ファイルNo.1 パンドラボックス 24
「あと、お姉さん達の仕事の尻拭いとして、マスコミや警察機構に対して、偽の情報を与えるなどの情報操作もしますけど。それと社長命令で、政治家の汚職や、地方官僚と企業の癒着、医療事故の隠蔽工作、etc.そんなものを暴き出すのが、僕の役目です。これはどちらかと言えば、SGAの基盤作りの為です。彼らの首根っこを掴んでいるという脅しで、犯罪解決には結び付きません」
本当に小学生かと疑いたくなるが、巴は愛美よりも五才も年下だ。だが見た目だけで言えば、巴はせいぜい小学校の中学年にしか見えない。
愛美は、巴を時に弟のように思いながらも、いっぱしの大人として扱っていた。
「巴君のパートナーは、長門さんなの?」
愛美は、東大寺と紫苑以外とは、一緒に仕事をしたことがない。紫苑もそれは同じだ。
唯一、東大寺だけは長門と組んで出張しているが、巴と長門は、愛美からすれば疎遠な存在だった。
愛美は、お行儀悪く、指についた塩気をペロリと舐めた。
「大体僕は、情報面でのサポートが役目ですから。まあ、僕の情報を一番必要としているのは、長門さんでしょう。完全犯罪には、綿密な計画が必要ですし。だから長門さんと組むと、犯罪解決どころか、事件を起こす方に回りますから。パートナーにならないことを祈った方がいいですよ。これ以上犯罪に、手を染めたくないでしょう?」
生意気にそう言って、巴はテーブルの上の宿題を片付け始めた。黒いランドセルに、ペンケースや漢字の練習帳をしまっている。
「だったらSGAやめなきゃ、犯罪との縁は切っても切れないわよ。事件解決の為に、一体どれだけの血が流れるものやら」
愛美は肩を竦め、残ったお菓子に封をして、再びカウンターに戻した。
白藤商業での事件のことを思い出しているのか、愛美の目には微かに怒りの色が浮かんでいた。
その件では、巴も事後処理として、マスコミに偽の情報を流したりと忙しかった為、事件の記憶はまだ生々しく残っている。
愛美は現場に居合わせたのだから、それもまたひとしおだろう。しかし、そうでもないらしい。
愛美は頓着一つ見せずに、別の話題へと移った。
「そう言えば、東大寺さん、どうなってるのかな?」
見ていると巴には、面白い。表情がクルクルと変わる。
怒ったり泣いたり笑ったり。
東大寺も感情表現がストレートだが、愛美の方が屈託なく見えた。女の人の方が強いというのは本当かも知れない。
巴の身近にいる女の人は、母親を除けばみな強い。あの人もそうだった。




