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苦手な方はご注意ください。

第三回おおくま杯・朗読杯作品『探偵になろう』

作者: DJほづみ(コロンちゃんの夫兼二代目おおくま)

よろしくお願いいたします。

関係者各位様、この機会をありがとうございました。

なお、『名探偵コナン』『金田一少年の事件簿』『ダンガンロンパ』『レイトン教授』『逆転裁判』シリーズとは一切関係がありませんので安心してお読み進め下さい。

読むの面倒だな、という方は主催者であるおおくまさんが朗読してくれたバージョンがございますよ。

Here we go!→ttp://www.nicovideo.jp/watch/1473931992?playlist_type=deflist&mylist_sort=1&ref=my_deflist_s1_p1_n93


天使であるヴァミちゃんが朗読してくれたバージョンもあるよ。Here we go!

→ttp://twitcasting.tv/vmbird024869/movie/326097379

※ここからラジオDJ口調でお願いします。


『エルシャール教授の、さぐるっきゃ!ナイツ☆

さぁ~今夜も始まりましたー、英国紳士こと、DJエルシャールです!

みんなもご存じのとおりだけど、今日は探偵の魅力について語っちゃうよ!

探偵って、実に華々しい職業だよね!

現場に残された一掴みの証拠を手掛かり、足掛かりに真実を手繰り寄せる!

それは、持たざる者の目には一種の魔術のようにさえ映るんじゃないだろうか!

名探偵と呼ばれる探偵たちの前では、完全犯罪という複雑に入り組んだ迷宮も一本道に同じだよ、きみ!

そんな離れ技を可能とする名探偵という存在に、人々は畏怖し、尊敬し、羨望した!

そんなすごそうに見える職業だけど、探偵って別に特別な資格が必要なワケじゃないんだよね!

問われるのは能力と技術のみ!

そんな訳で人々は探偵になるために行動を起こした!

現在ではインターネットの普及により、探偵の実績を誇示しやすくなっている、ありがたいね!

探偵実績投稿サイト、『探偵になろう』では登録者数は400万人を超え、世はまさに大探偵時代!

こうまで言われて探偵目指さないやつっている!?いちゃうの!?そいつ犯人じゃね!?』


※ここまでラジオDJ口調でお願いします。


陽気なラジオBGMが流れる中、暗闇の中でPCのモニターが光る。

モニターには動画が映されていた。

深夜の街を徘徊している映像であった。

映像は誰かの肩越しに撮影されているようだ。

かろうじてうつる横顔からは恐らく男であることが確認できる。

男は繁華街を歩いていたのだが、どんどん道を外れていく。

やがて、ひとけのない、倉庫が立ち並ぶ埠頭に出た。

男は倉庫と倉庫の間にある、狭い路地に歩みを進める。

突き当りを曲がった所で、男はパンチパーマを掛けた男と落ち合っていた。

カメラが男の懐に向けられ、そこから白い粉が入った袋が取り出される。

対するパンチパーマの男は、一見すると厚さ5㎝はありそうな分厚い封筒を取り出した。

互いに物品を交換し、取引が完了したところで映像は終わった。


動画ファイルのタイトル部分には『マルボウ組:麻薬取引:証拠』と書いてあった。

投稿者名には『臼井うすい 影男かげお』と書いてある。

部屋の主が『調査情報』という文字リンクをクリックするとページが切り替わる。


『感想:3件 評価:3pt』


「……くそっ」

こつこつと続けてきた甲斐があって、少数だがコメントも付くようになった。

ゼロが続いていた頃に比べれば大躍進である。

次に部屋の主が『感想』というリンクをクリックすると、書かれている3件の感想がずらっと出てきた。


『※麻薬じゃなくて小麦粉です』

『仕込み乙。取引現場が港ってありがちすぎ。もっと設定練ろうな』

『距離www近すぎwwww何でバレないんだwwwコントかwwww』


そのような感想にダン!と部屋の主は拳で机を打つ。

「くそっ!くそっ!くそっ!何で誰も信じないんだよ!本当なのに!」

何で、俺は評価されないんだ。

部屋の主の問いかけに応じるように、何者かが答えた。

「それはお前が一番わかっているはずだ、臼井」

突然かけられた声に、部屋の主である臼井は驚いて顔を上げる。

部屋の戸口には小学校低学年くらいの少年が立っていた。

眼鏡に蝶ネクタイ、ジャケットに半ズボンの少年である。

ジャケットの隙間から覗かせるサスペンダーがオシャレ感を演出していた。

「お前は……」

「江戸川 コナソ(えどがわ こなそ)。探偵さ」

眼鏡をうまいこと反射させ、江戸川がキメ顔でそう言った。

「それは知ってるよ。どうやって入ってきたんだ」

「自分の頭で考えず、すぐに他人に答えを求める。探偵として三流以下だな」

罵倒の言葉を浴びせながら、江戸川は臼井のPCデスクまで歩み寄る。

そして臼井のPCを横から操作し始めた。

「あ、こら。勝手に……」

「誰が尾行なんて地味なものを見たがるんだ?探偵に求められるものは派手な推理さ!」

これを見ろ、と江戸川はページをクリックする。


『アシンメトリー建築物連続爆破事件・犯人逮捕』


それはアクション、ミステリ、ラブロマンス、全てが組み込まれた完璧な調査内容だった。

感想も18782件、評価37564ptという冗談みたいな桁の数字が付けられていた。

「未だにデイリー上位をキープ、ユニークユーザーも30万人超えのオレの投稿さ」

これも見ろ、と江戸川は次のタイトルをクリックする。


『偽札事件・導入編』


映像はコンビニのレジから始まっていた。

キャップを被った男がタバコを買うためにレジに来る。

レジで店員に千円札を渡す。


「なんだこれは」

「わからないのか?」

江戸川は信じられない、といった驚愕の表情で臼井を見る。

「タバコを一つ買うためにわざわざコンビニで千円札だぞ?」

「いや、タスポで自販機で買うの面倒くさいからこういう人多いぞ」

「甘いな、投稿日を見てみろ」

促された通り、臼井は投稿日を見てみる。

日付は今から十年以上前になっていた。

タスポが、存在しない。

今度は臼井が驚愕の表情を浮かべる番だった。

「な……!?」

「ふふふ。わかったか」

「お前今何歳だよ!?」


いつの間にか眠ってしまっていたらしい。

臼井は机から上半身を起こした。

首筋に妙な違和感があったが特に構わなかった。

「ふわぁーあ。よく寝たな。そういえば昨日、江戸川が来ていた気がするが」

まぁいいか、と臼井は椅子から立ち上がり、学校へ行く準備を始めた。


家を出て数分歩いたのち、臼井はうんざりとした気分に襲われた。

殺人的な日差しもそうだが、この街は平和すぎる。

江戸川の住む町は事件が起きていない日の方が珍しいという。

臼井にとっては羨ましい限りであった。

まず事件にどのように遭遇するか。

この街ではそれを第一に考えなければならない。

答えの見えない難題を考えながら、臼井は交差点に差し掛かる。

信号が赤になったので足を止める。

行き交う車を眺めながら臼井はポツリと呟く。

「あぁ、殺人でも起きねえかな」

「そんなことを言うものではないわ、先輩」

突然、女の声が聞こえた。

声のした方へと顔を向ける。

臼井が足元から視線を上に上げていく。

すらりとしなやかに伸びた足、触れれば折れそうな腰。

慎ましやかな胸を隠すように真っ黒なジャケットを羽織る女がいた。

桐義理(ぎりぎり) 京子(きょうこ)

臼井の幼馴染であり、同じ学校の後輩であった。

見ているこちらが暑くなる恰好だが、汗ひとつかいていない。

「京子か」

「下の名前で呼ばないで頂戴。なれなれしい」

「上の名前だと発音し辛いんだよ。校長と同じだし」

「殺人が起きてほしいなんてどうかしてるわ」

元々、彼女の目元は涼やかではあったが、臼井の軽はずみな発言にぐんぐん温度を下げる。

軽蔑ともとれる冷ややかな目で臼井を射抜いていた。

「でも京子……」

「苗字」

「……でも桐義理よぉ、こんな平和ボケした街じゃ探偵としての名を上げられないぜ」

「昨日の調査内容、見させてもらったわ。先輩、あんな危険な行為はもうやめて……」

「お前に何がわかるっ!?」

「っ!?」

突然の臼井の慟哭に、ぱちくり、と桐義理は目を瞬かせる。

誰からも評価されず、つのる一方であった抑うつされた感情。

後輩女子の制止の一言が引き金になったのであろう。

臼井の暴力衝動が堰を切ったようにあふれだした。

「『なろう』に投稿すらしないお前に何がわかる!?俺の尾行術は完璧だ!!なのに、なぜ……」

なぜ、評価されない。

嗚咽で形にならなかった言葉をすくいあげるように、桐義理はハンカチで臼井の頬に流れる涙をぬぐう。

「先輩……違うの。尾行のことじゃなくて……」

「もう、放っておいてくれ……」

遠のいていた交差点の雑音が戻ってくるのと引き換えに、臼井の背中は遠ざかっていった。



その日の放課後である。

臼井はあてもなく歩いていた。

うつろな目、重たい足を引きずって歩くその姿はさながらゾンビであった。

「お、あんた!そこのあんた!」

ガードレールに腰掛けていた男が、臼井に呼びかけながら近づいてくる。

ブレザーの上下に、ネクタイを緩く締め、長髪を後ろで一つに纏めた男だった。

服装から察するに、臼井と同じ学校のようだ。

「あんた、臼井影男だろ?昨日の調査内容みたぜ」

男はニカッと輝く笑顔を臼井に向ける。

「俺、金田(かねだ) (はじめ)って言うんだけど」

その男の名前に、臼井は覚えがあった。

金田 一。『なろう』ランキング上位常連者で江戸川と一、二を争う有名人。

卓越した推理力もさることながら、その親しみやすさが売りの人気投稿者だ。

たとえば、金田の恋人の下着が盗まれた際の話だ。

迅速な推理で下着を見つけ出し、自らの懐に着服、その盗難の罪をカラスに被せるお茶目な側面は、多くの女性ファンを虜にした。

「あんたがあの……何で俺なんかに」

「俺と組んでほしいと思ってね」

その誘いは臼井にとってまさに天からの助け。

地に落ちた名前を地獄から引っ張り上げる蜘蛛の糸だった。

「俺、あんたの尾行技術の熟練度はかなりキてると思ってるんだよ」

対象から付かず離れず、ではなく、対象から付いて離れない技術。

文字通り1ミリも離れない、背後霊より近い距離感。

尾行対象どころか、面と向かっている人間にさえ気付かれないのは、もはや人間業ではない。

金田は以上のようなコメントで臼井の尾行技術を称えた。

それでもなお、臼井の心は弱気に支配されている。

「でも、俺に何が出来る……」

「トトアバだ」

「は?トトアバ?」

聞き慣れない単語に臼井が疑問を投げかける。

金田が次のように説明する。

トトアバとは魚である。

絶滅危惧種に指定されている魚であり、この魚の浮袋が高級食材とされる。

アジアでは浮袋一つ当たり1万ドル以上の値が付くこともある。

近日中にこの食材の闇取引が行われること、また、その場所を推理で突き止めた。

「あんたにはその証拠現場を押さえて欲しい」

「でも、俺がやったところで……」

誰も信じない。

理解を超越した技術は現実として受け入れられないのだ。

そのような臼井の弱気な言葉を、金田は得意の指さしポーズで打ち砕く。

「信じさせるさ。俺の名に懸けて!」

仮に、臼井が自分で推理し、現場を押さえたとすれば、それこそ先の茶番の二の舞で片付けられる。

だが、ランキング上位の金田との共同調査ということであれば、事件の信憑性は確固たるものになる。

「俺も自分で全て出来ればいいのだが、尾行に向かなくてな。カリスマオーラが強すぎるんだ」

さらっと自虐風自慢をまじえながら、金田は臼井の必要性を説いた。

「俺達二人なら江戸川に勝てる。俺達二人なら江戸川を超えられるんだよ、臼井!」

「金田……いや、金田さん!」

がっしりと、二人は熱い握手を交わした。


「……あの女か」

「あぁ」

臼井と金田はファーストフード店の二階、窓際席に陣取っていた。

道路を見下ろすと、髪を金に染め、服装も派手な女がトランクケースを転がして歩いていく。

事前の調査によると、この女がトトアバの運び屋である、とのことだった。

取引は公衆浴場、通梁銭湯とおりゃんせんとうの女湯で行われる。

金田が説明した作戦の順序はこうだ。

まず、臼井が女の背後に着く。

ステルスが完全に発動したことを確認して運び屋と共に女湯へ入る。

万が一、取り違いがあってはいけないので運び屋が目を離した先にトランクを拝借する。

女湯の天井裏に待機する金田にトランクを渡し、中身を確認する。

それからトランクを戻し、取引の瞬間を映像に収めて現場を退散、あとは調査報告を投稿するのみだ。

「よし、いくぞ」

脳内で作戦のおさらいをしていた臼井の意識を、金田が呼び戻す。

二人は席を立ち、店を出る。

路地に出ると運び屋は20mほど先を歩いていた。

臼井は落ち着いて背後に着く。

ぴったり着いた状態で数歩、歩みを進めたが運び屋は気付く様子もない。

後ろ手に臼井はOKサイン送る。

それを確認した金田は天井裏へ張り込むため、急いで裏から回り込む。

やがて運び屋が銭湯に着き、女湯に入った。

番台で料金を支払い、ロッカーへと向かう。

(これは……すごいな。銭湯専門の探偵もいいかもしれん)

そのような臼井の妄想はつゆ知らず、運び屋はトランクを置いて上着に手をかける。

両手を交差させ、上半身を女性特有の柔らかい動きでくねらせ、妖艶に上着を脱ぐ。

次にスカートのホックをかちりと外し、スルスルと下ろしていく。

臼井がその様子を呆然と眺めながらたっていると、かたり、と音が聞こえた。

金田が天井裏から目を覗かせていた。

(そうだ、金田にトランクを渡さねば)

臼井は流れるような動作でトランクを引っ掴み、取っ手部分を伸ばし、天井へ送る。

金田が取っ手を掴むと、一瞬の内にトランクは天井裏へと姿を消した。

ふいに、トランクを天井に引き込む際に、金田の顔に邪悪な笑みが浮かんだように見えた。

しかし、おそらく気のせいであろう。

それよりも気にかけるべきことがあった。

運び屋の姿が見えない。

これはマズい状況である。

臼井のステルス機能は対象から離れてしまうと機能しなくなってしまうのである。

どこだ、どこだ、と臼井が浴場の方に目を向けると、一糸まとわぬ運び屋の女と目が合った。


冷水を浴びせられ、臼井は目を覚ます。

体の自由が利かない。

椅子に座っていることはわかったが、どうやら縛り付けられているようだ。

だんだん意識がはっきりしてきた。

ステルスが解除されたあと、居合わせた女性客達に意識がなくなるまでタコ殴りにされた。

目が覚めた時にはこの場所にいた。

それからは起きる度に、尋問と暴行が加えられては失神を繰り返していた。

「お前も強情な奴やな。はよトトアバの場所吐けや」

こっちも暇ちゃうねんぞ、とコンテナに腰掛ける禿頭の男が吐き捨てるように言った。

「‏だから知らないって言ってんだろ……金田が……うぐっ!」

屈強な黒服の男達の、容赦ない拳が臼井の腹に叩き込まれる。

ピチャピチャッ、と足元の液だまりに吐かれた血液が落ちる。

臼井の足元は吐瀉物や糞尿、血が入り混じって海となっていた。

「殴ってもラチあかんな。おい、あれ持ってこいや」

禿頭の男に命令された黒服が持ってきたのは釘と金づちであった。

「な、なにする気だよ。指でも詰める気か?」

「アホか、指詰めるんならノミやろ」

一人の黒服が臼井の右手を固定し、もう一人の黒服が釘を、爪と指の肉の間にあてがう。

「お、おい!やめ……」

「やれや」


雷のような激痛が臼井の全身を駆け巡っていた。

十の指先、全てから釘が飛び出していた。

痛い、死ぬ、解放されたい、何で自分だけこんな目に。

臼井の頭はそういった考えで埋め尽くされていた。

そのような臼井を意に介さず、禿頭の男はハァーッと深く息を吐いた。

「もうええわ。トトアバは諦めや」

その諦めの言葉に、臼井の胸に希望が広がった。

助かった、やっと解放される、と。

だが、続いたのは次のような言葉だった。

「こいつの中身、売り飛ばすぞ」



※ここからラジオDJ口調でお願いします。


『エルシャール教授の、さぐるっきゃ!ナイツ☆

は~いみなさん、こんにちみ☆

英国紳士こと、DJエルシャールだよー☆

この放送も結構長いことやってるんだけどさ、なんか打ち切られることになっちゃった☆

ナイツ、なのに真昼間の今にやってるのもそういうわけなんだ。

そもそも何で打ち切られるのかっていうと今回、大量の逮捕者を出した、そう、あの件だね!

エルシャール、言ってなかったんだけどさ、探偵って職業には探偵業法って法律があるらしいんだよ。

まず、公安委員会に届け出をしないで探偵行為をした場合、無届け営業という違反行為になる。

他に守秘義務ってのがあって、読んで字のごとく、調査で得られた情報を第三者に漏えいさせてはいけないらしいんだよね。

で、探偵業法の中にはまだまだ細かく守るべきルールがあるんだよ。

あるんだけど、『探偵になろう』というサイトの性質上、投稿者はこのいずれか二つ(または両方)の法律に抵触していることからは免れられないよね。

それでも、警察よりも事件の検挙数が多いから、今まで野放しにされていたんだ。

でもね、どこの馬鹿か知らないけど最近アップロードされた調査内容の中に女子児童の裸が映り込んでいた物があったんだよね。

で、一斉摘発に至った、と。

未曽有の大量逮捕者を出した今回の件で『探偵になろう』は閉鎖、探偵がいなけりゃこんな番組も用済みってわけさ、悲しいね。

そんじゃ、エルシャールは本業の考古学者にでも戻るかな!

みんな、機会があればまたよろしくね!

ばいばーい☆』


※ここまでラジオDJ口調でお願いします。



携帯ラジオから流れる喧噪に、爽やかな風が吹く。

空は青く晴れ渡る。

金田は棒低高校ぼうていこうこうの屋上で目を閉じて寝転んでいた。

今の時間は授業中である。

この時間、ここには誰も来るはずがない。

だが、ギイイ、と屋上の扉が開いた。

桐義理が風にスカートをはためかせながら金田まで歩み寄る。

「お、黒のレースか。いいねぇ」

金田が突然目を開いて言った。

「あなた、確か逮捕されたはずでは」

そのような金田を意に介さず、桐義理は冷たい目で見下す。

よっと、上半身だけ起こして金田が桐義理に向き直る。

「されたよ。保釈金払ったけど」

聞いてもいないのに金田はべらべらと喋り始める。

自分の懐が今少し暖かいこと。

そのおかげで良い弁護士を雇えて裁判も安心なこと。

「その弁護士、オールバックで異議あり異議ありうるさいらしいんだけどさ……」

「あなた、臼井影男を知らない?」

金田の話を遮って、桐義理が行方不明となっている臼井の消息を尋ねた。

一瞬、それまで浮かべていた人懐っこい笑みが金田の顔から消えたが、またすぐに戻った。

「え?……さぁ、知らないな」

「そう……邪魔したわね」

桐義理がふわりとスカートを翻しながら踵を返す。

もう用はない、といった堂々とした去り際である。

「あ、ちょっと!もっとお話ししようぜー!」

金田の誘いを無視し、桐義理は屋上のドアをばたん、と閉める。

屋上には金田一人が残された。

上半身の力を抜き、再び、ごろん、と寝っ転がる。

何かに語り掛けるように金田は呟く。

「この世じゃ無理だったけどよ」

遮る雲がないために、陽ざしは容赦なく全てを焼き尽くしていた。

「地獄で有名になってくれや」

空は青く晴れ渡る。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

おおくまさんに渡した原稿そのままの掲載です。

今回の杯は主催者のおおくまさんにいかに似せられるか、が趣旨でした。

でも人って他人のことなんてそんなに気にしてないだろうという姿勢で全く似せる気ゼロです。

他人のことそんなに気にしてないだろうという考えは普段からあるので今回の作品にも反映されてますね。

書いてないけど京子ちゃん、一応最後に捜査してくれてる風だけどすぐに放置しますからね。

コナソが偽造した遺書見つけちゃったとかいうアイデアも出てきたけどもういいや。

私自身臼井君に興味ないもの。

今度は恋愛物書きたいな。

あ、二代目おおくま襲名会見にお越しいただきありがとうございました!DJほづみでした☆


※杯開催当時は作者名は伏せられてました。

感想1

探偵になろう

面白かったけど! ほづみんじゃないのこれw 隠す気のないやりたい放題を見た気がするw

ネタが多すぎてコメントつき放題な予想を裏切る、コメの少なさw

俺はこの設定とか、かなり好きよw

「探偵になろう」ってサイトが一大ブームになってる背景は、本当に面白そうだと思った。

拷問してる奴の後ろに金田が居て、

「俺の推理によると、こいつがバッグを盗んだんだ」って淡々と説明していって

金田にハメられた事に気づくような絶望シーンが欲しかったけれど、

まぁ、そういう状況を作るのは難しいよね。

でも、そこから鏡子(漢字これでいいのかな?)が助け出してくれるまでの流れがあったら、

綺麗な出来の作品になったろうなぁーと思った。

難易度高い注文なのはわかってるw 出来るかそんなもんって俺でも言うしww

それでもやっぱり、後半の展開は、なんか変な感じがしたからねー。

一番綺麗な形はこうかなって、理想像だけは言ってみたかったっていう。

充分面白かったけどね。


感想2

「探偵になろう」は個人的に読んでみたくなりましたね(笑)


感想3

・言っていいですか? ねえ、言っていいですか?

『探偵になろう』ってそんなに私に見えますか!? どゆことなのおおお!!

 パロディやらないし! バッドエンドも好きじゃないし!

 逆に、私が絶対やらないことを費やしたのがこの作品と言えますね。

 このおおくまっぽくない感じが、逆に私が一生懸命偽装した姿と想えたのでしょうか。

 おおくまの、さも作者っぽい反応に騙された人もいるのかもしれませんね。

 もう一度動画見返してください。穂積さんの反応がかなりわざとらしいですからw

 あの時おおくまは一言でも穂積さんの反応に過剰反応したらアウトだったのでひやひやでしたよw

 水面下でもしかけてくる穂積さんのアグレッシブさが素晴らしいですね。

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