そして、家電のせいで日常は崩れるⅣ
康雄は、地面に正座をし、エアルに向かい頭を下げる。
「このたびは、甥っ子がとんでもない事を。まことに申し訳ない。」
予見的中。
「いえいえ。私の意思でやったことですから、事ですから気にしないで下さい。」
エアルさん、俺を庇った時の事を言いたいのだろうが、その発言はもはや火に油ですよ。
案の定、康雄はばね仕掛けの人形の様に立ちあがり健二に詰め寄る。
「合意の上でも、責任が取れないことはやったらダメだろ。」
「いや、ちがうから。これジュースのシミだから。嗅いでみてよ。」
「男のを嗅ぐ変態趣味は、俺は持ち合わせてないぞ。」
「誰もそんな特殊な趣味に付いて語ってないから。」
「おまえは、十五だ。責任が取れないのだから、軽はずみな行動をするな。」
だめだ、なんか思考が固まっている。
そんな、叔父の発言にエアルがなにを血迷ったのか反論した。
「責任を取るのに年齢は関係ないと思います。そこに、意思と覚悟があればそれでいいと思います。」
それは、他人を助ける時の話だろ!
こいつ、天然なのか?
それとも、話をややこしくするプログラムでも入ってるのか?
狙ってやったなら、ぶっとばすぞ!
ええい!製作者出てこい!
そんな心の叫びを無視して、会話が続く。
「その年で、もう、そんな覚悟が!?」
「へ?当然の事を言ったまでですが。」
康雄が、驚いた様子にエアルは気圧される。
「いや、それほどの覚悟で臨んでくれるのなら、健二を任せるのには頼もしいといいますか、健二にはもったいないといいますか。」
何、父親ぶってんだこのおやじは。
「お名前は、なんとおっしゃるのですか。」
いきなり丁寧語か!
「エアルと言います。」
この雰囲気、ちょっと別の感じになってきてないか?
これ以上はなしがややこしくなる前に、事実を話した方がいい。
「いや、康叔父さん。こいつは、実はロボットというか、電化製品だから。」
「何を失礼なこと言うか!」
凄い見幕で怒られるが、無視する。
「こいつの手を握れば分かるから。」
そう言って、エアルと康雄の手をとり、握手をさせる。
エアルは、エアコンで、表面の素子で温度調整の一部を行はず。(推測)
つまり、今は冷たいはずで…。
握った手は、ほんのり温かい。
まさに、人肌。
安らぐ温度。
っておい!
なぜ?
「健二君。これで、何が分かるのか説明して欲しいのだが。」
表情は普通に見えなくもないが、オーラが完全にやばい。
そのためエアルを引っ張り、小声で話す。
「なぜ、暖かい?自分が電化製品であることを隠さないって言ったばかりだろ。」
「いえ、日が落ちて、外気温が下がって来たため、ほんのり暖かモードにしました。」
「は?暖かモード?」
「知らないんですか?エアコンには暖房があるんですよ。」
きたよ、タイミングの悪い、無駄機能。
そして、余計な気使い。
これ以上はフォローのしようが無い。
このまま進めば、さらに誤解を生みかねない。
「ごめん。方針変更。お前、人間のふりをしていてくれ。」
コレイジョウの、フォローハ、フカノウト、ハンダン、サレマシタ。
私の日常も崩れております…。
今回も、読んでいただけてうれしいです。
1000pv突破記念は、もう少し後で入れます、それほど大したものではありませんが、第一段、第二段を考えて執筆中です。