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ファイルNo.1 パンドラボックス 35

 被害者は、別に特筆するところもない普通の女性だ。数日前、学校から帰ってこず、そのまま今に至る。

 巴は、適当にカーソルを動かしながら、同僚や被害者の関係者の話をスクロールさせていく。

 やがて、警視庁の捜査本部に戻ったアンジのパソコンに、メールが届いているのが発見された。

 そこにあったのは、プレゼントはお気に召したかという、意味のない文章だった。次は、アンジの部屋に贈り物を届ける用意があるとも……。

 差出人の名前を見て、愛美は合点がいく。

 そこには、ダンボール箱に封入されていたメモに書かれていたのと同じ、アルファベットのLの文字があった。

 そこに、捜査本部に電話がかかってき、路地で死体が発見されたいう市民からの通報が寄せられた。

 アンジや仲間の捜査員達は、発見されていなかった行方不明女性の遺体の残りが見つかったのかと思ったようだ。

 しかし、街の路地裏でバラバラにされて殺されていたのは、男性だった。

 

 愛美は、壁に書き殴られた血文字に目を止める。思わず膝を乗り出して、巴に指し示した。

「巴君。リッパーの綴りが違う」

 そんなものに巴は、注意していなかったらしい。

 画面が変わる一瞬見たところでは、リッパーの始めの大文字は、確かにRではなくLだった。

「Lipperじゃなくって、Ripperの筈よ。切り裂くはRipで、切り裂きジャックは、Jack the Ripperだもの」

 巴は暫く黙って、ゲームの中のアンジが、自分のアパートに向かうのを見ていた。

 アンジの部屋にあった鉄の箱の中身が、やはり死体の一部を切り取ったものであることが判明すると、巴がこんな質問をしてきた。

「アンジって、言葉から連想するものってありませんか?」

 アンジという言葉の持つイメージ。連想できるもの。

 愛美も黙り込んだが、思いつくままに言葉を上げた。

「アンジ。暗示? アンジ。アンジュ。安寿と厨子王。アンジュ。エンジェル」

 こんなことが何になるのだろう。

 そう思っている愛美の前で、突然巴が顔を輝かせた。成程と手を打って納得している。愛美だけが、分かっていない。

「そうか。Angelですよ。普通だったらコウジならGじゃなくJになりますが、エンジェルからきてるから、JはGじゃなきゃ駄目なんだ。それからリッパーの綴りが違うのも、AngelのelからLを導く為じゃないかな。フィッシング詐欺の綴りはFじゃなく、Phだったりするし。多分、最後までゲームをクリアすれば分かることだと思います」

 興奮したようにそこまで言うと、巴は身を入れてゲームの画面と向き合った。

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