ファイルNo.1 パンドラボックス 41
この後、自分が体育館に戻れば、後輩や阿部哲郎の質問攻めにあうことは必至だった。
「ああ、何か、俺が遥を心配して色々言ったら、渡辺も不安になったのか、従兄に話を聞いてくれて、俺にも教えてくれたんだ」
パンドラの匣が、本当に死を呼ぶゲームで、それが作った人間が意図したことであるなら、ゲームの中に解決方法があるのじゃないか。
言葉遊びや、パズルめいた作りのストーリー展開は、創造者の意識がふんだんに盛り込まれているようだ。だったら、ゲームの中に答えがある筈だ。
「犯人、誰なんですか?」
何かの手がかりになるかと思って、愛美は結城に聞いた。結城が口を開く。
「犯人は――」
巴は、ズリ落ちそうな眼鏡を人差指で押し上げた。
「犯人はアンジの生き別れの弟、ですか」
愛美は、拍子抜けしてしまう。結城直哉が言っていたのは、まさしくそれだった。
愛美は、巴の顔を覗き込んだ。
「巴君、何でそれを知ってるの?」
巴は眠そうに目をしばたたきながら、コントローラーをとり上げた。
「ついさっき、一応ラストまで漕ぎつけました。でも何か違うんです。それで東大寺さんがやってた方のメモリーから、もう一度やり直し始めたところなんです。きっと、もう一つ、別のラストが用意されてると思います」
「それが問題な訳ね」
愛美が、念を押した。巴が多分と、曖昧に頷く。
「何だ。私、とんだ無駄足踏んじゃった」
愛美は足を伸ばして、ソファにふんぞりかえった。
「確認になりました。裏づけをとろうと思ってたから、有り難いです」
それこそインターネットで、調べれば済むことだ。
愛美は、まあいいっかと呟いた。結城直哉の心配を、とり除くことはできたのだ。しかし肝心の、東大寺が助かった訳ではない。
愛美は伸ばした足を組んで胡坐を掻くと、ゲームの画面を見ながら、自問自答を繰り返した。
「アンジとミッシェルでエンジェル。ミッシェルはMichaelで、ミカエルとも読めるわ。ミカエルは大天使の名前よね。天使。使者。アンジとミッシェルで一つの言葉を意味するなら。アンジとミッシェルは同一。だから兄弟なのかな。ううん。アンジはミッシェルで、ミッシェルはアンジ。じゃあ犯人は――」
愛美がそこまで言った時、巴が言葉を続けるのを止めさせた。
「その先は、今はまだ早いですよ」
画面では、アンジが驚愕の表情を浮かべていた。
薄汚れた街の路地裏で、対峙する二人の男。




