エピローグ
最上級生としての初日はクラス発表で幕を開け、私と刀弥は同じクラスになった。
私たちの関係が深まったのも隠さなかったので、それについて異を唱える者もいたけれど、今年も担任になった小堀先生の言葉で終息した。
「校則に男女交際の禁止を定めた項目は無く、校内での生活態度に問題は見受けられない以上、騒ぎ立てる方がおかしい。そんなに問題視したいならば、男女が話をすること自体を禁じるほかないが良いのか? 部活のマネージャーも同性が行うようだが賛同するんだよな?」
そこまでして貰ったのだからと、私たちも必要以上に二人きりになる事を止めて、食事も同性の子と食べるようにした。お弁当は私が作るようになったので、刀弥君にはそれで満足して貰ったと言った方がいかも知れない。
刀弥君はお父さんの跡を継ぐのかと思ったけれど、親族から社長を選ぶらしいので必ずは無いそうだ。それでも経営学を学びたいと、進学に向けて頑張っていた。
私は、刀弥君が目指す大学の法学部を進学先に選んだ。
昨今はコーポレートガバナンスが求められているので、刀弥君が経営に携わった時に支えなりたいと考えたからだ。それと父は元々が法務部らしく、小西さんは法務部から秘書課に移って社長秘書をやっていると聞いて、近くに居られるようになるのかもとも考えた。
そして時は流れ、お互いが望む進路に進むことが決まり卒業式を迎えた。
「付き合い始めてから一年半経ったけど、不幸を呼び込んだ事は無かったでしょ」
「無かった、ね。刀弥が言ったように思い込みだったのかな」
「それか、別の人だったか。どちらにしろ、奈緒といて不幸どころか幸福感ばかりだから、これからもそばに居てね」
「だったらちゃんと答えて。いつ食べてくれるの?」
「直ぐにでも。と言いたいとこだけど、ホテルの予約は明日からだからね。もう一日我慢してくれたら、一生離さないと誓うから」
「うん。末永く、よろしくお願いします」
卒業式が終わったら、そのまま墓前に報告をふたつしに行こう。
荷造りが終わったら初めてのお泊りデートに出発する予定だったけど、家族としての出発地点を誓ってくれそうだ。
パパ、ママ、私は今ものすごく幸せです。
これからも幸せでいられるように、空の向こうから見守っていてね。