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ファイルNo.2 真夏の夜の夢 17

〈トモエ>サイファーって、そういうことしてたんだーw〉

〈サイファー>何だよ。みんなしてさ〉

 不貞腐れるサイファー。

〈アネゴン>ww〉

〈エージ>それより、サイファー。新作ゲームの情報が気になるんだけど〉

〈アネゴン>出た。仕切り魔〉

 エージが文句をつけ、それをトモエが諌めていると、アネゴンが会話を割り込ませてきた。

〈アネゴン>そう言えば、フジタさんは来てないの〉

 フジタ氏は、三十一才の独身のサラリーマンである。海外出張が多いとか。

 メールで、忙しくてチャットに出られないとあったが、またイギリスかフランス辺りに行くのかもしれない。

 羨ましい限りだと人に言われる度に、仕事だ仕事と、本気で怒っていた。

 勿論海外だろうが関係なくインターネットは利用できるが、海外勤務の間は社員寮暮らしで、備え付けのパソコンは、会社が仕事用に用意している物なので、あまり遊びに使う訳にはいかないらしい。

 とか言いつつ、仕事中に会社からメールを寄越すようなこともあるが……。

 みんなが黙っているので、巴が返事を打ち出した。

〈トモエ>当分忙しくって来ないって。メール来てたけど〉

〈アネゴン>ふーん。あたしんとこには来てないよ〉

 サイファーとエージが、俺も俺もと同意する。すると、

〈メンフィス>俺のところはきてました〉

 巴と同じで大学生だ。年令は同じだが、メンフィスは一浪しているので、二年生だという。

 ごく最近、このチャットルームに現れるようになった。

 スマホ派でPCは初心者の為、キィボードを打つのに慣れていない。短文ばかりで、打ち間違いもするので大抵黙っているが、今夜も来ていたらしい。

〈アネゴン>いたの>メンフィス〉

 みんなの言葉を代表するように、アネゴンがそう言った。ロムっているだけの者も、数人いる。

〈メンフィス>飯食いながら見てました〉

 巴は思い出したように、机に入れてあった栄養補助食品のビスケットを口に放り込んで、温くなったペットボトルの水で流し込んだ。

 電話でも手紙でもない。インターネットを使ったチャットは、リアルタイムで、しかも複数の人間と意思の疎通ができる。

 文明の利器とは流石だ。

 ビデオ通話を使えば、互いの顔を見たり声を聞いたりすることもできるが、巴は勿論そんなことはしない。それをすれば、意味がなくなる。

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