表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/328

ファイルNo.1 パンドラボックス 4

 愛美は珍しくポニーテールにはせずに、髪を一つにひっつめて、おばさんのような髪型にしている。

 肩にかかるぐらいだった髪もいつの間にか、背中にまで届いていた。

東大寺とうだいじさんが羨ましい。今日で中間終わりでしょう。何でよりにもよって、最終日に数学があるんだろう」

 愛美は、ふくれっ面をして握っていたシャーペンを放り出した。

「教えたろうと言えんところが辛いわ。二回も同じとこ習ってるくせに」

 東大寺は、テーブルの上にのっていたバナナの皮を剥いて、ムシャムシャとかぶりついている。昼食を済ませてまだ間もないが、食欲は衰えないらしい。

 東大寺は、学校の帰りなので、上はワイシャツを脱いでTシャツだけだが、下は学生服のズボンという出立ちだった。

「英語だったら私もお手伝いできるんですが、数学はいかんともしがたいですね」

「ええやん。愛美ちゃんできへんの数学だけやろ。俺なんか全教科やで。今回もあかんのちゃうかって状況やもん」

 東大寺は、食べ終わった皮を、ゴミ箱に投げ捨てる。

 紫苑は、皿洗いを終えてタオルで手を拭きながら、東大寺の不作法を目で嗜めた。もちろん東大寺は、そんなもの屁とも思っていない。

「自慢してどうするんですか。また赤点だらけのテストで、夏休みに夏季講習受ける羽目になりますよ。私が英語、巴君が数学、愛美さんに日本史と国語見て貰った方がいいんじゃないですか」

 愛美は頬杖をついて、溜め息を吐いた。

 現実逃避したくなる。

 学生生活最大の敵は、やはり中間期末と学期間に二度も行われるテストだろう。

「私も英会話、紫苑さんに習おうかな。うちの学校、英語も教科書丸暗記だから、テスト自体は楽なんだけど、全然身についてる気がしないんですよね」

 この五月から、愛美は桜台付属高校に通っている。共学校で、桜台短大の付属高校で、幼稚園も桜台付属幼稚園というのがあった。

 仕事が目的ではない。

 四月一杯は、白藤商業での、生徒に異常が起きた事件に当たっていたのが、ようやく解決し、今は仕事のない貴重な時間だ。

 愛美も東大寺と同じように、二足の草鞋わらじを履くことになった。

 その生活の大変さは、東大寺の様子を見ているところでしか窺い知ることはできない。

 愛美は数学のプリントとにらめっこするのを諦めて、髪の毛をいじくりまわす。

 愛美は、一旦髪のゴムを外して、もう一度ポニーテールに結び直そうとした。もう完全にやる気をなくしてしまう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ