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ファイルNo.2 真夏の夜の夢 2

「なんだ。来ていたのか、巴。部屋に来れば、今日のうちに紹介できたのに。ハルカちゃんに」

 綾瀬の視線は、歩いてくる人間に対して間違いなく向けられている。見えていないなど、誰も思いはしないだろう。

 こうなるまでには随分苦労もしたし、時間も相応に要した。一朝一夕で身につけられるものではない。

 揶揄するように言った綾瀬の言葉に、思った通りソファに腰を下ろそうとしていた巴和馬は反応を示した。

「まさか、本気で龍ケ崎さん達の後釜にするつもりじゃ?」

 無表情を装った顔で、まだ幼児と呼ぶにぴったりな少年が、驚いている様子が手にとるように綾瀬には分かる。

 それには直接答えないが、綾瀬の次の返答は計算し尽くしたものだった。

「巴。お前に調べて欲しいことがある。東大寺遥とヨハン=マクドナルドの過去と、現在の状況をできる限り詳しくだ」

 それは、暗にイエスという答えを含んでいる。

 沈黙している巴が、難しい顔をしていることを予測しながら、綾瀬は脈絡のない話をわざとした。

「トモエにハルカに美青年か。商売替えでもしてみるかな」

 綾瀬は、喉を鳴らして笑う。巴は眉根を寄せて、顔を背けた筈だ。

「二人とも、メンバーにする気でいたんですね」

 巴は、仏頂面が見えるような、声の中の非難の調子を隠そうともしない。

「今日、彼に会うまでは、雇うかどうかは決めていなかった」

 はぐらかし、人を煙に巻くような言い方で、綾瀬は答えた。

 巴が、その答えを強く否定する。それも予測できた言葉だ。

「嘘だ。あなたが自分にとって役に立つ人間を、見過ごす訳がない」

 綾瀬はデスクの右端の、電話の横のメモ帳の側の万年筆を手にとり、手の中で弄び始めた。

 海外製の高級品だ。手の中でしっくりと馴染む。だが、今の綾瀬にはそれは見えていない。

「一度会って確かめてみたかったんでな。超能力者という奴を」

 真面目な声音でそう言った後、皮肉るような調子で付け加えた。

「天才少年は掃いて捨てるほどいるがな。メディアのオモチャじゃない本物の予知能力者や霊能力者、超能力者にはそうそうお目にかかれるものじゃない」

 巴が咳き込むように、

「だったら、どうして龍ケ崎さんを引き留めなかったんですか?」と言った。

 龍ヶ崎は、二週間前まで、SGAのメンバーだった少年だ。来年は成人式だと言っていた。

 ここで働いた期間は半年程度だが、人の死を前に怖気おじけ付き、辞めていった。

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