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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ニチメモ・ゼロ ―異世界に行けなかった魂の記憶―

作者: 芋々

日本人の住む地は、再び大量の日本人の血で染まる。


繰り返された人類の歴史通りに。

人は、ただ々々、「繰り返す」のだ。

同じことをな。


***


応急徴募師団(応徴団)は、この期に及んでも平和ボケを抜け出せないマヌケな日本国政府の政治家主導で、かつもっと愚かな日本国民で編成された笑ってしまえるほど弱小な徴兵部隊である。

装備は貧弱な2003年型軽歩兵にすら劣るダメさ。

錬度はお察し。

現代戦では、ほぼ役に立たない。

夜戦では、ほぼ一方的に殺されるしかない兵隊だ。


これが、経済大国「だった」日本の有事応急編成軍事組織の実態である。

当然満足に機能しないが、無能な政治家のなんらかのイイワケには役立つし、少ない期間だけは肉盾になる。


俺は、その救われない集団の中にいた。


***


台湾陥落。

フィリピン政府の東亜細亜平和連盟(E-PA)加盟。

この時点で日本の安全保障を単独で支えていた米国は、日米安保条約を破棄した。

あっさりと、な。


米国の動きを見て、統一朝鮮は露国軍の進駐を認めた上で、中立を表明。


沖縄と北海道は、以前から潜入していた中国の複数の解放軍特殊装甲作戦師団により制圧済。

既にあちらの行政区分に編入されている。


新潟知事は、開戦と同時に露国に鞍替えした。

そして、日本の主要都道府県の実に6割が、中国と露国に寝返った。

両国は即座に受け入れ、平和維持軍を10個師団ずつ派遣した。



日本に忠誠を誓う自治体は、3割弱に過ぎない。

そこから、本土決戦である。

なぜか?

憲法九条がある限り、本土決戦から始まる事は不可避だからだ。

子供にも分かる、事実だ。


そして、出所不明な6発のMIRV核攻撃で東京都内と大阪は消滅した。

まさか某国が機動弾道弾まで開発成功しているとは、ほとんどの人間が想像していなかっただろう。

考えれば対艦弾道弾の開発をしていた時点で想像くらいつくだろうけど、後知恵かもしれない。

結局、高い血税を投入したミサイル防衛システムは、全く機能しなかった。


***


<日本国・群馬県・某所山中>


「嫌になっちまうよなぁ」

ヤマザキが64式小銃の清掃を終えて、愚痴る。

東大合格を蹴ろうとして親族にボコられた経歴を持つメガネイケメンだ。


「308NATO弾の補給は……なななな無いらしいぜ? どどどどどうすんだ? そそそそそんなガラクタ」

ツッコミを入れたのはタカハシ。

ミリオタで、ヒッキー枠で徴兵された不運者の1人だ。

いや。

本当に不運なのは、定職に就いていた者の徴兵かもしれない。


「応徴で俺たちは楽な任務なんだから。どうせ実戦なんてありえないよ」

ヤマザキが、シルバーフレームのメガネを光らせながら応じる。


「実戦が無いから弾が不要ってわわわけじゃないだろ? ななななんつーか、身を守る的な意味で」

タカハシはヒキのくせに、趣味の分野では饒舌になる。

コミュ力は圧倒的に不足しているが。


俺は、自分が支給されたミロク製のショットガンの清掃をしている。

他にやる事がないのもあるが、教えられたのがそれだけだからとも言える。

現状、他にやれることはない。

愚かなユトリ平和ボケ日本人では珍しく、俺はグアムでの初等軍事訓練経験がある。

あまり一般日本人には知られてなかったが、グアムには傭兵訓練所の前段階の学校がある。

金さえ払えば、初等段階の軍事教練を誰でも受けることが出来るのだ。


徴兵同僚の口論を聞き流しながらの群馬の山中。

「……ヌルいぜ」

俺はあの頃、そう思っていた。

それは、おそらく未来も変わらないだろう。

戦後日本人はヌルいぜ。


***


人は、繰り返すのだ。

この当たり前のリアルを、戦後日本人だけが忘れていた。


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