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Countdown  作者: ミディアム
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目覚め

目の前に広がる凄惨な光景。

立ち並ぶビルは半壊、道には幾重もの死体、

血で彩られたレッドカーペットが遥か彼方まで続いている。

そんな世界に、ただ一人僕だけが佇んでいた。

あたりを見渡すと、一人の人物の姿がうっすらと目に入る。

赤黒く染まった身体、手には臓物、そして顔は──醜く歪んでいた。






思わず飛び起きるも何かに後頭頭をぶつけ、再び地面へと倒れ伏す。

これは…ベッドの、へり?

ぶつけた頭をさすりながら、もう一度ゆっくり上体を起こして状況を確認する。

……どうやら、寝ている間にベッドから落ちたにもかかわらず、そのまま爆睡していたようだ。

そしてそのまま飛び起きた結果、ベッドに頭をぶつけ、再び床へとダイビング、となった訳か。

なんとも目覚めの悪い朝である。

しかも、今の一連の出来事のせいで先程まで見ていた夢の内容もすっかり忘れてしまった。

…まあ、あまり良い夢じゃなかったような気もするし、忘れてよかったのかもしれない。

「…支度しなきゃ」

今日は4年間通った基礎学校を卒業する大事な日。

遅刻など、以ての外だ。

着替えを済ませると、部屋にノック音が響く。

「ノア様、朝食の用意が出来ましたよ」

「ありがとうございます、今行きます」

そう言って部屋を出ると、使用人のレアさんが恭しくお辞儀をする。

「…いつも言っていますが、僕に対してそのように畏まらないでください」

「そういう訳にはいきません、私は金で雇われたただの使用人で御座いますので」

その言葉に反論しようとして、口を噤む。

「…さ、ノア様。遅刻などしてはヴェルナー家の恥です。朝食を」

「……そうですね」

階段を降りて、ダイニングへ入ると、美味しそうな香りが漂ってくる。

食卓を見ると、可愛くトッピングされたパンケーキが目に入る。

僕の大好きな、くま模様のパンケーキだ。

「…っ、も、もうこういうのを食べる年ではないのですが」

「そうですね。ノア様は本日基礎学校を卒業されます。ですので、今日で最後で御座います」

胸がチクリと痛む。今日で最後、ということは、もうこれを食べることは出来ないのだ。

自分から話を振ったことだが、彼女は元々そのつもりで今朝これを作ったのだろう。

ヴェルナーの家の跡取り息子が何時までも幼児趣味に浸っているな、と。

同感だ。

尊敬する父に追いつく為にも、余計なものからは卒業していかなければ。

僕は食卓に座りパンケーキを一口食べる。

ごくごく普通のパンケーキの味が口内に広がる。

とても美味しいわけでもなければ不味いわけでもない、平凡な家庭の味。

食べたのちに残ったのは、「何故今までこんなものが好きだったのか」という疑問だけだった。

食事を終えた僕は軽く新聞に目を通したあと身支度を済ませ、家を出た。

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