学校Ⅱ
木の廊下にうなだれた。
かなり年季の入った床が見える。
でも、表面はピカピカ。
ロウ引きと言う掃除が有名なのもこの学校独特の習慣だ。
分からない人のために、説明するとソウソクのあの白いロウを床に塗りつけ、その後に一生懸命雑巾で空拭きするのだ。
ワックスがけのようなものと考えてくれればいいが、かなりキツイとの噂。
先輩方の苦労の積み重ねで、この床はこれほどに綺麗なのだろう。
こんなにピカピカだと、火を付けたらかなり燃えそうだ。
いや、放火しないけどさ。
と、床に紙屑が落ちている。
先輩方の綺麗にした場所にゴミがあると、なんか許せない。
とりあえず、集めて近くのゴミ箱に入れた。
パシリの性格が身にしみているらしい。
この手の雑用っぽいものが、自然に出来てしまう自分て…。
だれも、見てないよな。
女子に見られてたら、恥ずかしいことこの上ない。
周囲を確認。
気配なし。
さてと、どうしようか…。
クラス探しを再開する。
地道に、一階の教室を一つ一つ教室を見て回るか。
ぺたぺたと音を立てながら、廊下を曲がる。
すると、遠くに人影発見。
「すみません。」
これはラッキーと、駆け寄って声をかけた。
「え?あ、はい。」
いきなり後ろから声を掛けられて、驚いたのか若干上ずった声で、女子生徒は返事をして振り向いた。
その瞬間、時間が止まった気がした。
何がって?
いや、だって視界がゼロになったんだもん。
黒髪ロングの攻撃を受けた。しかも、眼球直撃。
ロマンチックに、彼女の美貌に目がくらんだとかそんな展開でないのが、非常に悔しい。
俺が、あまりに近くに行きすぎたのと、一段高くなった場所にその女子生徒がいたため、彼女が振り返った瞬間、髪が目に入った。
痛い。
超痛い。
でも、高校生活初日で女子に笑われるのは避けなければ。
選択肢1うずくまる。
選択肢2耐える
選択肢3後ろを向いて涙を拭く
目を閉じて耐える!
ここで、後ろを向いては失礼な気がした。
うずくまるなんて最悪だろ。
「すみません。大丈夫ですか?」
彼女は、すぐに謝った。
「いえ、俺が近すぎたのが原因ですから。」
でも、イテー。
目が開かねえ。
「水道。こっちですから。」
俺は手を引かれて、ふらふらと廊下を歩いた。
視界は無いけど、優しく手を引いてくれるのが落ち着く。
包容力のある女性って言うのかな。
繋がれた手は、小さくても温かく柔らかかった。
これって女子と手をつないで歩いてるんだよな。
あれ? なんか、手のひらに汗が…。
緊張してきた。
顔は分からないままだけど、凄く優しいな。




