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ファイルNo.1 パンドラボックス 40

 愛美に向かって手を差し出すと、気軽に言った。

「だったら、俺が返しておこうか?」

 愛美は慌てて、首を振る。ゲームを返すというのは、口実だ。ソフトはいま、巴がやっている最中だ。

 結城は、別に無理強いはしなかった。

 愛美を上から下まで眺めて、ちょっと照れたような笑いを浮かべる。

「てっきり、俺、あなたは、年上だとばっかり思ってた」

 見た目も性格もかなり子供っぽいと、愛美は自分で思っている為、その言葉にとても驚いた。

 そして怒ったような、それでいて気恥ずかしそうに、結城を上目遣いで睨んだ。

「そんなに声、老けてます?」

 愛美はここにきて、初めて声を出して笑う。

「なんか、大人っぽいし。落ち着いてるから」

 結城も笑みを見せた。気分がようやく解れてゆく。

「電話で結城さん、言ってましたね。『パンドラのはこ』のゲームについて」

 愛美は、唐突に本題へと移った。結城は、馬鹿な話を持ち出してしまったものだと、後悔しているようだった。

 東大寺とうだいじが無事と分かった今では、結城の完全な一人相撲だったことになる。

「呪われてるとか、途中で止めると死ぬとか、怖いですね。でも、渡辺君って人は、ゲームをしても何ともなかったんでしょう?」

 愛美は的確に探りを入れていく。

「いや、ゲームをやったのは、奴じゃなく、大学生の従兄らしい。それもなんか実際は友達んちでやってハマって自分用にも買ったけど、そっちはまだやる暇もなかったとか。渡辺は、借りたゲームを遥に又貸ししたんだ」

「その従兄って人も友人も、大丈夫だったんでしょう?」

 愛美は重ねて聞く。結城は頷くと、パンドラの匣の噂は、やっぱりデタラメだったのかと、考えを改めた。

 実際に結城は、近隣の学校でも、ゲームをやって死んだ者がいるという話は聞いていない。東大寺が、結城のことを心配症だとからかうのも、無理はなかったと思う。

 バスケ部員が三人、続けざまに事故死した時も、呪いだと騒いで、東大寺に馬鹿にされたことも記憶に新しかった。

 年下の少女相手に、何を馬鹿な話をしてしまったんだろう。きっと彼女は結城のことを、おかしな奴だと思ったことだろう。

 少女は、興味津々といった顔で、結城を見ている。

「そのゲームのラストってどうなってるんですか。犯人が誰か、知ってます?」

 結城は、中学からバスケ一筋だっただけでなく、しかも三人兄弟の一番上で、剰え男子校ときたので、女の子には滅法弱かった。

 こんなところを東大寺が見たら、でれでれと鼻の下を伸ばしている結城に、言いたい放題言うだろう。

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