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三ヶ国合同作戦②

引き続き登場人物→三国(みくに) 里津(りつ)。実はアラサー。


         イデア。カズンと同じ位に燃費悪し。太る?何それ?





【………… Пожалуйста, обратите внимание, Японии Лучший самолет в начале, весь формирования. Сакаи рождения или nendoroid во время кризиса.(…………先頭の日本隊一番機、全体の陣形に注意してくれ。単機突入は全体の危機を生み出しかねん。)】


ロシア側の一番機から注意を受ける。耳から入る言語は即時通訳されて意味は理解できるが、相手の感情まで汲み取れはしない。

内容から苛立ちを感じているかもしれないが、それは仕方ないだろう。


ロシア側の主力機は、身体改造を主眼とした我々の機体とは違い、生身のパイロットを対象とした普通機になっている。

幾ら彼等の技術力を投入しても、俺達の乗機とは格段の開きがある。

そしてそれは、中国機も同様で彼等も編隊飛行の後方に位置している。


【……菊地一尉!モタついてる連中には殿(しんがり)を務めて貰わんとね!コッチの加速の半分程度で息切れしてる出力だったら、曲芸飛行の方が上手だろうからさぁ!】


三国機から彼女の弾んだ声が鳴り響き、後ろのカズンも知ってか知らずかウンウンと言いたげに頷いている。


【…………キクチ!!遅い奴等、ご飯抜き!!!】


その彼女を遮るように、イデアの黄色い声が続き辛辣な提案を俺へと促して来る……そういう懲罰に……効き目があるのはシルヴィだけだぞ?


【ミクニ!!来た、来た!!カズンイチイ、三ついく!!】


イデアが叫ぶ中、バックカメラのカズンの緑の髪が一瞬で舞い上がり、驚異的な低温で機内の気圧が変動する。

その理由は一つだ、カズンが明確な殺意を持って魔導を展開しているからだ。


……あ、俺の身体、こんな時の為に改造したのだろうか?寒いぜ普通にでも死なないからよかったよかった……。眼球の表面が薄く凍ったけどな。


急速旋回で回り込もうとする飛竜種を追尾し始める三国機、それとは別方向を目指して真っ直ぐ上空へと急上昇する自機を、宣告通りに三匹の飛竜種が追従して来る……しかも、一匹はかなりデカイか?


……よし、遊んでやろう。俺とカズンのやり方でな。


「カズン、いつでも構わないから今すぐ……おっ!?」


機体の外部に集束した雲(魔導の類いは俺には知覚出来ない)が、急速に尖鋭化し後方へと伸びていく。その雲が飛来する飛竜種の先頭に直撃した瞬間、一帯の大気が爆発的に冷やされて凍り付いたようだ……。

今までとは違った攻撃方法、初めて見たかもしれん。


「イチイ!!カズン、イデアの真似した!!」


カズンは事も無げに告げたけれど、そんな簡単なことなんだろうか?

それは空戦状態になっている機体を視力だけで補足し続けて、分析して理解するだけじゃなくて……それをそのまま真似したって訳か。


「いつの間に?しかも真似したって……何をどうしたら……」


「イチイ、やっぱり、全部は無理!!……一匹、来た!!」


体表を凍結されたのか弱々しく落下していく飛竜種の二匹、その周囲に広がる極低温のキラキラと輝く靄の中から、ボッ、と大きな多数の角を生やした頭部、そして揺らめく長い首が突き出され、続いて全身が現れる。その巨体は鱗を散らしながら落下していく飛竜種と比べても優に二倍以上はあり、力強い羽ばたきで瞬く間にこちらとの距離を急速に詰めてくる。体色は……見たことのない紫……紫色?

 


「……イチイ、あれ、コーリューシュ……です。」


「何だそりゃ……コーリューシュ?」


後で聞けば、皇竜種と呼ばれる種類、らしい。

彼等は例の支配者に最も近い位に属する、巨大で有能な恐るべき存在だと言われている。だが、俺達が超音速で飛翔している今はまだ脅威ではない。

時間稼ぎを兼ねてアフターバーナーを点火、瞬時にマッハ2に迫る加速をつける。


「まだ距離は有るな……そうだ、三国達はどうなってる?」


俺は空戦状況を把握する為に、頭の片隅に在る俯瞰視項目(オーバールッキング)を開く。


【……三国機、前方三十キロで交戦中……か。まだ無事か……おぉっ?】


衛星解析画像を超望遠拡大させると、イデアの能力だろう、機体の後方に位置する四匹の飛竜種に向かって氷柱の束を射出した瞬間だった。

まるでロケット砲のような勢いで数十のミサイル状のそれらが後方に飛翔し、群れを形成していた飛竜種に直撃した。

翼や身体を貫かれた奴等は、有るものは身を捩らせて苦悶しながら血を吐き、また有るものは無数の氷柱で翼に風穴を空けられて墜落していく。


【やるな……流石はトップランカーのコンビか。さて、お客さん方は……苦戦中か。】


ロシアのSUー65、そして中国の殲ー52。両機の性能は決して低いものではないが、空戦能力の高いSUー65はともかく、殲ー52の方は苦戦を強いられているようだな……。確かに速度は出る機体だが複雑な機動を強いられる空戦性能に疑問が残る殲ー52は、飛竜種のような亜音速からホバリングまで自在に行える異次元の存在相手には向いていないのかもしれない。


SUー65は二機が互いにサポートし合いながら、何とか飛竜種の追撃を退けつつ少しづつ銃撃で落としているようだが、殲ー52は出撃数の多さで優位に立とうとする反面、互いの連携の悪さが足を引き合う結果となり、一機また一機と戦線離脱を余儀なくされていた。飛竜種のブレス、更に体当たりからの掻き爪の攻撃力は侮り難い。

だが、そんな中国機に眼を引く一機が居た。


【せい……いや……、青燕(チンイェン)、って読むのか?むぅ、中国語は難しいな。】


僚機と同じ殲ー52ながら、そのパーソナル・ネームで表示された一機は、驚くことに今どきロケットランチャーを搭載していた。

確かにホーミング兵器が追従しない飛竜種には有効な武器かもしれないが、狙って当てるのは困難だろう。

だがその中国機は飛竜種の下後方に着くと加速性能を活かして急旋回へと持ち込み、まくり気味に最上点から急加速、そして後背部へ予測射撃を狙ってランチャーを発射。僅かな斉射だけで撃墜してしまったのだ。


その鮮やかな成果に感心していると、その当事者から臨時で今作戦の為に回線を繋いだ同時通訳対応型の無線がコールサインを点滅させる。

まさかとは思ったが、相手はその青燕チンイェンだった。


《……旭本(にほん)軍機!……あなたのことよ、黒の二番機!!》


「……二番機?あぁ、俺達のことか。《こちら黒の二番機。ご多忙の中、何か有りましたか?》」


余りにも間の抜けた返答だな、と苦笑いしたものの、視認距離に敵性物体は居ない。何とか無事に終わったのかと安心していたのだから仕方がない。

そんなこちらの思惑を無視するかのように、激しい口調(と言うより早口で捲し立てたのでそう感じたのだが)で、


《何かって……真後ろにそんな巨大な飛竜種を引き連れて、よく平気で居られるわね!!気は確かなのッ!?》


意識の半分近くを俯瞰視領域に置き去りにしたままだったので、慌てて後尾部カメラの視界を開くと、さっきの巨大な飛竜種が悠然と羽ばたきながら、自機の真後ろに追従していた。


「まさか……嘘だろ!?そんな訳が……マッハ2だぞ?」


だが俺の困惑を余所に、後方の飛竜種は引き離されることもなく、暫くこちらに向かって飛翔していたが、突然翼をすぼめると急上昇し、その場に幾重にも光跡を牽きながら殺到するロケット弾を難なく避けて、上空の雲の中へと一瞬で消えてしまった。


「逃げたのか……?しかし、だったら何故に俺達を追跡してきたんだろうか……」


俺は奴の行動に疑問を感じていたが、そう言えばカズンが大人しいな、と気付いて後席を確認してみる。

カズンは眼を開いてはいたが、何となく様子がおかしい気がして声を掛ける。


「どうしたカズン?起きてるよな……いや、待てよ?……って?あっ!!」


俺は時間表示を呼び出してバイザー内に表示させると、交戦開始から一時間、フライト開始から三時間が経過していることに気付き、俯き加減のカズンを見て確信した。


「そうか……カズン!気付かなくて済まなかったな……()()()()か?」


そう呼び掛けると、俯いたままコクコクと頷きながら弱々しく返答し、


「イチイぃ……、カズン、倒れそう、ですぅ……」


そう言うや否や、カズンはこてん、と傾いたまま動かなくなる。

彼女達シルヴィは、極度の疲労及び空腹時には一種の冬眠状態に陥ってしまう。それが今の彼女の状態だ。

嫌な話だが、餓死を避ける為に備わった防御機能のようなものらしく、被支配層のシルヴィ達の命綱であるらしい。

しかし諸刃の何とやらで、絶食には強いが極度の栄養失調回避と引き換えに、身体的な成長率も低下させてしまう。彼女達の年令が判り難いのもこの疑似冬眠の影響だとも言われている。


「しかし……カムチャッカとは言え……まともに機能している着陸拠点なんて……」


俺は周辺の大陸に拠点がないことを踏まえて、一番近くに在る筈のロシア側の拠点を使えないか打診したが、

「軍事拠点の所在は公表できない。それは正式に申請が有った際に検討してからでないと返答は出来ない。」と冷たいものだった。


「そうだ……三国、イデアの様子はどうだ?」


「……そんなこと判ってるだろ?……うちの御姫さんもガス欠さ……」


返ってきたのは、三国の疲れたような声だった。彼女は俺とは違い部分的なサイボーグの為に、生体部位が感じる苦痛によって疲労も蓄積しているのだろう。


「索敵はこちらが請け負う、だからフォーメーションを組んで……あ、ちょっと待っててくれ……」


《こちらチンイェン、日本の両機、さっきまでの勢いはどうした?》


割り込むように中国機のチンイェンが尋ねてくる。通訳ユニットを介した声は妙に高い気がするんだが……女性なのか?


「済まない、二機の後席フライトオフィサーが体調不良でな。出来れば帰投するか、最寄りの補給地点に向かいたいのだが……作戦的には結果は残せただろうから、報告もしたいし……」


《何だ、そうなら早く言ってくれ。()()()()()()()()()()()()()()()()そこに向かえば良い。着艦プログラムはインストール済みだろう?》


確かに作戦参加に当たり、何故か中国側から着艦プログラムのインストールを奨励されていたっけ。こちらは整備要員に丸投げしていたから気にしていなかったけれど、確認しておくか……。


【…………これか。自動起動スタンバイ。作動範囲に目標空母は確認されません……って、そりゃそうだ。】


俺はプログラムが待機モードに入ったことを確認し、三国機にその旨を要約して伝える。


「……言われてみれば、そうだったっけ……これかな?……ん?《着艦準備開始》だって?何処にも空母なんて見当たらないぞ?」


三国の言葉に思わず周囲を見回してみるが、当然視界にはオホーツク海の黒い海面しか映らない。カズンとイデアも心配だが、燃料も潤沢とは言えない状況になりつつあるし、早めの補給が必要かもしれない。


「……なぁ菊地一尉、そう言えば戦列を離脱した中国機はどこに行ったんだ?まさか全機墜落した訳じゃないだろ?……海面に油膜も破片も見当たらないから不時着はしていないみたいだけど。」


三国に指摘されて、改めて下の海面を注視しては見たが、何も……いや、違う……何だ、あれは?

ちょうど東南の方角の海面に、黒い影が見える。それはまるで巨大なクジラか何かが海面下に潜んでいるようなのだが、レーダーに全く反応は無い。


《出迎えの空母が()()()()()()()。両機とも着艦プログラムに従って緩旋回しながら追従してくれ。》


チンイェンの言葉を待っていたかのように、その何か……いや、言葉を借りるなら【出迎えの空母】が海面を割ってその巨体を浮上させる。

まさかのステルス潜水空母、なのか?

空中要塞機の飛龍改二も巨大だが、流石は海の空母。大きさで比較すれば全長は二倍近くは有りそうだ。。




まだまだご飯はお預け……そろそろ限界かも?

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