に振る。
良かった意識は残っているようだ。
でも一体何故……?
とりあえず声は出せるかを聞く。
「アルフレクス、声は出せるか…?出せるなら一応「あ」って発声してくれないか?」
「☓○」
「え?」
濁ってよく聞こえなかったが、ゴブリィンの言葉か……?
これはマズイな。事情聞けねぇ。
分身でも作ってそっちに意識を移させでもしなきゃ聞き取れなさそうだな……
ん?分身?意識移し?
そうだ、ヘルクレットに聞いてみようか。
(ヘルクレットすまん)
(ん?どうした?)
(お前、他人が作った分身体に、その作った本人の意識を移すことって可能?)
(可能だが、微妙だな。成功するか失敗するか分からん。なんせ試したことがないからな)
(失敗したらどうなる?)
(別になんてことは無いぞ。成功はそのままで分身体に意識が移れたってことだし、失敗しても意識が移れてないだけ。別に害はないが、失敗した場合はそいつにはもう意識移しは効かなくなる)
チャンスは一度きりとはまさにこのことを言うのだろうな。
ヘルクレットの度量に期待するしかない訳だ。
まぁ、ヘルクレットの力は信頼してるから、成功させてくれる……はず。
(よしじゃあ、準備しといて、こっちの準備が終わったら呼ぶ)
(分かった)
可能性にかけるしかない。
そもそも、アルフレクス(ゴブリィンver.)が分身出来るか分からないのに……
そして俺は主に分身体にヘルクレットを移動させてるから魔力消費は作る分しか消費しないし、それにヘルクレットを移動させてるのは魂ごとだが、今回の場合、意識だけを移動させるこの2点を踏まえると、アルフレクスが分身体で長時間行動するなら、魔力消費もかなりのものになるだろう。
なので、俺に出来るかは分からないが、俺の魔力でアルフレクスの分身体を維持できるようにしたい。
ちなみに「神之宴」の魔力無限はバトルフィールド外でも何故か適応されたので、それを利用する訳だ。
まぁ、バトルフィールド内は永続だが、外だと6時間程度でその効果が切れてしまうようなので、6時間おき位には発動し直さなくちゃいけないけどね。
時間感覚は分からないけど魔力がちょびっと減ったら発動という感じで恐らくいいだろう。
…効果が上書きされるかは分からないが、寝る前に発動させてから寝たほうが良いだろうな。
そもそもアルフレクスの分身体の姿ははゴブリィンなのか?人間なのか?
まぁ全てはアルフレクスが分身体を作れてからの話だ。
とりあえずアルフレクスに確認しよう。
「アルフレクス、分身体は作れるか?」
「○☓△□=#+×÷@△□△△□□□△△」
「□△○」
【NAME:ALFRECSは無属性魔法「分身」を発動】
おお、発動出来たみたいだ。
そして、分身体は人間の姿のままの様だ。良かった。
よし。じゃぁアルフレクスに説明してから始めるとするか。
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説明し終えたので始める。
っとその前に「神之宴」を発動しよう。
「神之宴」
【NAME:RILGLAYSIAはスペシャルスキル「神之宴」を発動】
オッケーこれで準備万端だ。ヘルクレットに声をかけよう。
(ヘルクレット、準備できてるか?)
(おう。準備万端だ。いつでも大丈夫だ)
(じゃよろしく)
ひとまず意識移しはヘルクレットに任せておこう。
俺はなんとか分身体によるアルフレクスの魔力消費を俺の魔力消費に置き換えないと。
まぁ魔力リソースを俺に置き換えたとしても、本体はアルフレクス本人なので、本人がこの世から消えてきまえば、分身体も消える訳だけど。
ちなみに分身体が消えたとしても意識だけなので、そのまま本体に戻る。
っと余計なことを考えず、集中しよう。
さて無属性魔法で何とか俺の魔力を分身体に流れる様にしてっと……
オッケー出来た。
次に、闇属性魔法でアルフレクス本体から分身体に送られてくる魔力を切断してっと……オッケー。
ただ魔力供給回路的なのを切断しただけなので、アルフレクスの魔力は何にも使用してないのに垂れ流し状態にあるから、これを闇属性と無属性の混合魔法で、魔法使用時のみ消費するように供給回路的なのに繋げてっと…オッケー完了。
ふぅ……初めてだったけど何とかできたようだ。
さて、ヘルクレットはもう少しだろうか?
ちなみに魔力供給回路的なのを切断接続したのは魔法だけど、一応魔力は精神部分とも関わってるから精神干渉出来ない俺には至難なはずなのに楽に出来た。つまり、ヘルクレットの精神干渉の効果が俺にも得られたって事だろうか。
まぁ、元は俺とヘルクレットっていう別々だけど、現在は俺という同一人物だから効果が得られたと言う訳かな……?
じゃあ何故クロノス救出のときは得られなかったのかは疑問だけど。
いや効果が得られたかなんて今はどうでもいい。
ヘルクレットが終わるまで待ってようか。
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------数分後
随分と掛かるんだな……
てかフェルの存在を忘れてたけど、どうなってるんだ?
流石に部屋の中だから襲われる。なんてことはないだろうから気絶してるか、混乱しながらも待ってくれてるかの二択だろうけど……
まぁ、どっちにしろ、今体が動かせないので、何もできないけどね。
と、一緒に来ていたフェルの事を気にしつつ待っていると、ヘルクレットから声がかかる。
(終わったぞ)
(お疲れ。どうだった……?)
(中々に苦労したが成功出来た)
(了解。ありがとう)
良かったぁ。いやまだ安心出来ない。
体をうまく動かせるか、動きに支障があるかなんか確認しないと……
それに何故ゴブリィンになっていたかも聞きたい。
……喋るのは人間語かも分からないけど……
「アルフレクス、喋れるか?」
「おう」
良かった。分身体の発声までもゴブリィンだったらやばかったな。
「とりあえず聞きたいことがあるんだけど、分身体は大丈夫か?うまく動かせるか?」
「大丈夫だな。なんの支障も無い」
「それは良かった。ちなみに分身体の魔力消費を俺のに置き換えたから心配しなくていい。俺の魔力消費についても「神之宴」の魔力無限で大丈夫だ。ところで本題だけど、何でゴブリィンの姿になってたんだ?」
「俺にも分からないけど、朝起きたらなってた。だから、不味いと思って部屋から出なかった」
「なるほど。詳しい話は飯の後に話すけど、俺も明け方頃にゴブリィンの姿を街中で見かけた。ただ、そのゴブリィンは陽の光に当たったら溶けて消えてしまった。だからとりあえずお前の本体は陽の光に当たらないように隠しておこう」
「隠すと言っても場所がな……」
「生きている訳だから雑にできないな……置く場所がないから、朝は布団に隠しておこう」
「それしか無いよな……」
雑に扱えない言うといて雑に扱ってるけどね……
しょうがない。
氷漬けにしないのは、あの戦争の際のはある意味で本人を一回殺してるから……
それに、あの時は意識を完全に失っていたから今回の様な措置取れなかったし、何より、人数が多すぎる上に「神之宴」と言うスキルを持っていなかったからしょうがなく氷漬けにした。
どうでも良くないけど、今はどうでもいいことを考えつつ本体を布団の中に隠す。
そして再び話しかける。
「アルフレクス、先に飯に行ってるわ。お前は着替えてから合流しよう」
「分かった」
アルフレックスとそう会話し、部屋の外へ出る。
ちなみに幸いなのかどうかはわからないが、フェルは気絶してたので、部屋の外へ運び、起こす。
「おーい。フェルー起きろー」
「ん。私は一体……?そういえば、アルフレクスさんの部屋に入ったらゴブリィンがいたような……ハッ!リルグレイシアさん大丈夫ですか!?」
「大丈夫だよ。そしてアルフレクスの事情は後で話すから。とりあえず夕飯食べに行こう」
「??? よく分かりませんが、了解しました」
先に二人で食堂へ向かい、夕飯を食べる。
宿屋の主人さんは気にかけてくれてたみたいで、声をかけようとしてたので、「大丈夫でした」と言ったら安心していた。
似たような終わり方前もした気が…
まぁそれは置いといて、後半訳が分からなかったらすみません。