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かでんポータブル  作者: today
第二章かでんがとどいてから
17/35

妨害

学校に行かねば出会いなど無い。


そう言って、爽やかな朝の陽ざしの中、住宅街を自転車で走る。

安全走行をしていると。


横から凄い衝撃が走った。

安全運転していたはずなのに、側面から思いっきり何かがぶつかった。


端的に言おう。交通事故だ。

ただの交通事故ならまだいい。

袋に入ったアンパンを咥えた、少女が自転車の横からスライディングしてぶつかって来た。

(確信犯!)

そして、その少女は見覚えがある。


「エアル。何してくれる!」

それを聞いたエアルの反応は…

「遅刻、遅刻!」

「おい!人の話を聞かないエアコンだな!」

悪戯が過ぎるぞ。


自転車の横からエアコンが追突しました。


なんて、シュール過ぎるだろが!

警察の人も、そんな事故報告書、書きたくないだろ。



「あ、ごめん。急いでて。」

「急いで自転車にスライディングする女子がどこにおるか!」



「パンツ見えた?」

そんな暇あるか。

だいたい、サッカーじゃあるまいし、住宅街で危険すぎるだろ。


「もういい。おまえ、あれだろ。登校初日の出会いがどうとかそういうシチュエーションをやりたいのか。」

コクン、と頷くエアル。

「こういう、出会いを演出するのは大事かと。家電として。」

家電にそんな使命は無い!

お前と出会ってどうする。

拳を握るな!何だ、その使命に燃える人間みたいに…。


「それは、初めて出会う人間同士がやる事だ。それと、袋に入ったままのパンを咥えて走る人間は多分いない。」

「はじめまして、エアルです。」

初めてじゃないだろ!



「人間同士だって言うのが分からないのか。」

「私じゃだめですか?」

潤んだ目で見上げてくる。

不覚にも、可愛いと思ってしまった俺は、負けだろうか?


「…上目づかいでもダメ!アンパン袋から出してもダメ」

「マスターは禁止事項が多すぎます。ハムッ。」

アンパン食ったよこいつ。

膨れっ面で、パンに嚙り付く姿はなんだか、ハムスターみたいで可愛かったが…。

食い意地をはるエアコンなんて聞いたことが無い。


そ・れ・よ・り・も !

路上でくつろぐな!

この家電、フリーダム過ぎる。

コンセントから離れられるってのが、こんな弊害を生むとは…。


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