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ファイルNo.1 パンドラボックス 48

 推理小説でも、よくある手だ。死んだ人間は、犯人から除外して当然だ。

 それがホラーで、本人の幽霊やゾンビが出てくるというなら話は別だが、普通なら死者は勘定に入れないものだ。

 だがそれが、そもそもの間違いだとしたら。

「既に死んだと思われている人間。初めからおかしいと思っていたのよ。どうして、最初の被害者だけ、残りの身体が見つからなかったのかって。被害者の身許が下顎の歯の治療痕から分かったことになってたけど、箱の中には下顎なんかなかったわ。ちゃんと見たから、覚えてる。絵的な表現として肉とか骨っぽい物を描いてるだけで、実際のパーツとは対応させてないだけかも知れないと気にはしてなかったけど。そうなると、仲間内さえ信用できないってことよね」

 愛美はそう言いながら、巴にテレビの画面を見るように促した。

――よく見抜いたな。アンジ。犯人はお前じゃない。そしてお前の弟でもな。

――最初にリッパーの犠牲となった女を覚えているか。

――サヤ。

 アンジは、無感動に答えた。そうだ、確かそんな名前の十九才の学生だった。

――そうだ。犯人はサヤだ。

 部長も短く頷くだけだ。

――それを知りながら、なぜ。どうして、俺を騙す必要がある。

――この事件は、お前が思ってるよりもずっと根が深い。真実が明るみに出れば国家転覆になり兼ねない程だ。政府の機関が一枚噛んでいる。ここ二十数年の間に、猟奇殺人事件が頻繁に起こるようになったことは、お前も承知のことだろう。それを押さえる為に、捜査第壱班という猟奇殺人専門の特殊捜査課が作られた。腰の重い政府にしては異例の決断の速さだった。

 文字が次々とスクロールしていく。

 画面には、色々な映像が、フラッシュバックしては消えていく。

 リッパーの事件による被害者や、同僚や、ゲームの中に出てきたシーンだった。上司の話は途切れることなく続く。

――マインドコントロールや催眠術で、人に殺人を迫ったり死に追いやることはできないと知っているだろう。それが本当に不可能かを研究する機関があり、そこで実験体にされた人間が、猟奇殺人を犯しているとすればどうする。そして、研究価値のなくなった被験者を、捜査第壱班に始末させているとすれば。

 文字を追う愛美は、何か頭の隅に引っ掛かるものを覚えた。

 だが、その時は読むことに集中していて、考えをまとめている暇はなかった。

――それが事実とすれば、俺の父親は。

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