野球部の少年
4 野球部の少年
翌日。土曜日であった。
警察の現場検証が終わったので、学校が解放された。
八良はその日も学校で、情報教室で何かをしていた。
そのとき、パリーンと情報教室の窓が割れた。
八良はその割れた窓から外を覗いた。
そこには帽子を脱いだ小柄の丸坊主の少年がいた。
「すいません!ボール取ってもらえますか?」
八良は落ちたボールを手に取り窓の前で少年に手を振った。
「あ…あの…?投げてもらえますかー?」
「こっちに来てもらえませんかー?」
「…え?」
少年の周りの先輩が少年を冷やかしていた。
数分後。
少年が情報教室の戸を開けた。
「失礼しまーす。」
その声は最近声変わりしたみたいのようだった。
八良は立ち上がり、持っていたボールを持って戸の外に居る少年のもとに歩いた。
「はい。これ。さっきのボールです。」
八良は少年に渡した。
「もしかして、怒ってます…?」
少年は八良に上目遣いをした。
「あなたが窓ガラスを割っていないのなら、あなたに怒られる権利なんてありません。そもそも、私に怒る権利がありません。」
「じゃあ、なんで、呼んだんですか…?」
「少し聞きたいことがあって…。」
「な…何秒で済みますか…?」
少年は少し焦っていた。
「5秒で済みます。」
八良は手をパーにして言った。
「その質も…
「北木野先輩は何部に所属されていますか?」
八良は少年の言ったことにかぶせて言った。
「あ、サッカー部ですよ?あの、もういいで…
「ありがとうございました。では。」
「え…あ…お…あの…!」
八良は情報室から出てスタスタとその場を去った。
「なんなんだ…あの人…。」
少年はぽつりと呟いた。




