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ファイルNo.2 真夏の夜の夢 20

 時計を見るまでもなく、まだ四時になっていない。学校が終わってすぐにここにきたとしても、もっと遅くなる筈だ。

 綾瀬は茶封筒を検めると、書類を一束だけ取り出して、残りを巴に突き返す。怪訝な顔になる巴に、綾瀬は横柄に顎で愛美を差した。

 成程と、巴は納得する。

「仕事だって、呼び出すのはやめて欲しいわよね。私はこれでも、普通の女子高生なんだから」

 そうボヤいて見せた愛美は、ペロッとピンクの舌を突き出した。

 巴は、愛美に茶封筒を渡す。

 

 ノックの音がして、三人分の茶器を携えた秘書の西川が入ってきた。

 駅前のケーキ屋で買ったという、季節のデザートに愛美の注意は向かってしまい、茶封筒は捨て置かれている。

 中には、綾瀬に依頼され、巴がインターネットを使って調べた報告書が入っている。

 二部印刷したものの一部は綾瀬に、一部は任務の遂行者に渡される。SGAでのお決まりだ。

 と言うことはつまり、常磐学園が次の愛美の赴任先になる訳だ。依頼の内容は、社外秘の為、ここでは伏せておく。

「って言うのは嘘。今日は、球技大会で早く終わったの」

 愛美は、メロンのムースを一匙掬って、口に運んだ。

 おいしいから早く食べてごらんと、巴を促す。巴もスプーンを手にとった。

 綾瀬は、紅茶だけを飲んでいる。

 巴の考えでは、今度の仕事は東大寺向きだった。しかし、綾瀬は愛美にやらせるつもりのようだ。

 東大寺の産後の肥立ち、ではなく病後の回復はめざましいばかりだが、大事をとって使わないのだろう。

 いや、仕事に支障が出る方を、綾瀬の場合は恐れているのかもしれない。

「私は、ソフトボールだったんだけど、うちのチームが優勝したんだよ」

 Vサインをして見せる愛美に、西川一人が「よかったですね」と相槌を返した。給仕を終えると、そのまま部屋を出ていく。

 愛美は食べるのを一時中断すると、気のない態度で、茶封筒から書類を引っ張り出した。


 重要機密 常磐学園失踪及び変死事件

 巴がパソコンで、昨日遅くまでかかって(実際は今日の朝方だが)作成したものだ。

 常磐学園の簡単なプロフィール、見取り図に続いて、事件の内容が時間の経過に沿って書かれている。

 愛美は、表書きに目を走らせただけで、封筒に戻すと手早く傍らの鞄にしまった。

 くどいようだが、情報収集は巴の役割である。労いの言葉を期待していた訳ではないが、それにしても呆気なかった。

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