行方不明の鍵
次の朝の7時頃。
八良は情報教室で何かをしていた。
そのとき、ガラと戸を開ける音がした。
「八良さん?」
そう呼んだのは北木野であった。
八良は手を止めた。
「あ、あの北木野先輩ではありませんか!どうしたんですか?こんな朝早くこんなところに来て。」
「『あの北木野先輩』という言い方は辞めてほしいな…。」
「どうしてですか?成績優秀。運動神経抜群。異性からも同性からも評判が良く、みんなの人気者であり、毎年、バレンタインデーにはチョコを50コ以上もらっているとか。さらに、恋人申請された回数は100回を超えており、そのされた人は同級生や後輩。さらに先輩にまで。『何もかもが完璧で、何もかもがそろっている。』そうよくみなさんに言われるそうですね?」
八良は早口で質問してきた。
「はは…。ま…まあね…。でも、何もかもがそろっている人間なんて、いないよ…。」
「私もそう思います。人間は何かで満たされている分、何かが欠けているはず…。あなたにも、欠けている部分があると思います。」
八良はパソコンをシャットダウンした。
「君、さっきと言ってることが違うくないか?」
「私は『あなたが完璧と言われている』と言いましたが、私はあなたを完璧だとは一言も言っていません。」
「はは…そうだね…。」
北木野は苦笑いした。
「で、用とは?」
八良は立ち上がり、北木野のもとにトコトコと来た。
「はあ?」
「用があるから私を呼んだのではないんですか?」
「あー!そうそう。君に頼みたいことがあってさ!」
2人は3Bの教室前に来た。
「俺…朝学校に来たんだけどさ…。鍵が開かなくて…。」
「いつも1番なんですか?」
「う…うん。クラブがあるしさ…。」
北木野は廊下に置いていたカバンを肩に掛けた。
「これをどうしろと…?」
「確か、君、ピッキングの達人だったよね…?開けてくれないかな…?」
「鍵は職員室になかったんですか…?」
「うん…担任にきいても、『ない』って言われたし…。」
「担任の先生に。ねえ…。仕方ないですね。少し待ってください。」
八良はポケットから何か分からない物を出した。
「何…それ…?」
「私の『ピッキングセット』です。」
八良はしゃがみこみ鍵穴をいじり始めた。
「あれ?ピッキングって針金とかでやるもんじゃないの?」
「針金で鍵が開けれるのなら、あなたの家にも、私の家にも空き巣が入ります。」
「そうだけどさ…。漫画とかでよくあるじゃん?」
すると、八良の手が止まった。
そして、八良は北木野の顔をじっと見た。
「漫画は、現実ではありません。」
八良はそう言って、作業を始めた。
「は…はあ…。」
「お…お、お…?…開きました。」
「おお!ありがとう!」
北野木はそう言って、戸を開いた。
「う…うわあ…!?」
北野木は後ろにずっこけた。
「どうしました?」
八良は教室の中を覗き込んだ。
そこには、倒れている人があった。
八良は倒れている人の元へいき、首元を触った。
そして、八良は倒れている人に手を合わせた。
「この方はどなたか知っていますか?」
「そ…そいつは飛来だ…。し…死んでるのか…?」
「ええ。よく分かりましたね。教室の外から見ても、血が見えなかったので、死んでいるのかわかりませんでした。」
「…顔的に分かるだろ…。死んでる顔じゃん…。」
「…とりあえず、先生を呼びましょう。」
2人は職員室に向かった。