聖人丈二(セイントジョージ)に関する証言
聖人丈治?
もちろん知ってるよ。おっかない殺し屋さ。
都市伝説じゃないのかって? 馬鹿いうんじゃないよ、ちゃんといるさね。
会ったこと? あるよ。一度だけね。仕事を頼んだことがある。
誰を殺したのか聞きたいのかい? 旦那だよ。あぁ、実に鮮やかな手並みだったねぇ。
あいつの殺しはね、《迅速》なんだ。とにかく《素早い》んだよ。あんだけ早けりゃ、殺られる側だって、死んだことに気がつかないんじゃないかねぇ。
うん、痛みはないだろうね。あっという間に天国さ。実のとこ、あいつが《聖人》って呼ばれる理由はそれだからね。
どんな男かって?
さぁ、どうだったっけかねぇ、捉えどころのないやつだったからねぇ。
強いていえば、成人男子の最小公倍数みたいな顔をしてたってくらいかねぇ。そう。どこにでもいるような顔ってことさ。
会いたい? 聖人丈治にかい?
あたしに仲介して欲しいって? 無理だよ。あいつは名刺はおろか、電話番号だって残しちゃいかなかったからね。ビジネスマンとしてはいただけない男だよ。
じゃあ、どうやって聖人丈治に仕事を頼んだのか? まぁ、そりゃ当然の疑問だわね。
古い友達、の紹介さ。腐れ縁ってやつでね。あぁ、そいつを頼ろうったって無駄だよ。先週死んじまったからね。
悪いね、力になれなくて。あぁそうそう、どういった理由であいつを捜してるのかは知らないがね、一個だけ忠告しておくよ。
《死に急ぐこたぁないさ》
おやおや、どうしたね? そんな真っ青な顔しないどくれよ。
ただ、いってみただけさ。年をとるとね、若い子に、なんとなぁく、世話焼きたくなるもんなんだ。
ま、残念なことに、大概、役にはたたんがね。