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ファイルNo.1 パンドラボックス 18

 事件は複雑怪奇な様相を示し、まるで迷路のようにアンジを誘い込む。

 

 アンジは部長に呼び出された。どうせ言われることは分かっている。

 部長室のデスクには、写真が散らばっている。現場維持の為の写真だ。

 どれにも、切り刻まれた被害者が写っている。

――これでリッパーによる被害者は四人目だ。犯罪予告がされてなお、いまだに犯人の特定さえできないのは、アンジ、お前の職務怠慢以外のなにものでもない。

 映し出される文字がスクロールして、次々と文字を吐き出してくる。

 上司の憎々しげな表情に、アンジは苛立ちを覚えた。

――だったらなぜ、捜査妨害に対して手を打たない。邪魔されるぐらいなら、俺一人で任務に当たった方がましだ。

 アンジは身を翻すと、部長室を後にした。

 

 リッパー。

 犯罪史上に残る猟奇殺人鬼として、その名は長く語り継がれことになるだろう。

 死体をバラバラにすることに意味があったのは、前世紀の話だ。証拠隠滅の為でも、運びやすくする為でも、被害者の特定を難しくする為でもない。

 リッパーは、死体を切り刻み、あまつさえ、その一部を梱包したものを、警視庁の捜査第壱班の刑事、アンジ宛に送りつけてくるのだ。

 これが彼に対する挑戦と言わず、なんと言おう。

 リッパーによる犠牲者は、ついに四人目を数えた。

 事件は繰り返され、アンジの捜査を嘲笑うかのように、箱が届けられる。

 中身は、被害者から切りとった身体の一部分だ。

 アンジが自分の席に戻ると、メールが届いていた。

《次はお前の番だ。L》

くるなら、きてみろ。リッパー。

 貴様だけは何としても、俺がこの手で捕まえてやる。

 誰の助けもいらない。俺一人でだって、貴様を殺してやる。

 アンジは、誰とも分からないリッパーに対して、一人心に誓うのだった。

 * 

「あなたのその力、眠らせておくのは勿体ないわ。よかったら、うちの社長に会ってみない。あなたのその力を、十分理解してくれる人よ」

 西川絵美は、それが癖なのか、首を少し傾げて、控え目な笑みを浮かべていた。

 二五才で、社長秘書をしているというその女は、とても落ち着いて見える。

 以前、酔っぱらいのオヤジに絡まれているのを助けた時も、彼女はうろたえるでも取り乱すでもなかった。

 それから何度か会って、今日そう言われた時も、東大寺とうだいじは素直に言葉に従うつもりになっていた。

 しかし、西川の勤めるSGAの会社の応接室に通された時、東大寺は来るのではなかった思ったのだ。

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