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ファイルNo.1 パンドラボックス 43

 開けてしまった箱を、閉めることはできる。

 しかしそれでは、手遅れなのだ。開けたという事実は、拭えない。

 

 そして東大寺とうだいじだって、一度眠りについたからには、目覚めることはないのだ。

 緩やかな自殺。それは永遠の眠りだった。

「巴君。今すぐゲームをやめて。綾瀬さんじゃないけど、あなたまで死んでしまったら、どうにもならないわ。パンドラの箱は、開ける前に封印してしまわなければならなかったのよ」

 愛美は、説得に回ることにした。

 東大寺を助けることができないのなら、せめて目の前にある危険だけでも回避しなければ。

 東大寺を見捨てることになるが、これ以上犠牲者を出さずに解決する方法があるのなら、愛美は何だってするだろう。

「君子危うきに近寄らず、ですか。今更やめることはできませんよ。このゲームを手にとった時から、既にパンドラの箱は開き始めていたのです。最後までやるしかありません。開けてはいけない箱を、開けてしまったパンドラのように、人は興味ゆえにタブーを破るのです」

 巴には、もう何を言っても無駄だろうと思われた。

 知的好奇心を満足させる為に、人間はより高みへと邁進してきたが、それが齎し得る墜落にまでは、考えが及ばない。

 または、分かっていても止まれないのだ。まるでそれは、人間全体がプログラミングされているかのようにも見える。

 破滅へと向かって、堕ちるだけの哀れな傀儡くぐつだ。

「そうね。好奇心こそ人間を、地球の支配者たらせたけれど、それゆえに、人間は破滅へと向かってゆくのね。古代文明で車輪が創造されたことから戦車が生まれ、科学者が発見した原子が、原子爆弾へと発展した。知識のもたらした功罪は、大きい……か。知恵を得て、楽園を追われたアダムとイヴの例もあるしね」

 人は愚かだ。

 人の世に希望はないのだろうか。破滅ではない未来はないのだろうか。

 

 ゲームの中の未来も暗澹としたものだ。猟奇殺人が横行する社会。

 破滅は、ゲームやマンガの中だけの話ではない。

 今の社会だって、犯罪の低年齢化や、残虐化、そして日本人のモラル自体の低下と、破滅への不安材料は枚挙に暇がない。

 未来の東京という暗渠と化したような世界で、主人公のアンジは約二十年ぶりの再会となる弟を、猟奇殺人犯として追い詰めなければならなかった。

 アンジ自身も気を抜けば、反対に弟に殺されることになるだけだ。

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