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ファイルNo.1 パンドラボックス 14

 まず同じ部署の同僚達に、箱がいつどこで誰によって届けられたかを、問い質していく。

 しかし、それは思いのほか、困難な作業だった。

 はぐらかす者。知らないと突っぱねる者。嘘か本当か分からない、曖昧な証言をする者。

 アンジにとって、同じ職場の同僚さえ、心から信頼できる者などいないようだ。

 彼の行動は協調性を第一とする警察機構において、異端だった。一匹狼の彼を、援護してくれる者はいない。

 仲間うちにさえ、敵は潜んでいる。疑心暗鬼に陥りそうだ。

 証言内容を元に、幾つもの選択肢を選り分けながら、アンジは捜査を続けていた。

 そのアンジの許に、メールが届く。差出人は、Lとなっている。

 メールを開くと、そこにはアンジを嘲笑うかのような文章があった。

《プレゼントはお気に召しただろうか。次の贈り物も用意ができている。今度は君の家に届けておく。L》

 それからが、慌ただしかった。

 市民からの通報があり、アンジ達、警視庁捜査第壱班、猟奇殺人専門班はただちに、事件現場へと急行することになった。

 殺人現場は、人気のない路地裏だったが、白昼堂々の犯行だ。

 バラバラにされた男の死体の一部が、明らかに紛失しているようだった。

 右手の人差指と中指の二本が根元から、内臓は心臓と肋骨数本、左の眼球、他にも何か失くなっている部分があるかもしれない。

 剥がれかけたコンクリートの壁面に、何かを誇示するかのように、Lipperと血文字で書き殴られていた。リッパー・切り裂き・L。

 アンジは、同僚の制止も聞かずに走り出していた。

 行く先は、自分のアパートだ。アパートにつくと、まずアンジは鍵が閉まっていることを確かめた。

 扉を開けば、ワンルームの部屋が現れる。一目で、見渡せる。

 ソファベッドと、丈の低いテーブルしかない部屋だ。壁は、コンクリートが剥き出しだ。

 その部屋に異物のように、鎮座するものがあった。

 テーブルの上には、ポツンと鉄の箱が置かれている。

 まるでそれは、悪夢のようだった。

  *

 電話が鳴る。

 相手は綾瀬か紫苑か、それとも東大寺とうだいじか。

 そう思って電話をとった愛美は、思わぬ相手に驚いた。相手は夜分申し訳ありませんと、礼儀正しく言ってから、

「あの、俺、結城直哉と言います。東大寺君と同じ星成西に通っているんですけど、東大寺君、今どうしてるんですか?」

 と、早口でまくしたてた。

 時計に目を走らせる。十一時前だ。確かに夜分遅くだろう。

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