第十八話③ 〜一匹の竜の戦い〜
----side:ヘルクレット
どうすれば、敵に付け入る隙も与えず、こちらからも攻撃できる状態になる?
元は、最初の異状生命体だったはずの我も落ちるところまで落ちたな。
こんな者にする対処も何も思い浮かばない。
どうすればいい……?
戻ってくるかもわからないリルグレイシアにかけるのは良くない。
だが、打つ手がない。
リルグレイシアさえ……
?……!!
(フェイクの隙に騙されるな、とはいったのに、結局騙される真似をするとはな)
リルグレイシアの魂が、揺れて見える。
なにか枷がかけられていて、抜け出せそうに内容に見える。
解き放ってしまえば、どうなるかは、わからない。
が、可能性にかけるしかない……!!
敵に一気に近づき、リルグレイシアの魂を掴む。
同時に、自分自身の身体も掴まれる。
「うぐぅぅぅうぉぉぉ!!!」
我の力が吸い取られるのを感じる。
恐らく、先程、我だけが吹き飛ばされなかったのはこれが理由だろう。
そんな中、リルグレイシアを解き放とうともがく。
その瞬間。
北、東、南東、南西方向から光の柱が上がる。
大きな力な流れを感じる。
それを、敵も感じ取ったのか、気を散らす。
それを我は見逃さず、余力を込める。
「うぉぉぉぉ!!!らぁ!!!」
なんとか、リルグレイシアの魂を解き放つことに成功する。
しかし、それで、我も力を使い切り、敵も弾かれたように我を離す。
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「いつも、ありがとう」
3人にリルグレイシアの声が響いたかもしれない。
それは一瞬で淡く消えていった為、あやふやだ。
しかし、その声は、3人からある願いが生まれる。
----もし、リルグレイシアが生きているなら、助けになりたい。
そう願いが生まれる。
いや願わずにはいられないというところだろうか。
死んだわけではないが、もう生存している見込みが薄いリルグレイシアがもしも、生存しているならと。
普通なら願いが叶うような現象は起こるわけがない。
しかし、まるで3人の願いが届いたかのように、もう少しで地面に激突しそうになっていた3人を、光の柱が包み込む。
それは3人のところだけじゃなく、南西方向も光の柱が包み込んでいた。
そして、その柱は、3人の魔力を穏やかに吸い取っていく。
魔力が吸い取られていく感覚はおぞましいものであるはずなのに、安らかにそして、暖かに吸い取っていく。
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ヘルクレットは落下していた。
しかし、それはまるで、時がゆっくり流れているかのように落下していた。
(情けないな。リルグレイシアがいなければ何もできないではないか)
ゆっくりとした中、ヘルクレットはそんなことを考えていた。
だが、リルグレイシアを解き放った。
どうなるかは分からない。が、今はその可能性に縋るしかない。
(信頼しているぞ、リルグレイシア)
そう思った瞬間、微睡みの中で光の柱に包まれたのが見える。
「思い出して……」
リルグレイシアでも無い声が聞こえた。
意識を手放しそうになる中で思案する。
(思い出す……?何を? いや、そうか、我は、神龍の……)
ヘルクレットの思考は最後まで続かず、意識は途切れてしまう。