合宿!
そんなこんなで、俺はバスに揺られていた。
ディーゼルエンジン特有の振動が今も、腹の底から揺さぶってくる。
ここ二、三時間はずっと座ったままなので血流が悪くて体中が重たい。
眠るにしても、座席に腰かけたままの状態での仮眠にも連続限界があり、今は寝たくても眠くならない。
仕方なく、窓の外を見ると、春を迎えたばかりの木々が青々と葉を茂らせ、鬱陶しい日差しを遮ってくれているのはいいが、どこまでも続くとさすがに飽きる。
この人気の少ない場所をさらに進んだ場所に合宿所(研修センターとか言ったか?)があり、そこで二泊三日の宿泊学習を行う。
周りには、まともな民家やバス停すらないため、抜け出しても遊ぶ場所はおろか、変える手段すらない。
一年生は、クラスに馴染み、また、勉学に励むためにその基礎を身につけるべく、二年生は、新年度に入り、新たなクラスでの団結を高め、後輩に手本を示すため、三年生は大学受験に向け意識を向上させるためとか、しおりに書いてあった。
―――
つまりは…「春休みにたるんでた分、しっかり勉強しろやこら!」という事らしい。
―――
そんなことより今は、この情景…、
「入学早々に転校って現実にあるんだ。」
「はい、まあ…。いろいろとありまして。」
「枝或って、なんか凄い名前だね。」
「そうですか?」
「田平さんて、中学どのへん?」
「えーと…。」
「そんなことよりさ、入って一週間で、勉強合宿ってこの学校気合入り過ぎだと思わない?」
「それ分かる! いきなりだもんね。」
「それは、進学校だから仕方ないかと。」
「あっ、グミ食べる? 先生には内緒だよ。」
「うん、ありがとう。」
(エアルがバスに乗り込んでいる事+なぜか馴染んでいる事)が、俺の頭を痛くしている。
なんか、三、四人でガールズトークらしきものになってるし。(男子はたまに勘違いをするが、決して恋話だけがガールズトークでは無い。)
と言うか、みなさん…こいつエアコンですよ! 転校だ何だ以前に、人間じゃないし!
それを抜きにしても、こいつ中学卒業できてませんから。
どんな手口を使ったかは分からない(聞いたらやばそうだったので聞けなかった)が、一昨日、「転校生を紹介する」とあの岩本(どMやろう)が言いだして、何事かと思ったら、田平 枝或の名前でエアルが転校して来やがった。
(いや、先生も不思議に思えよ! どMだとなんでも受け入れるのか?!)
だが、エアルはあまりに人間らしく作られているが故に、俺が何を叫んでも信じる者はおらず、かえって危ない人だと思われかねないので脳内で絶叫するしかない。
隣に座った賀田森君は、睡眠不足なのか不機嫌なのかそれとも、とってもシャイボーイなのか、バスに乗ってからまともな会話が成立しなかったために、俺は会話を諦めて周りの女子たちが話しているのをBGMにして、エアルの行動を監視した。
いや、転校だとか家の事とかいろいろあったせいで、クーリングオフの期間を過ぎてしまったなどと嘆いても仕方が無い、強制的に転校してきて宿泊学習にまで乱入して来たのでは今さら排除できない。
――クーリングオフ以前に、康雄が家に住まわせることを承諾した以上、追いだせないのは確定しているが、そんなことに気付かないほどに健二の精神状態は最悪だ。――
なんだかんだで、ここまで読んでくださりありがとうございます。
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