ファイルNo.2 真夏の夜の夢 14
それは、人の手が作ったものだからだ。それも、巴と食べる為に作られたものだったから、おいしいと感じることができた。
二人で食べるのとは違う孤独な食事は、時間がまだ早いこともあって、勿論大して食欲もなく、ピラフはラップで包まれ再び冷蔵庫に戻される。
再び部屋に戻ってパソコンに向かうと、キクから返信があった。
巴は、すぐに目を走らせる。
〈件名:返事サンキュー:
よく間違われるって、トモエって本名な訳? どんな字を書くのかも俺には想像つかないな。俺って落ちこぼれだから。頭、悪いし。
やっぱあんたって他の奴とは違うね。書いてる文を読んでるだけで、何となく分かるよ。他の奴らとは違うって。
ゲームやるって言っても、ゲーマーって感じじゃないよね。あんたの言ってるサイファーって、ゲームオタクが高じて、ゲーム会社でバイトしてるって奴だろう。ああ、でもそういう奴ばっかりなんだろうな。そういう職種ってさ。
ネットばっかやってる奴って、何でこうマニアックな感じがするんだろう。
でもトモエ、あんたは、他の奴と匂いが違うよ。話、合わせてるだけじゃないの。
別に喧嘩売ってる訳じゃないぜ、言っとくけど。俺とだったら、普通の付き合いができるんじゃないかって、思っただけ。
あっ、でも攻略法は教えて欲しい。砦の中の隠し小部屋で、巻物以外の隠しアイテムがあるって聞いたんだけど、どうやったら手に入るのか知ってるか。
どうせ遅くまで起きてるから。別に勉強する訳じゃない。たまってるDVD見ようと思ってさ。じゃ、そういうことで。:キク〉
読み終わって暫くするまで、巴は思考が麻痺したままだった。
この文章の中に、巴が他の人間とは違うという文が三度も出てくる。どういう意味で、何を言わんとしているのだろう。
話を合わせているだけ……それは、その通りだ。
違う。そうじゃない。
パソコンの電脳空間こそが、巴が自然体でいられる場所ではなかったか。
巴ではなくトモエ。
どこが自然なのだろう。結局、作り物の自分じゃないか。
巴は返事を書こうかどうか迷った。
砦の中の隠し部屋云々なら知っている。ゲームの中盤に出てくるが、結構重要なアイテムらしく、エンディグのイベントに関係するとサイファーから聞かされていた。
FeFこと『フェアリーファンタジスタ』のシリーズ最新作が発売されて一ケ月ほど経つが、巴もまだクリアーはしていない。
パンゲーなどと巷で呼ばれている、あの『パンドラの匣』にかかずらっていたので、エンディングを拝む暇がなかった。




