拉致
「あと1時間か……」
時が過ぎるのは早いなぁ、なんて呑気に思いながらプチッとソウミノを小さくちぎる。
最初はおやつだとか言ってたけど、案外美味しくて癖になる。
ただ、見た目だけを改めて欲しいんだよなぁ…
特に変わったこともなく、ソウミノ片手に街をぶらぶらふらついてると、周りからすごい不自然な目で見られる。
俺、そんな変な格好してるかな?
「ちょっとアンタ!いいから来なさいよ!!」
突如として現れた赤髪のショートカットの女に俺は連行された。
「で?何をしようとしてるわけなの?
どこの国の人?どうやって入ったの?」
木でできた大きな家に俺は連れられて、座らされて、こうして質問責めにあっている。
「俺は…」
"この世界を救う為にきた"、そう言おうとしたが、これも一種のバタフライエフェクトが働いてしまうかもしれない。
あの女神は気をつけろと言った。
言っていいものなのか、これ。
「こっ…これっ…美味しいですねっ!!」
俺はそう言って、ソウミノを女の前に出した。
随分バカな気もするがいいだろう。これしか、今の俺に出来ることがないっ!!
「……は?」
女は間抜けな声を出した。
「ソウミノが?………とりあえず、私の質問に答えなさい。」
「あのな、俺はお前なんかに取り押さえられてる暇はないんだ」
まだ満喫したいのに!まだソウミノしか知らないぞ!
ここの特色とか色々知りたいだろ!!
「……何よ…、アンタ、私を侮辱してるの!?……この際言ってあげるわ、私はあの女に呼ばれて変な力を持たされたのよ!!出会う異国の男に聞けって!!アンタじゃないなら帰すわ、どうなのよ!!」
女は顔を真っ赤にして、俺に啖呵を切った。




