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ファイルNo.1 パンドラボックス 13

 紫苑は、ドン・ファンというより、母性本能を擽られるタイプかも知れない。

 まあ愛美は、自分が紫苑の恋人として見られる範中から外れていることを自認しているので、その点は気楽だ。

「私は見た目は軽薄に見えるかも知れませんが、女性だったら、誰でもいいっていう訳じゃないんですよ。私の外見や何かではなく、私の中身を好きになってくれる人がいいですね」

 それはそうだろう。

 だが紫苑の場合なら、言い寄る女性も数知れないのだろうから、よりどりみどりであることに変わりはない。

「だったら、私でも構わないんですね?」

 紫苑は素直に頷きかけて、愛美がようやく自分をからかっていたことに、気付いたらしい。

 とうとう箸を置いてしまった。

「愛美さん。ひどいですよ。大人の男を、からかわないでください」

 愛美はヒャッと肩をすくめると、ごめんなさいというような表情をした。

 紫苑から見れば、愛美はあまりにも無防備過ぎる。

 自分が男として見られていないこともだが、SGAのメンバー全員をこうまで信用してしまえるのが、不思議でしょうがない。

 巴を除けば、全員十分男としての機能を果たせる者ばかりだ。

 それなのに、愛美はSGAの紅一点であり、誰にとっても妹のような立場のままだ。

 みな、今の関係を壊すのが不安なのかも知れない。仕事上のパートナーとしての一線を越えてしまうことに。

 だから紫苑もここは、大人しく引き下がる。

 硬くしていた表情を緩め、微笑に変える。もういいんですよと言うように……。

 箸をとると、

「このタイ風の和え物も食べて下さい。自信作なんですよ」

 愛美が、ホッとしたように笑顔になる。

 再び、明るい雰囲気が辺りを満たす。

 団欒。

 それがたとえ、作り物だったとしても。今は、この小さな箱の中でいたい。

 隔絶された、安全な世界の中で。

 *

 死体の一部を詰めた、鉄の箱やダンボールなどの遺留品からは、筆跡、指紋、その他、犯人を特定できるものはなかった。

 箱の中に入っていたパーツの持ち主の方は、十九才の女性で、数日前から行方不明となっていた、と判明。

 遺体の残りの部分は、まだ発見できていない。

 選択肢が出る。

 アンジを名指しで届けられたらしい箱。遺留品から捜索を行うか、それとも、殺された女性の交友関係から洗うか。

 アンジは、自分に対する挑戦と受け止め、その箱の行方から追うことにした。

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