2P 真実
お待たせいたしました!2話です!
タイトルを変更しました。賢勇とでもお呼びください。
Side:サム
『お楽しみの所、済まないね』
何処からともなく聞こえてきたその声に俺の声は掻き消された。この声が響いた時から広場は混乱していた。ったく、この状況で声が聞こえたら可能性は一つだろうが。俺はつい怒鳴ってしまった。
「狼狽えんじゃねぇ! てめぇらはトップギルドの一員だろうが!」
俺が怒鳴った後にグラムの旦那が続いた。
「サムの言う通りだ。お前らは何のために、ここに来たと思っている! 遊びに来たつもりならさっさと帰れ!」
うんうん。全く旦那の言う通りだぜ。それにしてもDSUはそんなに狼狽えた様子は無かったな。来る前に発破をかけといて正解だったみたいだな。.......それとも、ただ単に状況に着いていけてないだけか。なんか後者の方な気がする。
『済まない。私の代わりに場を収めてもらって』
謎の声が俺達に礼を言ってきた。さて、気を取り直して。
「いや、構わねぇよ。だって、あんたが話を始められないだろ? な? 運営さん」
『ああ、この世界の真実を伝えよう」
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『まずは、私達《UNKNOWN》についてだ』
《UNKNOWN》 この世界を造り出した会社だ。そもそもがほとんど謎に包まれた会社なのだから、さぞかし驚きの真実がたくさんあることだろう。そう考えていると、黒いマントを纏った六体のアバターが突如として現れた。思わず身構えると、
「ああ、そんなに身構えないでくれ。私達もアバターがないと不便なのでね」
一番前にいた黒いマントのアバターがしゃべった。どうやら、運営サイドのアバターらしい。
「さて、私達の正体だが.......」
そう言いながら六体のアバターは纏っていた黒いマントを脱ぎ捨てた。
「なにっ!? 桂木元総理に、アメリカのフロイス元大統領だと......」
「中国の林元国家主席と、ジャックイギリス元首相もいるぞ!」
「ロシアのキルゼフ元大統領も、フランスのシャール元大統領までいるわよ......」
マントのしたに隠れていたのは、約三年前に次々と辞任していった、国連の常任理事国と日本のトップ達の姿だった。
「まあ、そういうことで私達が《UNKNOWN》だ」
「なぜ貴方達が..........」
「なあ、サムくん。三年前と言ったら何を思い浮かべる?」
「三年前か.....隕石落下か?」
「その通りだ。この隕石が全ての始まりだ」
「どういうことだ? 全ての始まりも何も、あの隕石には何も無かったのだろう? それとも本当は何かしら分かってたのか?」
旦那の疑問はもっともだ。三年前に日本近海に落下した隕石はJAXAとNASAの合同で研究された結果政府は、地球上には存在しない素材で出来ていること以外は何も発表しなかった。しかし、疑問は残っていた。隕石は相当な大きさだったにも関わらず、津波などの、影響が少ししかなかった。あの隕石落下が与えた影響はほとんど無かった。いや、ある意味では影響はあった。まあ、それは置いておこう。
「で? 結局何かしら分かってたのか?」
「ああ、君達は地球に友好星というものがあるのを知っているかい?」
質問に質問で返された。まあよしとしよう。それにしても、友好星か......。語感から察するに、
「友好都市のようなものか?」
「その解釈で構わんよ。実際大した違いはないのでな。それで、地球はユーリアという星と五十年前から友好を結んでいる」
「少し待て。ということは各国政府は宇宙人の存在を五十年前から知っていたということか!?」
「そういうことだ」
まじかよ........。でも、いや待てよ?
「ならば、何故その事を世間に公表しなかった?」
たった今、俺に生じた疑問を旦那が先に訊いた。五十年前にも宇宙人についての疑問は腐るほどあっただろうに。
「すごい素朴な疑問なんだけどいいかしら?」
「勿論。なんだい?」
「有名なエリア51ってあるじゃない? あれ、宇宙人についての研究施設って噂だけど、本当なの?」
「宇宙人についてのっていうのは本当だよ。研究施設じゃなくて、あそこはユーリアとの交信施設だよ。決して解剖とか非人道的な実験なんてしてない」
エリア51の真実がすごくサラッと暴露されてんだけど! ていうか、噂は聞いてたんだな.......。
「話を戻すわよ。貴方達に訊くけど、突然政府が宇宙人の存在を公表したとしましょう。政府が宇宙人と何度も交流していたということになるわよね。そのことを世間に今まで黙ってました。それを国民が知ったらどう思うでしょうね?」
シャール元大統領が言いたいことが分かった。人間というものは普通とは違うものを恐れる。それに関係するものもまた然りだ。ということは、
「政府への不信感が高まるな」
「そうよ。私達はそれを恐れたの。そんなことになれば、最悪世界規模での戦争が起きるわ。政府対国民という図でね」
考えうる限り、最悪の結末だと言える。
「それなら、何故このタイミングで私達に教えたの? 私達が世間に公表しないという確証はないわよ?」
「まあ、バレてしまったらしょうがないと思っています。人の手で行っている以上、必ず何処かでぼろが出るものですから」
「話を戻すが、ここで最初の隕石の話に戻ってくるわけだ。あの隕石には中身があった」
「中身? 何が入ってたんだ?」
「ユーリアからのメッセージとオーバーテクノロジーだ」
? 疑問が多すぎる。一つづつ訊いていこう。
「まず、オーバーテクノロジーってのは何だ?」
「簡単に言えばこの状況を創り出しているものだ。分かるかい?」
「この状況を創り出しているもの?」
「コネクターだよ。コネクターの最たる特徴は何だった?」
コネクターの特徴か........。コネクターといえば、世界で初めてのホログラムディスプレイ機能を登載した......。っ! そうか、
「ホログラムディスプレイか.....。突然何の前触れもなく全世界に発表されたのはそういうことだったのか.....」
「そうだ」
「なら、あのアメリカが《UNKNOWN》に技術開示を求めたのは.......?」
「あれは、《UNKNOWN》への謎を高めるためのただの茶番劇だよ。頼んだら、快く了承してくれた」
さいで。
「コネクターのホログラムディスプレイだけじゃない」
そう言いながら、桂木元総理は手に、初級の一般的な片手剣である『ロングソード』を実体化させた。
「この世界もそうだ。接続も同じ様にユーリアからのオーバーテクノロジーだ」
ユーリア様々だな。つまりユーリアからのプレゼントが無ければこの世界は今頃存在してないってことか。
「それで? もう一つの、メッセージってのは何だったの?」
「そう、それだ。それが今回君達を.......いや、この世界を創りだした理由だ」
「え? そんな重大そうなこと、話しちゃっていいのか?」
「だから、その為に呼んだって言ってるじゃない」
そりゃそうだ。駄目なら呼ぶ必要がない。
「ユーリアからのメッセージだが、解読した結果、警告だということが分かった」
"警告"読みにして、4文字。書けばたった2文字であるその言葉でその場の空気が数段張り詰めた様に感じた。普段どんな風に振る舞っていても、此処にいるのはトップギルドばかりだ。その単語に反応してこの話に対する計画度を強めたのだろう。最初から警戒しとけっつーの。ん?お前らはどうなんだって?言う必要あるか?
「宇宙には我々の地球がある宇宙とは違う宇宙があると言われている」
「アナザースペース理論....だったか?」
確か、最近になって突如出てきた理論だ。
「その理論は正しい。というより証明されている。何故ならユーリアがその違う宇宙の惑星だ」
「ほうほう。そいで?」
「ユーリアと同じ宇宙にスプーラという惑星がある。そのスプーラが3年後にこの地球に侵攻してくる。というのがユーリアから届いたメッセージだった」
「おい、待てよ。そのメッセージが届いたのは3年前の隕石でだろ?ということは.......」
「そう、侵攻してくるのは今年だ」
やっぱりな......いやでも、ちょっとおかしい。
「それだけじゃ、俺達を呼び出したことにつながらない」
「勿論だ。まだ話は終わっていない。私達はメッセージを発見したあと、すぐに会談を行った」
「あの隕石についての会談かしら?」
「そんなのありましたっけ?」
「何言ってるの、あったじゃない。マスコミの取材を全面的に禁止したやつ」
「ん? あぁ、そういやありましたね」
「その通りよ。一応隕石についての話でしょ? ただ内容が違うだけで」
「その会談の結果、対抗策は決定した。しかし我々には時間が無かった。だから.......」
「そこであの有名な一斉辞任か.....」
「そういうことだ。まあ、流石に少し罪悪感があるがな.......」
そう言いながら、桂木元総理は少し困ったような顔をした。周りを見ると残りの常任理事国の元首脳陣も同じ様な顔をしている。それもそうだろう。あの一斉辞任で世界の行政は大変なことになったんだ。罪悪感も感じるだろう。感じなければ鬼だろう、流石に。
「話を戻しますよ? その会談の後に私達は《UNKNOWN》を創立しました。そして、この世界を創り出しました。この世界は最初から一つの目的の元に創られたんです」
「一つの.........目的?」
「この世界は現実ではない。この世界では現実の身体能力は関係ない。全ては想像力の強さだ」
それについては俺達が嫌というほど実感している。現実では才牙の方が身体能力は高いがこっちでは俺の方が強い。
あいつは考えるということをしないからな。ただ、勘は鋭いから強い。獣みたいなやつだ。
「何はともあれ、この仮想の世界で戦うことのできる人物が必要だった」
「戦うことのできる........?」
どういうことか、意味を掴み損ねていると、首脳陣が頭を下げて言った。
「どうか、地球を救うために、スプーラと戦っては貰えないか?」
3話では、ようやく戦闘シーンに入ると思います。
それではありがとうございました。