プロローグ
私は『不幸を引き寄せる人間』だと自覚している。
あれは小学校に上がったばかりの頃、遊園地のハロウィンイベントへ不思議の国のアリスの衣装を着て行った時のことだ。
祖母に作ってもらったお気に入りのドレスには、入場の際にイベント参加のワッペンが張られ、一日中を家族と共に目いっぱい楽しんだ。
いっぱいのお土産と思い出を抱え、退園ゲートでワッペンを剥がしてもらったらそこだけ明らかに色がおかしくなっていた。あまりの状況に泣き出してしまった私を両親が一生懸命に慰めてくれ、スタッフのお姉さんは偉い人に相談してくれた。
園には専門のクリーニングスタッフがいるとの事で、着替えを済ませて服を預けたのだったが、生地に間に糊が入り込んで染みになってしまった様で元に戻る事はなかった。
その後も、遠足の電車が人身事故に遭ったり、修学旅行が季節外れの台風で台無しだったり、入学式が土砂降りだったり、入試の日が大雪だったりと、こと有る毎に不幸に見舞われている。
だから私は自他共に認める不幸を呼ぶ女。
友達はいるけど親友はいない、話す相手はいるけれど独りが多い、そんなボッチ予備軍の高校二年生。
それでもあの日までは、元気で明るい女の子だったと思っている。今の抜け殻のような自分なんて想像できないくらい、両親の愛情に満たされて生きていた。