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掌編小説集9 (401話~450話)

流行り

作者: 蹴沢缶九郎

流れが比較的穏やかな川の岸に、老若男女様々な世代の人間が集まり、足元に転がる手頃な石を拾うと、対岸に向かい一心不乱に投げている。

世はまさに空前の水切りブームであった。人々は近くの川辺に押し掛け、水切りに興じる。人の手から放たれた回転の加わった無数の石は、水面を何度か跳ねてから、対岸の数メートル手前で失速して水中へ消えた。

何度跳ねるかを競い合う者、黙々と自身の腕を磨く者と楽しみ方は多様である。


そんな中、石を投げていた一人の若者が、何気なく隣で石を投げている老人に聞いた。


「すいませんお爺さん、これは一体、何が楽しいのでしょうか?」


若者の問いに、老人は怪訝な表情で答えた。


「君は変わっているな。深くを考えてはいけない。周りの皆がやっているからやる。皆の一緒という、そこからくる安心感、心の平穏、それは変わり者ではないという証明。それでいいではないか。流行りとはそういうものだ」


「…そういうものなんでしょうかね」


どこか腑に落ちない若者が、再び水切りを再開しようとしたその時、近くから、「それ面白そうだね」と声が聞こえた。声のした方を見ると、子供の集団が所々に生えた雑草を屈んで抜いている。

その光景に触発された周囲の人間達は、水切りを止め、我先にと雑草を抜き始めた。

若者の隣の老人も、


「水切りなど止めだ。これからは草抜きブームだぞ」


と若者に言い、新しい玩具を与えられた子供の如く、草を抜き始めたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 水切りに草取り、なんとものどかな流行が平和でいいですよね。”自爆テロが流行してます”なんてニュースで流れるより、住みやすい世界かも
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