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かでんポータブル  作者: today
第二章かでんがとどいてから
11/35

そして、家電のせいで日常は崩れるⅢ


「戻ったぞ。」


 叔父が帰って来たのだ。

 部屋を出て、叔父の所へ向かう。

 何事も手順が大切。


「エアル。ちょっと待ってもらえるか?」


 エアルは部屋で待たせ、まずは説明を一人でしようと居間に向かう。

 叔父の康雄は、クーラーボックスから魚を取り出しビニール袋に詰め、冷蔵庫に放り込んでいた。


 細身で長身、しかし、貧弱ではない。

 顔は、少し堀が深く、若干外人に見えるが、純日本人である。

 実年齢は三十四歳だが、二十代と言われればすんなり受け入れてしまうほど、若々しい。


「今日は、結構釣れたぞ。夜は刺身とから揚げだ。」


「楽しかった?康叔父さん。」


 まずは、自然な流れを作る。

 現実離れした話はいきなりしてはダメだ。


「おう。潮の流れが良かったみたいでな。」


 堤防釣りに潮の流れが関係するのかは、健二にはいまいち分からないが頷いておく。


「ちょっと、汗。流してくる。」


 そう言って、一度もこちらを見ないまま、脱衣所に向かう。


「あー。行ってらっしゃい。」


 まあ、風呂に入った後、リラックスした中で話すのもいいだろうと妥協する。

 ひとまずは部屋に戻って切り出し方を考え直してみよう。

 と自室に戻ると、エアルがなにやら探し回っている。


「なにしてんだ?」


「付属パーツといいますか、メンテナンスの道具が見当たらないのです。」


 たしかに、これほど高性能のものなら、メンテナンスが大変だから、それ専用のパーツが存在してもおかしくない。

 誤って段ボールと一緒に捨ててしまったのだろうか。

 現在は幸い、康雄は風呂でしばらく出てこない。

 エアルと一緒に段ボールを回収に向かおうと、廊下に出た時だ。


 勢い良く脱衣所のドアが開かれる。

 そして、慌てた様子で健二を見る。


 どう考えても、ボディーソープが切れていたので急いで取りに来た様子ではない。


「健二君。これはなんだね。」


 そう言って、両手に持っていたのは女性物の洋服と、スカート、下着だ。

 さっき、エアルが身に着けていた物。

 風呂に入る時に洗濯機にでも入れたのが見つかったのだろう。


「君に、こんな趣味があったなんて、叔父としては非常に心配だ。」


 どうやら、女装癖の変態だと思われている。


「そんな趣味は無いから。俺はいたって普通だから!」

 

 必死に訴える。

 すると、エアルが横から口添えをする。


「それは、私ので、先ほどシャワーを使わせてもらったときにそこに置き忘れた物で…。」


 そこで、康雄はエアルの存在に気付いて、目を丸くする。

 そして、健二を見て、さらに眼を点にする。

 その視線を追って見下ろすと、健二のシャツにシミが出来ている。

 さっきのジュースだ。


 ここで、状況を整理しよう。

 脱衣所に女物の服一式が置いてあり、目の前の少女がさっきシャワーを使ったと発言。

 少女の髪は半乾きのため、ほぼ間違いなく風呂に入った。

 そして、サイズの合わない男物のダボダボの服を着ている。

 おそらく、甥っ子の物。

 今日、叔父は外に出ていたため、家の中には少女と甥っ子の二人きり。

 そして、甥っ子の服にはシミが出来ている。


・・・やばい、とんでもない勘違いをされそうな予感。


今回も、ちょい頑張って辻褄合わせをしています

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