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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

不可思議物語

カラダノツクリカタ

作者: ヤマ

 こんにちは、私の名前は……なんて、必要ないか。

 これから私がすることは、君たちの知らないことだ。

 なあに、難しいことを考えなくてもいいのさ。ただ『人の身体』を作るだけだから。

 体を作るには、たくさんの素材が必要になる。――故にたくさんの人が私の犠牲となる。なあに、君には関係のない話だ。君と私は生きる次元が違うのだから。

 体の拒否反応は気にしなくてもいいレベルに化学は発達している。

 とてもつまらないことだが、付き合ってほしい。

 それじゃ、出かけよう。体集めの旅へ。

 まずは頭から集めよう。

 歩いていると、前に何人かの人が歩いている。夜なのもあって人が少ない。まあ、私には好都合だが。

 さて、誰にしようか。出来ることならば顔のいい人を選びたい。

 立ち止まり考えていると、隣から綺麗な人が通り過ぎていった。

 ――よし、この人に決めよう。

 そう思い、私はポケットからおもむろにカッターナイフを取り出す。

 足音を立てずに後ろから近寄り、カッターナイフを首元めがけて横一字に振る。

 カッターナイフがザクッと音を立て、女の首元をかっさらう。女は何が起こったのか分かる間もないまま、首をはねられる。しばし動いて、痛みが押し寄せてきたのか、甲高い声を上げる。

 私はその余韻に浸ることもできないまま、数秒で意識をなくした女の頭を抱え、走っていく。

 さて、次は本体だ。といっても、見た目、つまり外側なわけで、また綺麗な人に犠牲になってもらう可能性がある。

 まあ、それは仕方ないとして、先程の場所はもう行けない。今頃、頭のなくした女性が道端に倒れ、そのうち調査が行われるだろう。まあ、金でも出せば、警察は黙ってくれるだろう。

 さて今度は、頭に似合う体を探すんだったか。こうやっていくと、だんだん人の選択肢が減っていくのが、難点だ。

 今は河川敷にいる。なんでかって聞かれると、それはもちろん、血を流すため、内臓の処理をせねばなるまい?

 しかしここの河川敷は人が来ないことで有名だ。しかも夜だと尚更だ。

 さて、綺麗な人は見つかるかな? もし見つからなかったら、結構面倒くさいことになってしまう。これは移動と犠牲がつきものだ。特に前者の犠牲は、私が嫌だから、という安価な理由だが。

 さて、誰も来ないこの河川敷で待っていても、と思うだろう? まあ、心配しなくても大丈夫だ。ここは、人通りこそ少ないが、綺麗な女の人がランニングコースにここを走っている。その女性が来るかどうかは知らないが、来たらそれこそその女性の残りの人生を奪い取ることになる。

 少し申し訳なくなるが、まあ、そんなことを言っていたら他の人にもそう思わなくてはならなくなるので、その辺でやめにしておこう。

 さて、少し経つと、話に出した女性が走ってくるのが見えた。


「すいませーん」


 私は気さくに声をかけると、その女性は顔を恐怖に染めた。そうか、私の姿を見てか。具体的に言うと、返り血に染まった私を見てだろう。

 そこで私が逃がすわけもなく、立ち尽くしている女性の腕を掴み、数発殴って気絶させた後、川に引きずって息の根を止める。

 途中、女性が命の危機を感じてだろう、少しばかり暴れたが、女の力で男の力にかなうわけもなく、あっさりと息を引き取ってくれた。

 はあ、この女、肺活量すごいな……。一分ぐらいもがき続けていた。

 さて、体の外側をとるため、川の中に体を突っ込み、カッターナイフで内臓を綺麗にとっていく。

 暗くて血の色は見えないが、きっと綺麗な色をしているのだろう。

 さて、外側をはぐ作業が終わったので、大きい袋に人の皮を詰める。

 次はどこをとろう? 無難に腕なんかどうだろうか?

 と、そうして、次の部位が決まり、私はまた歩き始める。

 車で主な移動をしている私は、車の中でカッターナイフの切れ味を確かめていた。

 どうしたことか、たった二回で切れ味がもうほとんどない状態だ。出来ればカッターナイフ一つで終わらせたかったが、仕方ない。

 そう思い、置いてある大きなカバンから、これまた大きなナイフを取り出した。

 余談だが、私は料理も少しかじっていて、このように大きなナイフも手に入るというわけだ。他にもいろいろかじっていたが、今は必要ないだろう。

 さて、腕だが、いいタイミングで、歩いてくる人がいた。あの人たちには悪いが、私を恨まずに、神様を恨んでくれと心の中で呟き、夜デートでもしていたと思われるカップルの喉元を横二つに裂く。これで叫べなくなったわけだ。さて、誰もいないような心霊スポットでデートしていたカップルを眺め、私は笑う。対照的にカップルは死にたくないよと口を動かす。


「大丈夫、殺しはしないよ」


 と言った途端、カップルが安堵する。しかし、次に放った「けど、そのうち自然に死ぬかもしれないよ?」という言葉に再度、顔を震わせる。

 涙すら流せないような顔に私は微笑だけを残し、作業に取り掛かる。

 まずは彼女のほうから腕を切り落としていくと、彼女は口を大きく開き、白目をむいている。さらに失禁。彼氏としちゃあ、彼女の失禁など、うれしいことこの上ないだろうが、今は状況が状況なだけに喜んでいられないらしい。

 叫び声がない状況に少し物足りなさを感じたが、素材が手に入るだけいいか。

 さて、彼女の左右の腕を切り取った後、彼氏のほうを向く。彼女と私の顔を交互に見ながら、助けてくれと口を動かす。

 ――残念ながら、私にそのような心はないので、彼氏の肩にナイフを触れさせる。

 すると、彼氏のほうも失禁した。女より意気地のない奴だと思ったが、男というものはそういうものだ、仕方ない。

 腕を片方切り落とすと、ほとんど彼女のような状態、いや、彼女よりひどい状態になっていた。

 肩からは絶えず血が流れ、白目をむきすぎて、充血した目がむきだされている。これはもう『赤目』とでも言おうか。舌はむき出し、鼻水垂らし……。今は亡き彼女が今の姿を見たら、絶対別れるだろう。

 もう片方も切り落とすころには、もう血が止まっていた。

 さて、腕も手に入れたし、朝方だし、夜まで待つ時間も長いし、話足の過去の話でも聞いてくれるかな?




 あれは、私がまだ若かった頃の話で、そして、こんなことをする原因となった出来事だ。

 私には、いわゆる『彼女』という存在がいた。

 その時は、それはそれは幸せな時間だった。仕事もはかどり、彼女との時間も十分に確保し、そう、まさに私の人生は順風満帆だったのだ。――あの日が訪れるまでは。

 その日は疲れていた。自宅に帰宅し、彼女が帰ってきていないことに気付いたが、疲れていたせいで――これが最悪の結果を生んだ原因だ――そのまま眠ってしまった。

 疲れていたとしても、少しでも気を回せば気付けたことだったのだ。いつも私より早く帰ってきている彼女が、私より帰りが遅いことに。

 ――そして、最悪の結果を知ったのは、翌朝のニュースでだった。

 テレビの下には、もう見慣れた人の名前が……そしてその次に出たのが、私の知らない人の名前。

 不思議とその人に対して怒りなどの感情は湧き上がってこなかった。湧き上がった感情はただ一つ――。

 彼女を取り戻したいという、執着心だった。

 それから人体に関するあらゆる研究を行い、そして、人間生成の術を身に着けた。

 その実験は非人道的だが、知っているものは、私を含め、犠牲になったものしか知らない。

 犠牲になってもらったものは全て試作品として扱い、そして今日の本番に臨んだわけだ。

 今まで実験の成功率は成功半分失敗半分だが、成功するはずだ。彼女の魂を数値化し、また顔合わせできる日が――。




 そして今に至るというわけだ。

 狂気じみていると思うなら思えばいいさ。しかし、自分がその場に置かれていたら、と考えてほしい。

 あなたは正常でいられるのかい? 誰も憎むことなく、今日から過ごせるのかい?

 きっと答えはNOじゃないだろうか。まあ特に責めるつもりはないけれども。

 と、与太話もこれぐらいにしておいて、次の部位を回収しに行こうか。

 次は――そうだな、足にしようか。

 それでどこに行こうか。別にどこでもいいのだが、ここは夜景がきれいなところへ行こうかな。――え? もう回収の話はいいから先に進めって? 私もそう思っていたところだよ、言ってくれてありがとう。




 そんなこんなですべての素材がそろった。あとは、これを合成、というよりくっつけていく作業があるな。といってももうやってしまったわけだが。

 後は待つのみ。


 ――そろそろかな、私は大きな、水の入ったカプセルを可視化する。

 中には、いつの日かの彼女がいた。

 感動、というものはとくに湧き上がってこなかった。いつも通り、というのも長らく忘れていたが、自然とその時のように振る舞える。


「こんにちは」


 私は、声を、意識すらせずに出していた。

 その言葉に彼女は――一瞬目を丸くさせ、そして――顔をしかめた。


「アナタガ、ワタシヲ、コロシタノカ?」


 人の声ではないその“音”を聞き、私は愕然とする。

 ――失敗箇所は特に見当たらない。素材の不備も見当たらない。ならば、なぜこのような状況になっている。

 ペタペタと冷たい音が耳に届き、慌てて振り返ると、そこには、手をまっすぐこちらに伸ばした彼女の姿があった。


――もうだめだ――


 彼女の蘇生にも失敗し、人殺しさえしてしまった。先程の質問はきっと、体の所持者だった者たちの声が、彼女の魂を上書きしたのだろう。

 もう、終わりだろう。この話も、そして、私の命も。


 ――嗚呼、命とは、なんと儚く弱きものなのだろう――

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― 新着の感想 ―
[良い点] 彼女さんを愛してたのはよく伝わるね! 狂気的なの書くの上手いよね いいなぁ、羨ましい…… [一言] シリーズ読み終わったぞー! がんばれー!
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