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ファイルNo.1 パンドラボックス 15

 愛美は、風呂上がりで、濡れた髪の毛をタオルで拭う。

 髪の毛は、まだ切りにいっていない。やっぱり切ろうかと思っているところだった。髪が長いと、乾かすのに時間がかかる。

 愛美は、電話の相手が誰だか悟るのに少しの時間を要した。

 二ケ月ほど前だったか、東大寺とうだいじの住んでいる老朽化したボロアパートで(愛美が言っているのではない。東大寺本人がそう言ったのだ)ボヤ騒ぎがあり、修理の間、東大寺はこちらのマンションの方に戻ってきていたのだ。

 ちょうどその頃、東大寺の通う星成せいじょう西では不審死が続く事件があった。その時の被害者の死を伝えてきたのが、結城直哉だった筈だ。

 愛美は、名前を聞いていなかったが、電話に出た東大寺が、ナオヤと呼んでいたから多分間違いはないだろう。

 確か、星成西も一人暮らしは禁止されている筈だ。このマンションから学校には通っていることになっているのだろう。

 東大寺の学校関係者が、ここの電話番号を知っていてもおかしくはない。

「どうって、私は、最近会ってないんで、分かりません。学校行ってるんでしょう?」

 最近会っていないというのは、本当だ。もう一週間以上になる。

 愛美は頭の中で、素早く計算した。

 メンバーそれぞれの活動状況を把握している訳ではないが、この前綾瀬に会った時、東大寺に仕事が入っているようなことは言ってなかった筈だ。

 もしかしたら、突然辞令がおりたのかも知れない。

 それを肯定するかのように、結城直哉は言った。

「それがもう四日も来てないんです」

 声には、不安の色が滲んでいる。

「彼、よく休むことは分かってますけど、今回は何か違うみたいで、とにかく部活だけは前なら出てたし、アパートの方にも行ってみたんですけど、いなくって。もちろん電話も通じません」

 ああそうだ。

 東大寺はアパートに、電話を引いたのだった。

 どうせなら留守電機能付きにすればよかったのに。家にいないことだって多いのだから。

 愛美は、溜め息を吐きたい気持ちだった。

「心配ないと思いますよ。急な用事で、連絡できなかっただけだと思います。多分、また連絡があるんじゃないですか。一応こちらの方でも、東大寺さんの近況をチェックしておきます。何かあれば、連絡しましょう。よければ電話番号を控えさせて貰えますか?」

 結城直哉少年は、自宅の電話番号を告げた後、愛美に聞いた。

「親戚の方ですか?」

 愛美は一瞬躊躇したが、ええと答えた。

 あまり滅多なことは言わない方がいい。後で東大寺が、どうにでも誤魔化してくれるだろう。

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