第三話 陸の追撃者と空の狙撃者
ギルマスの死ねという意味……死ねは言いすぎか。
死んで貰っても構わないという意味の理由で指名された依頼(調査クエスト)を受けた俺たちは王都の東にある魔物の森に来ていた。
ここからが本番だ。気合を引き締めていくぞ。
とりあえず、森に入る前に緊急時の対処法を話し合っておこう。
「アルフレクス。森に入る前にちょっといいか?」
「ん? なんだ?」
「いや、緊急時の対処法を話し合っておこうと思って。こういう打ち合わせをしっかりしないと本当に死んでしまいかねないから」
「分かった」
「まず、魔石持ちの魔物が現れた場合は、転移魔法を使って王都の門まで飛んで、そこから王都に入ってまた転移魔法を使って、ギルドに報告しに向かう。その魔石持ちの魔物が、魔法の発動先を読み取って追ってきた場合はどっちかが警備兵と共に食い止めてて、その間に片方がギルドに向かって応援を貰いに行く。これでいいか?」
「いいけど、どっちかが食い止めるってどっちがやるんだ?」
「お前がやりたいならいいぞ。どっちがやるにしても、ピンチになったらメッセージを飛ばしてくれ。じゃないと、片方が死んでしまう可能性がある。そして、応援が来る前に倒せそうなら倒して構わない」
「俺はどっちでもいいぞ。ただし。リルグレイシア。お前は多少無理してでも人を助けようとするから、言わせてもらう。無理だけは絶対にするな」
「おう。分かった。じゃあ、俺が食い止めて、お前が応援を呼びに行く。これでいいな」
「いいぜ。じゃあ入ろう」
最近ヘルクレットが話しかけてこない。一体どうしたんだろうか。
まぁ今はそんなことはどうでも良い。クエストに集中するぞ。
話し合った後、俺たちは森の中に入り、異変がないか確認する。
道中、やたらと魔物が現れて襲ってくる。生憎俺たちは東の森の情報をもっていない。けれど他と比べて数倍の頻度で現れる。これは異常なのであろうか。とりあえず、異常認定しておこう。
というか、現れる魔物がトレント系の魔物「ベビートゥレント」「フォレストトレント」「バイオトゥレント」の三種と飛行型の魔物「ギム」「クジャマク」「カラマロリ」の三種しか現れない。ゴブリンなどが現れる気配がない。明らかにおかしい。ゴブリンやスライムは魔物の森、国と国との道中全ての所にいる筈だ。例え、偏る種類が違くともどこにでもいる。何なら、砂漠にも「デザートゴブリィン」「デザートスライム」という種類もいる。それほどスライム、ゴブリンは繁殖力(分裂力)が強い。そのような魔物がいない時点で異常と言っても構わない。
あ。ちなみに「ベビートゥレント」は全長170㎝にも満たないトレント。主に葉っぱをカッターのような鋭い形状に変化させて攻撃してくる。「フォレストトレント」とは蔓や枝など多種多様な攻撃をしてくる。それこそ、攻撃の七変化と言っても構わない。「バイオトゥレント」とは、葉っぱを飛ばして攻撃してきたり、蔓を使って攻撃してくる。その葉っぱと蔓に刺される、または切り傷程度でも着いたら、毒を注入され、翌日には木になっているという、かなりエグイ毒をもっている。まぁ、攻撃パターンが同じ攻撃しかしてこないので、避けるのは容易い。「ギム」は小型の鳥でキツツキのような見た目をしている。クチバシで攻撃してくるが、毒もないし、皮膚を破く程力のこもった攻撃をしてこない。ただし、物凄く素早く、個体によっては音速をも超える個体もいる。まぁ、そんな音速を越えてもチクっと感じるくらいで皮膚は破けていない。「クジャマク」はクジャクとスズメを足して2で割ったような見た目をしている。鋭い羽を飛ばして攻撃してくる。「カラマロリ」はキモイ。かの有名な害虫認定された油の腐った匂いを発する生き物とカラスを足して1/2で割った見た目をしている。攻撃手段は油の腐った匂いの中にドクダミを入れた匂いがする、唾をはいてくる。とにかくキモイ上に臭い。
出てきた魔物の特徴は以上かな。
そんなことを考えていると、少し広いところに出る。
周りを見渡すと、神秘的な光景が映し出されるが、これは俺が知っている。
この神秘的な光景を映しだすのはあの魔物しかいない。――陸の追撃者「ジャンボフォレストエルダートレント」危険度はSSS
しかし、ここまで強力な幻影を作り出せないはずだ。さっきから、幻影の解除を試みているが、後一歩ってところではじかれる。もしかして、魔石持ちか?早くしないと、アルフレクスが危ない。
そう思いながら解除を試みる。
「早く解けろ!!!」
そう叫んでようやく解ける。
ようやく解けたところで、もう一つ上空から影が見える。
あの巨体、あの特徴的なフォルム。あいつしかいない。――空の狙撃者「クリティカルギャングオウル」危険度SSSS――
なんでこんな奴らがここに!?
普通「ジャンボフォレストエルダートレント」はこの大陸の東端で最大の魔物の森にいて、「クリティカルギャングオウル」は北端で第二に大きい魔物の森にいる筈だ!
とにかく不味い、アルフレクスも驚愕で固まっている。
アルフレクスを範囲指定にいれて、転移を開始する。
しかし、解除されそうになるが、ギリギリ、転移できる。
とりあえず急いで、伝えないと!そう思い、再び転移しようとするが、魔物の森から、足に「ジャンボフォレストエルダートレント」をかけて、こっちに向かってくる「クリティカルギャングオウル」の姿が見えた。
皆さんは油が腐った匂いのする虫を踏んずけたり、手に乗られたりした経験はございますか?
作者は昔いとこの家に行ったときに素足で踏んずけたり、朝起きたときに手に違和感あると思って右手の親指を見たら、へばりついてたりしました。
そのせいで、まだ、GKBRの方が可愛く思えてくるほどその虫に嫌悪を覚えています。
あ。GKBRが好きなわけではないのでご注意を。
最近ではその虫のせいで、虫を見るたびキモって思うほどトラウマ化してますね。
昔めっちゃ大好きだったのに(笑)
あっ。魔物の森から間接して王都に転移しなければならないのは、最悪の亜竜とグラスディプコディアの事件によって、王都全体に魔法妨害の結界を貼ったからですね。
なので普通は間接しても転移できないのですが、リルグレイシアが結界を貼ったから、一部の人はできるというわけです。それでも間接する理由は王都と、魔物の森の距離が遠いため、綻びをかけれないからです。
ちなみに、ほころびをかけれるのは、王と、主人公とアルフレクスのみです。