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かでんポータブル  作者: today
第二章かでんがとどいてから
20/35

学校Ⅱ

木の廊下にうなだれた。

かなり年季の入った床が見える。

でも、表面はピカピカ。

ロウ引きと言う掃除が有名なのもこの学校独特の習慣だ。


分からない人のために、説明するとソウソクのあの白いロウを床に塗りつけ、その後に一生懸命雑巾で空拭きするのだ。

ワックスがけのようなものと考えてくれればいいが、かなりキツイとの噂。

先輩方の苦労の積み重ねで、この床はこれほどに綺麗なのだろう。

こんなにピカピカだと、火を付けたらかなり燃えそうだ。

いや、放火しないけどさ。


と、床に紙屑が落ちている。

先輩方の綺麗にした場所にゴミがあると、なんか許せない。

とりあえず、集めて近くのゴミ箱に入れた。

パシリの性格が身にしみているらしい。

この手の雑用っぽいものが、自然に出来てしまう自分て…。


だれも、見てないよな。

女子に見られてたら、恥ずかしいことこの上ない。

周囲を確認。

気配なし。


さてと、どうしようか…。

クラス探しを再開する。

地道に、一階の教室を一つ一つ教室を見て回るか。


ぺたぺたと音を立てながら、廊下を曲がる。

すると、遠くに人影発見。


「すみません。」

これはラッキーと、駆け寄って声をかけた。

「え?あ、はい。」

いきなり後ろから声を掛けられて、驚いたのか若干上ずった声で、女子生徒は返事をして振り向いた。

その瞬間、時間が止まった気がした。

何がって?

いや、だって視界がゼロになったんだもん。

黒髪ロングの攻撃を受けた。しかも、眼球直撃。

ロマンチックに、彼女の美貌に目がくらんだとかそんな展開でないのが、非常に悔しい。


俺が、あまりに近くに行きすぎたのと、一段高くなった場所にその女子生徒がいたため、彼女が振り返った瞬間、髪が目に入った。

痛い。

超痛い。

でも、高校生活初日で女子に笑われるのは避けなければ。


選択肢1うずくまる。

選択肢2耐える

選択肢3後ろを向いて涙を拭く


目を閉じて耐える!

ここで、後ろを向いては失礼な気がした。

うずくまるなんて最悪だろ。


「すみません。大丈夫ですか?」

彼女は、すぐに謝った。

「いえ、俺が近すぎたのが原因ですから。」

でも、イテー。

目が開かねえ。

「水道。こっちですから。」

俺は手を引かれて、ふらふらと廊下を歩いた。

視界は無いけど、優しく手を引いてくれるのが落ち着く。

包容力のある女性って言うのかな。

繋がれた手は、小さくても温かく柔らかかった。

これって女子と手をつないで歩いてるんだよな。

あれ? なんか、手のひらに汗が…。

緊張してきた。

顔は分からないままだけど、凄く優しいな。


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