到着
今回も見てくださりありがとうございます。
バス内での公開処刑を乗り越え、精神的にグロッキーの健二は、十字架のごとく自分の荷物を背負って、施設の体育館に集合した。
かなり前に建てられた施設の割には、きれいに使われており、天井には水銀灯が黄色身を帯びた光を全体に供給していた。
床のワックスも定期的にかけられているらしく、元気に光を反射させているが、それがかえって健二の精神をアッパーなみに攻撃している。
そんな中、生徒たちはぞろぞろと体育館シューズに履き替えて入場してくる。
キュッ、キュッとシューズの底が床を擦る音がいくつも響き、生徒達の雑談が耳を刺激する。
一年は、上級生が通る道を開け、少し小さい声で話している集団と、全く気にしないで図々しくも入口の近くで立ち話をしている集団とに分かれている。
と、その横を一際大きな集団となって通る女子達がいた。
組章から、二年生の女子らしい。
健二の主観だが、容姿はそこそこ綺麗な人たちだと思うが、大きな声を上げて騒がしく話すことや歩くときに足音がやたら大きいところは、あまり品の良さを感じないため、あまり惹かれるところはない。
その集団の後ろに小さい集団が追随し、こちらは静かに小さい声で話しをしている。
だが、健二の視線はその集団ではなく、そのまた後ろを歩く一人をとらえた。
物静かだが優雅、芯が強いがそのことを表に出さず、慎ましくお淑やかな態度で入場してくる。
頭の後ろで一つに結ばれた黒髪は艶があり、美しく彼女の優雅さを引き立てている。
他人を見下すことなく、明るい受け答えをするが決して先の集団のように大きな声を上げず、会話に加わるが他者を引き立て役に回り、話の中心を独占しようとはしない。
(かなり健二の主観が入った見解になっている。)
言わなくても分かるだろうが、こんなに健二の主観による補正がかかるのは、赤崎先輩だ。
自然と健二はその姿を視線で追ってしまう。
観察した感じでは、どうやら赤崎先輩はクラスの中心人物というより、若干地味なサイドのポジションに収まっているようだ。
「もったいない気もするな。」
独り言が漏れる。
「何がさ。」
「ほぇ!?」
バスの中に引き続き、いきなり予想していないタイミングでの返事に心臓が飛び出しそうになった。
見回してみたが、姿が見当たらない。
中学二年からの付き合いだが、この展開には慣れつつある。
一度、正面を向いて一呼吸。
そこから、左を向けば平然と立ってる細身の同級生。
「マッちゃん。気配消すのをやめろって、言ってるだろ。」
心臓に悪すぎる登場を毎回してくれる友に、いつか心臓発作で殺されるのではないかという恐怖すら覚える。
「いやいや、つい癖でやっちゃうんだよ。」
「貴様は忍者か。」
「まあ、それはどっかに置いといて。なんか先輩を見てたようだけど…ストーキングはよくないよ。」
「いきなり犯罪者呼ばわりはよしてくれ。」
「はっはっ。冗談だよ。ヘタレの健二には女子を追っかけまわす度胸はないだろうからね。」
恭二の態度は軽いが、健二にとってはヘタレで恋愛沙汰での行動力のなさは自覚している点のため、結構痛いところを突かれた格好になった。
「それで、美人先輩に見とれて突っ立ていたのか?」
「・・・。」
「おい、マジか?! どこ?!」
健二のほほに少し赤みが差したのを、恭二は追及するが、何も情報が得られないことが分かるとあっさり引いてしまった。
「まあ、学校の中にいるならそのうち見つかるだろ。」
そんな感じで列に戻ろうとした瞬間、体育館の隅っこが何かに賑わっている。
今回もここまで読んでくださり、ありがとうございます。
登場人物が増えて何が何だか分からない人もいるかもしれません。
(本当に文章力が足りなくてすみません。)
それでもここまで読んでくださりありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします。 today & #include<stdio.h>




