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かでんポータブル  作者: today
第二章かでんがとどいてから
22/35

学校Ⅳ

「それで、さっきは何を言おうとしたの?」

凄いタイムロスをした気がするが、クラスの場所を聞きたかったのを思い出す。

だが、道に迷いましたなんて、赤崎先輩の前で言えと?

恥ずかし過ぎるだろ。

綺麗なお姉さんの前で、そんなことはっきり言えませんよ。

年頃の男の子は、デリケートなのですよ。


「あの、クラスが、」

結局、言った。

「あー、分かる。みんな最初は何処が自分のクラスか分からなくなるの。去年、私もそうだったから懐かしい。」

真剣な顔と、優しい表情が混ざって独特の雰囲気を作り出し、気分を和らげてくれた。

脳内補正かけてなくても美人なのに、この状況でそんなオーラを出されると心臓バクバクですよ。

「こっち。」

それから、赤崎さんの誘導で二階の一年の教室前まで来ることができた。


「ありがとうございます。それと、タメ口きいてすみませんでした。」

「気にしないで。それに、―――。じゃあ、私やることあるから。」

途中が聞き取れなかったが、何か急いだ様子だったので引き止められなかった。


不意に、教室に入る前に腕時計を見ると九時、一分前。

ギリギリ、集合に間に合った。

と、ドアに手を掛けた瞬間だった。

先輩達の努力の結晶である、綺麗な廊下の上を疾走する女子がこっちに走って来る。

スリッパは、ラグビーボールみたいに小脇に抱えている。


集合に間に合うために、走って来たのだろう。

まあ、スリッパじゃ走りにくいからな。

でも、靴下で廊下を走ったら危ないぞ。


爆走少女の足は、光り輝く廊下ではグリップがきかず、止まれない。

慌てて壁に手を着いて、減速を試みるが上半身だけにブレーキがかかり、豪快に転んだ。

さらに、ゴンッ! と後頭部を打ちつけて、「カハッ」とかマンガでしか聞かない台詞を言ってるし。おまけに派手にスカートめくり上げて、頭打った反動で足が跳ねあがっている。(ちなみに、下に体育用のクォーターパンツを履いているようだ。)

それと、鼻が上向いて、一瞬だけ非常に不細工に見えた。

女子にあるまじき情景だ。


でも、止まらない。

アイスホッケーのパックみたいに、減速なしで来る。

おー、滑る滑る。

先輩、良い仕事してますね。

そして最終的に、俺に突っこんできた。

「うっ!」

少女の踵が鳩尾にクリティカルヒットした。



無条件に、強制的に選択肢1

うずくまった。

息できねぇ。

恐るべし、先輩方からの贈り物。


何? 俺は今日、厄日なの?

赤崎先輩に出会えた幸福成分を持ってしても、これは埋め合わせできない。

「キーンコーンカーンコーン。」

遠のく意識の中、放送のチャイム音が鳴り響く。




まさか、登校初日にして遅刻届を出さないといけないとは…。


遅刻届

理由:教室まで、数センチの所で女子のスライディング攻撃を、鳩尾に受けて悶絶した結果。遅刻しました。



教頭が、あきれ顔で受理して俺たちは生活指導から、廊下を走るなと厳命されたのは言うまでも無い。


(完全に巻き添えだけど)

 ご感想等ありましたら、書いてください。

 毎回、読んで参考にさせていただいたり、活力にさせていただいております。

 感想や、閲覧数が少ないと、なかなか書く気力がわかない時がありますので、ご協力ください。

 それでは、また来週も読んでいただければ幸いです。today

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