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ファイルNo.2 真夏の夜の夢 13

 巴は一人っ子だ。

 都心から離れた一戸建てに両親と住み、公立の小学校に電車通学をしている。

 小学校入学の知能検査とその後の病院での検査で、IQが200あることが分かったけれども、それからも何ら変わらない普通の生活を送っていた。

 巴の人生を変えたのは、SGAというよりは、パソコンとの出合いだ。

 パソコン、そしてある人物と出会ったことがきっかけで、綾瀬とも知り合うことになった。その時は、まだSGAという会社はなかった。

 SGAの創世期から関わりのあった巴は、色々な人間がSGAに関係し、そして去っていく様を目にしている。

 勿論、巴がいつでも最年少である事実は変わりようがなかった。

 現在のメンバーは、約一年前に加わった愛美を含め、SGAの第四次メンバーとなる。

 それぞれメンバーに孤独な身の上が多いのは、偶然というより必然という気がする。

 社会やその他諸々のものとの関係が希薄であればあるほど、彼らを使う綾瀬としては好都合な筈だ。

 何かあったとしてもその事実を、日常の間に紛れ込ませてしまうことができる。

 記憶のない紫苑。自分の素姓を消した長門。

 東大寺は妹を亡くした後、両親と親戚とは縁が切れた状態で、東京で一人暮らしをしている。愛美などは両親も失ったが、親戚もなかったので、今は天涯孤独の身の上だ。

 だが巴だって、似たようなものだった。一人で生きているのと変わらない。

 洗濯も自分でするし、朝食はコンビニで買ったパンで、夕食は冷蔵庫のレトルト食品をレンジで温めるだけだ。

 親と食事を一緒に摂るなど、年に数えるほど。

 二人とも、十一時を過ぎなければ帰ってこない。出張や泊まりで帰ってこない晩もある。

 そう言えば、両親の顔を最後に見たのはいつだろう。

 四日、五日。

 巴には、思い出せなかった。

 巴の身にもし何かあったとしても、それは両親や学校と言った彼の一面しか知ることのない人々には、事実は永遠に分からないだろう。

 暇を持て余した巴は、時間は早すぎるが、夕食を先に摂ってしまうことにした。

 夜中にお腹が空けば、軽く何かを食べればいいだけのこと。

 階下に降りて、冷凍庫から一人分のピラフを出し、電子レンジで温めた。

 冷凍食品でも、数日前に愛美がマンションで夕食に出してくれた手作りピラフよりも、ずっと見た目も味も上だ。

 しかし、今食べているピラフがおいしいとは、巴には到底思えない。

 焦げてもいて、変にべちゃっとなった愛美のピラフの方が、ずっとおいしかったのはなぜだろう。

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