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かでんポータブル  作者: today
第二章かでんがとどいてから
21/35

学校Ⅲ

キュッとじゃ口をひねる音がした後、水が流れる。

彼女の誘導で水をすくい、目を洗った。

「ありがとうございます。」

そう言って、ポケットに手をつっこんでハンカチを探した。

でも、右じゃなくて左のポケットだったらしく、取り出すのに時間がかかった。


それを見かねたのか、彼女に顔を拭かれてしまった。

赤い柔らかな布だった。

「すみません。」

もう、いいところなしだ。

ホントに、最悪のスタートだ。


そう思っていると、女子生徒はハンカチをポケットに入れてしまった。

「そんな、洗いますよ。」

そう言って、顔を上げた瞬間だった。

彼女と目があった。


柔らかな表情に、大きな瞳は吸い込まれそうなほどに黒い。

小さな唇をキュッとしめている。

肌は透明感のある白なのに対し、髪は艶やかな黒。

紺色の制服など目に入らなかった。


「いえ。いいです。私の髪が目に入ったのですから。」

遠慮する姿も、なにか美化されて脳内に響く。

いやー、最初の印象って大事だなと思う。


「いえいえ。そんな、男の顔を拭いたのなんて汚いでしょ。」

女の子に、男の顔の油がついたハンカチを一日持たせるなんて愚行は、許されない。

ここは、紳士的に洗って返すべきだろう。

「いえ本当にいいです。」

あれ? なんか、嫌われたかな?

「そんな、大丈夫ですよ。」

遠慮するのは、日本人の美徳だが、ちょっとくらい言ってくれていいのに。

特にこんな美人なら、進んで洗わせてもらいますよ。

決して臭いをかぐなんてバカなまねしま…せんよ。


ホントだよ。


「その、これを渡してしまうと、今日一日、手を拭けないので…。」

あー、なるほど。

「それなら、俺の使います? まだ、使ってないですから。」

すると、少し驚いた表情をした後、受け取ってくれた。

「おかしな人。」

小さくはにかんだ様な表情で、そう言った。


やばい、美人の笑顔なんて反則だろ。

エアルの裸事件より心拍数が上がりそうだ。


「所で、西藤君は一年生?」

何で名前、知ってんの?!

え?

何処かで知り合ってたのか?

こんな美人(脳内補正あり。)と?

それなら忘れるはずが無い。

いや、でも俺が知らないだけで向こうは知っているなんてことも。

うわー、だったらジミニーなんとかの時代を知られている。

最悪、こんな美人に黒歴史を知られている。


「あの…何か気に障りました?」

無垢な表情のまま、顔を覗き込む女子生徒。

やばい、このままではさらに悪い印象を与えてします。

「いえ、その、何処かでお会いし、しましたか?」

しまった、噛んだ。

「え、いえ。」

「へ?」

じゃあ、なんで?

「あ、名前ですか?ネームプレートをしっかりつけていらっしゃるので。」

あ!

ですよね。

名字だけしか言ってないのに、何を勘違いしてるんだか。

じゃあ、こちらもお名前をかくに…。

やばい…。

何がって?

ネームって、胸ポケットの所に付けてあるので。

分かるでしょ!

男子にとって、女子のネームを見るって事は、女子の胸部を見るって事で…。

目の前の女子は、その…。

大きかった。

いや、平均がどれくらいなのか知らないけど。

あえて、何がとは言うまい。


激しい運動直後の様な疲労感と心拍数の上昇と引き換えに、目の前の女子が赤崎さんという二年三組の人だという情報が手に入った。

完全に余談だが、男子は学ランの襟に校章とクラス章を付けるが、女子は胸ポケットのネームの横に着ける。そして、そのクラス章の色は入学年度によって決まっていて、現在の二年生は緑、我ら一年は赤なのだ。


なんだ、学年違うのか。

多分、彼氏いるよな。


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