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Xmate -クロスメイト-  作者: 紅弥生 
最終章 滅びか、創造か。
104/104

END 行く末は人間が決めるもの。

 目一杯息を吸い、吐き出す。

 再びここに戻れたことを、彼らに感謝し、眼を開ける。

 そして、敵であったはずの、男性にも追悼の意を込めて軽く黙祷をする。


 その男性のことはあそこではなにも知り得なかったが、『信頼之源(フルエンス)』の発動中にそのことを知った。

 己を悔いて、知らない他人にあぁも願えるのは心から優しく、清らかな人間だろう。

 そんな人を憎むなんてことはできない。

 そもそも彼を利用した元凶が全て悪いのだ。

 そんな彼の為にも、目の前のやつを倒さなくては。


 その前に。


 アルフレクスとフェルミステと、ルクレマス殿下と、ヘルクレットを近くに寄せ、俺を運んでくれていたはずの王宮の部屋へ、移動させる。


「ありがとう」


 そうして、彼女に向き直る。


「やぁ、はじめまして。というべきか。それとも、久しぶり。というべきか。それとも、助けてくれてありがとう。もいうべきか。まぁいいや、元気にしてた?ハリストロス?」


「な……な……」


「まぁ、驚くのも無理もないよね?なんせ、自分だって、思い出したのはついさっきだもん」


「何故、お前が、神龍アルエリアルが……!!」


 そう。先程、思い出したのは、アルエリアルとしての記憶だった。


 神龍だった俺は、元々一つだった表世界と裏世界を統治していた。

 統治していたとは言っても見守っているだけだ。

 それから色々あり、ヘルクレットと言う竜が産まれた。

 そのヘルクレットはすくすくと育っていった。

 しかし、ある日、ヘルクレットの母親は殺された。

 その時それを丁度いいと見定めたハリストロスは、異状生命体という存在を無理やりこの世界に創り出した。

 奇しくも、それに堕ちてしまったのは、ヘルクレットだった。

 異状生命体となったヘルクレットは無差別に殺戮を繰り返す。

 しかし、ヘルクレットの心は泣いていた。

 異状生命体になった原因は自分にもあり、ヘルクレットの心を知っているため、これ以上苦しませたくないと思い、無理矢理この世界に干渉し、ヘルクレットを倒した。

 その際に色々ヘルクレットにスキルを譲渡してしまっていた上、無理にこの世界に干渉した影響で俺はそのまま死んだ。

 傷付けられていた俺の魂は輪廻転生することなく、地球へいき、それ以降は知ってのとおりだ。


 だが、それでも、神覚伝乱も残ってくれていてありがたかった。


 さて、昔話はこれくらいにして。


「再開を歓迎してくれるのはありがたいが」


 ヘルクレットに譲渡していないスキルを発動させながら、言葉を紡ぐ。


「隔世神ハリストロス。君は充分間を開けてやっていたとは言え、見守るだけでいいのにここまで干渉するんじゃない」


「何を!落ちぶれ神龍ごときが!!」


 そういった、ハリストロスは懲りずに人間のスキルごと、俺のも封印しようとしてきていた。


「無駄だよ。君の十八番は分かっているからね」


 自分のスキル封印解除のやつを発動し、無理やり押し返す。

 それをしながら、彼らがお目覚めになったのを感じとる。


(今回だけじゃ足りないだろうけど、信頼出来ていなかったお詫びでいいかな)


 そう思った瞬間、チラッと振り返ると見慣れた顔が先程入れた部屋から出てくるのが見える。

 もちろん、ハリストロスには牽制している。

 そうして、彼らは俺の周りによってくる。

 ヘルクレットが「お父様……」と言う顔をするので、アルフレクス達に気づかれないように口の前に人差し指を持っていって隠してて、という合図をする。

 そうしていると、アルフレクスが代表して聞いてくる。


「お前……リルグレイシア……なのか?」


「勿論。あぁ身体は、そこの隔世神ハリストロス様に取られてるから違うけどね」


 今の身体は、神龍の人間時の身体。

 リルグレイシアとしての身体はハリストロスに占領されたままである。


「じゃぁ、取り戻すしかないね。手伝うよ」


「ありがとう。だけど、ごめん、ちょっと俺、剣で戦えないから、アルフレクス前出れる?」


「あぁ。あぁ!任せてくれ」


「ルクレマス殿下とフェルミステはいつものようにお願い」


「了解」


「分かりました」


「ヘルクレットは……大丈夫なら、俺の補助をしてくれない?」


「 ……は……いや、分かった」


 ヘルクレットは俺に気を使ってくれ、アルフレクスたちは頼っているのを明らかにすると嬉しそうに対応してくれる。


「じゃぁ、いくよ」


 アルフレクスが剣となり、盾となり、前に出てくれる。

 ルクレマス殿下やフェルミステは、アルフレクスが受け止めている隙に攻撃して、ハリストロスをジワジワと削る。

 俺は、神覚伝乱を駆使して、受け止めきれていない攻撃を食い止める。

 いつの間にか、皆との戦闘に夢中になっている。


 それほどまでに、他人を信頼する。

 というのは気が楽になり、一つのことに夢中になれるのだ。


 やがて、ハリストロスは動きが鈍くなってくる。

 その瞬間を狙って、動きを止めるスキルを発動させる。


「みんな!!」


「「「分かった!!」」」


 俺とヘルクレットを、除く、みんなの攻撃が、ハリストロスに集中する。

 首が跳ねる。

 それだけでは普通はハリストロスは死ぬことは無いだろう

 だから。


「ヘルクレット、ハリストロスの魂が見えるか?」


 そう小声でヘルクレットに話しかける。


「はい、お父様」


 やはり、思い出したのだろう。自分の正体に。

 そして、今は小声で話しているので、大丈夫だと思ったのだろう。

 それを気に留めず、続ける。


「念の為、握りつぶしてくれないか?」


「分かりました」


「手助けするから、場所はそのままでいい」


 そのままの位置で魂に手が届くようにする。

 ヘルクレットは手で、なにかを掴むと、それを握りつぶす動作をする。


「出来ました」


「うん。ありがとう」


『ギィャァァァァァァァ!!!!!!!』


 そう耳障りな雄叫びをあげ、俺の元の身体から何かが抜けていくのが分かる。

 すかさず、身体を治癒する。

 みるみる間に首と胴体がくっつく。

 完全にくっついたところで、自分の身体に入り込む。


「うん。やっぱり馴染むけれど……だめだな。もう」


 ぼそっと呟くが、首を振り、リルグレイシアとしての身体で皆に向き直り、感謝を述べる。


「みんな、ありがとう。助かった」


 そう言うと、みんなして抱きついてきたので、俺もできる限りの抱擁をする。


 ただ、一人、ヘルクレットは泣きそうな顔をしていたが。


------------------------------------------------------------

----その夜


 王様への報告を終えると、夜会になった。

 その夜会の時間はゆっくりと過ぎ、皆それぞれに楽しんでいた。


 その夜会も終え、リルグレイシアは王様が用意してくれた客間の自分の部屋にたたずんでいた。

 その身体は寒くもないのに震えていた。

 

 コンコン。


 不意にそうノックがされる。


「……入っていいよ」


 そう返事をし、扉が開くと、そこにいたのは、ヘルクレットだった。


「お父様」


「どうしたんだい?もう、早く寝たほうがいいよ」


「……スキルをお返しします」


「ッ……」


 神龍としての自分のスキルは、神覚伝乱を筆頭とし、スキル封印系やスキル封印返し系。治癒系、攻撃系、精神操作系、時間操作系など、多岐にわたっている。

 そのうち、ヘルクレットに譲渡していたのは、精神操作系、時間操作系である。


「気づいていたんだね」


「はい」


 そう、やはり、神のスキルを用いてこの世界に干渉したのがいけなかった。

 いや、正確には、ヘルクレットの魂の消耗を肩代わりしながら、自分でも魂を消耗していた。


「ヘルクレット、そのスキルはあげるよ。好きに使って」


「ですが……!!」


 その結果として、リルグレイシアとしての身体は無事だが、中身が崩壊しかかっていた。

 確かに、ヘルクレットが暗に行っているように、時間操作系スキルで崩壊しないようにしながら完成された状態まで耐えれば、生きることは可能だろう。


「もう、いいんだ。いい仲間を持て、最後に信頼しあえた。それに、ハリストロスを懲らしめてやることがてきた。俺はそれでもう満足なんだ。そもそも俺は既に2度も死んでいる身。3度も生を受けることができたのだ。これ以上贅沢を言うまい」


 本当は嘘で、言葉も上手く選べなかった。

 でも、本当にもう、いい。


「ヘルクレット、おいで」


「はい」


 そう言って近づいてくるヘルクレットを優しく抱擁する。


「ごめんね。神龍なのに、俺が不甲斐ないせいで、彼女を殺してしまい、君を最悪な存在へと陥れ、自らの手で君に手をかけてしまった」


「お父様。いいんです。お母様は無理でしたが、その不甲斐ない、父のお陰でこうしてまた、出会えたんですから」


「……っ。ありがとう。そう言ってくれると自分の不甲斐なさが誇らしく思えてくるよ……」


 そう、言い


「じゃ、最後に一仕事するね。俺のスキルを譲渡したのに、魂が消耗したらいけないからね。」


 最後の力を振り絞り、世界に干渉する。


「うっ……」


 やはり、とても厳しいがなんとかなる。


『我が魂を以て、この世界の住民は如何なるスキルを使用しようとも、魂を消耗せず使用することができる。これを生き返りし神龍アルエリアル。ここに宣言する』


 パァン!!と一筋の光の柱が空に駆け上がり、世界に広がる。


「ふぅ……よし……じゃ、疲れたから眠るね」


「はいっ…!!はいっ!!お父様!!ありがとうございました!!」


 そうして、ベッドの上に横になる。


「アルフレクスたちのこと、頼んだよ」


 そう言って、リルグレイシアは眠りにつく。

 その瞼はもう二度と開くことはなく。


 一晩中、一匹の竜は涙を流していたのだった。





Xmate Beginning Story -世界の行く末- 完

これにて完結とさせて頂きます。

ここまでお読み頂き、ありがとうございました!!

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お読みいただき有難うございます
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