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ファイルNo.1 パンドラボックス 21

「ただの犯罪者として終わるか、それとも力をひたすら隠して、普通の人間として人生を送るかのどちらかだろうからな」

 人の人生を、勝手に決めないで欲しい。

 断定的な物言いが、癇に触る。子供だと思って、舐められては困る。

 東京に出てきてから、この一年。伊達に暴力団や暴走族の連中と、付き合っていた訳ではない。

 東大寺とうだいじは、綾瀬のデスクに近寄ると、マホガニーの重厚な机を平手で殴りつけた。

「ちょっと待てや、ふざけんなや。オッサン」

 大抵が東大寺の関西弁で、ビビって話にもならないぐらいだが、綾瀬は全く動じなかった。それどころか、薄い微笑さえ浮かべている。

「元気があり余ってるんだろう。SGAは〈何でも屋〉だ。君が、思いっきり暴れても困らない仕事の口が幾つもある。今、うちのメンバーは、巴一人なんだが、今度君にも紹介しよう」

 東大寺は、綾瀬の言葉に噛みついた。

「誰もやるとは言うてへんやろ」

 この男と話していると、調子が狂う。

 東大寺は鼻息も荒く、綾瀬に背を向けると、ソファに座り込んだ。コーラーをあおってから、ジロリと綾瀬を睨む。

「〈何でも屋〉なぁ。どうせヤバイ仕事なんやろ。それにしても、社員が一人とは、えらいお粗末な会社やな」

 にしては、この部屋を見る限り、儲かっていないようには到底見えない。

 東大寺も、社会の裏の顔を知っている人間だ。この綾瀬も、危険な仕事を請け負って、法外な儲けを得ている口だろう。

 だがSGAに入った東大寺は、ごく少数の人間しか知ることのない、この社会の本当の闇を見ることになる。

「メンバーの入れ替わりが早いんでね。もう一人社員の口は見つけてあるがな」

――血気盛んなのもいいが、あまり早く死なれると役に立たないからな。

 その時、墨を塗ったような綾瀬の心に、鏡のように光る感情の破片が見えた。

 チラリと見えた綾瀬の心の内は、吐き気がするほど残酷な冷ややかな気配に満ちていた。

 東大寺は、綾瀬に迫力負けした形になる。

「人死にが出るような仕事なんか?」

 綾瀬は、それにはイエスともノーとも答えなかったが、次の言葉を考えれば、肯定しているも同然だった。

「死ぬか死なないかは、君の技量次第だな」

 普通は狼狽してよさそうなものなのに、さらりと綾瀬は言ってのけ、東大寺の出方を窺っている。

 東大寺は、コーラーの缶を穴の開くほど睨みつけた。

 ぐしゃっと音がして、缶は握り潰されたようになる。勿論、誰かが手を触れた訳ではない。

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