ファイルNo.1 パンドラボックス 34
巴は、そのゲームプログラマーとソフトの企画をした会社の両方に当たってみると言って、長門の部屋に引き込んでしまう。
愛美は、一人で『パンドラの匣』を始めることになった。
外で降り続いている雨の音が、ゲームの映像と相まって、現実と虚構がリンクするような錯覚を覚える。
無音のオープニングフィルムが終わってタイトル画面の次に、ゲームが始まった。
ゲームといえば、戦闘機か何かで、敵機をひたすら撃ちまくったり、格闘系のものしか知らない。弟がやっていたのは、そんなものが多かった。
愛美は興味もなかったが、こうしてやってみるとなかなか面白い。
技術が発達して、ゲームのグラッフィックも、創世紀のことを思えば天と地ほどの違いがある。ゲームオタクなんて呼ばれる人達が、ハマるのも分かるような気がした。
愛美は暫く、夢中になってゲームの世界に没頭した。
「駄目でした。会社でも、ゲームプログラマーのコージが何者か、分かっていないそうです。バイトでも正社員でもなく、パンドラの匣の企画の為だけに、参入していたようですが、誰も実際には会ってないんです。コージが、ゲームの原案からデザイン、音楽の全てを手掛けています。やっぱり問題は、このプログラマーでしょうね」
突然の巴の声に驚いて、愛美は大分時間が過ぎていたことに気付いた。ネットでの情報検索からは、何の収穫もなかったようだ。
「会社の方も、コージを探しています。ゲームに対する問い合わせが、多くて対応に困っているようです。ゲームのどこかに問題がないか、社員が総力を上げて、調べているそうです。危ないですね。死者が出るかもしれません」
つまりコージが何者で、どこにいるか、ゲーム会社すら把握していないらしい。その線から探るのは、絶望的だった。
愛美が、今までのゲームの状況を手早く説明する。
ちょうど、ダンボール箱に入った一人目の犠牲者のパーツ入りの箱が届き、発表があったところだった。
指紋、筆跡、その他、犯人の特定に結び付くようなものは何物もない。
被害者はと言えば、下顎の歯の治療跡から、行方不明になっていた十九才の女子学生と判明した。
ウィンドウが現れて、捜査方針を問われる段になり、愛美は巴に指示を求めた。
「この場合、どちらを選択しても同じでしょう。主人公の置かれている立場を説明する、状況説明の役割を果たしてるだけでしょうから」
愛美は、巴にコントローラーを渡し、席を移る。巴は、殺された被害者の身辺調査から手を付けることにしたようだ。




