ファイルNo.2 真夏の夜の夢 24
巴を受け入れてくる場所が、いつになくよそよそしく感じられる。
居場所がない。
自分の部屋さえも、巴の居場所ではない。
差しのべてくれる手もない。巴はいつだって一人だ。
そこまで考えて、馬鹿らしいと、巴はつまらない考えを振り払うように頭を振った。
早速パソコンに向かう。メールのチェックをする。
サイファーかフジタさんが、くだらないメールを送ってきているかもしれない。それを見れば、少しは心が晴れるだろうか。
だが、こんな時に限って、メールは一件しか入っていなかった。
巴は送り主の名に目をとめる。キクからだった。三日か、四日ぶりだろうか。
突慳貪なメールを送ったので、少しのあいだ気にはなっていたが、もう忘れてしまっていた。
一度メールでやりとりしただけの相手にも関わらず、それでもなぜか嬉しかった。
手を差しのべてくれるなら、誰でもよかったのだろうか。しかし、喜んでいる場合ではないかも知れない。
この前の巴のメールに対する文句か嫌味の一つでも、送りつけてきた可能性はある。
メールは、三時五十四分の着信だった。
その時間だと、巴が綾瀬のマンションを出たか出ないかぐらいだろう。
メールを開く。
〈件名:久しぶり:
俺のことなんか覚えてないって? この前さ、攻略教えてくれてありがとう。俺の書いた文が気に障ったんなら謝るよ。俺はどうせガキだし。ちょっと舞い上がってただけなんだ。なんか妙に浮かれちゃってさ。トモエさんには悪いことしちゃったね。でもさ、俺ガキだしわがままだからさ、攻略法だけは他にも色々教えて〉
傍若無人で馴れ馴れしい文章だが、不思議と嫌な感じはしない。
キク。高校生らしい。
巴は、メールに対する返事を書いた。この前のお義理のような手紙ではない。最初はほんの気紛れだった。
いや、寂しかっただけなのかもしれない。
差しのべてくれるなら、藁にでもすがりたい気分だったのかもしれない。
信じたくはない。受け入れたくはないが、そうとしか考えられない。
〈もしかしてオレ年下の奴に気遣わせちゃった? なんかオレの方がガキみたいじゃん。あの日、サイファーが新作ゲームの攻略法を横流し(まさにそう)してくれるってんで、チャットに出てたんだよ。それとゼミの発表が迫ってて、忙しかったから。相手にしてなかった訳じゃないぜ。そう思わせたんなら、オレの方も謝るよ〉




