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ファイルNo.1 パンドラボックス 32

 このままでは遠くない未来、帰らぬ人となるだろう。

 何が東大寺とうだいじを、追い詰めたのだろう。

 星成せいじょう西のバスケ部の合宿が発端となった、水鏡の事件の時のことだ。

 亡き妹の姿でさえ、東大寺を死に向かわせることはできなかった。

 

 どうするつもりだと聞いた綾瀬に、巴がきっぱりと答える。

「ゲームのどこかに問題がないか、やってみます。今日はあっちのマンションに泊まり込んで、徹夜する覚悟です」

 愛美の顔色が曇る。

 もし本当にゲームに問題があるのなら、巴までもどうにかなってしまうのではないかという不安がある。

「危険じゃないのか。お前も遥もなくすには惜しい人材だからな」

 綾瀬はそう言ったが、表情もなく、声も淡々としたものだった。SGAのメンバーとして、失いたくないだけだろう。

――それでは、僕達はこれで失礼します。

 巴がそう言って、綾瀬の部屋を出ようとすると、クラディスが慌てて見送りの為に体を起こした。子猫達は眠ってしまったのか身動みじろぎしない。

 クラディスはわざわざ長門の座っているソファとテーブルの狭い間を通って、巴に御挨拶に行った。

 クラディスの身体が、長門に膝に触れる。その一瞬、長門は眉を顰めて、身体をこわばらせた。

 愛美は部屋を出る間際、振り返り様に長門に聞く。

「長門さんって、もしかして、犬駄目なんですか?」

 長門の表情が、珍しくホッとしたものに変わる。すぐにいつものぶっきらぼうな調子に戻ると、

「犬はちょっと」

 と言って、深くソファに身を沈めた。

 いつにも増して不機嫌の理由が、愛美は掴めた気がする。

 長門は犬が嫌いなのだ。大きななりをしていて、犬が苦手など可愛げがあるではないか。

 愛美はクスッと笑みを洩らすと、じゃあまたと言って、扉を閉めた。

「巴の台詞じゃないが、BJにはもう深入りするな。死ぬぞ」

 綾瀬はもう一本煙草に火を点けると、長門の方を見ずに言った。長門は、ブスッとした顔で、お節介だと言わんばかりに、綾瀬を睨んだ。

「そんなもの、覚悟の上だ」

 答えは初めから分かっていた言うように、綾瀬がくぐもった笑いを立てる。

「うちのメンバーは、どうしてこう生き急ぎたがるんだろうな」

「色々なものに執着があるからだろ」

 長門の台詞に、綾瀬は意表を突かれたらしい。驚いた顔をして長門を見ていたが、やがて綾瀬はそうだなと呟いて、顔を背けた。

 子猫が寝惚けたのか、ミィと、か細い声で鳴いた。

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