そして、家電のせいで日常は崩れる。Ⅱ
健二の部屋は、引っ越してきたばかりのため、まだ小奇麗だ。
机やタンス、布団など一式がそろっている。
特に飾り気は無く、質素というより、殺風景だ。
六畳の砦とは思えないほど、人が座れるスペースがある。
床はまだ緑色をした畳。
とりあえず、座布団を出し二人(?)は座る。
「さしあたって、今後の事を考えるが、エアルはどうする。」
「はい、今後は多機能家電の名に恥じぬよう、最大出力で努力します。」
一点の曇りもない清々しいほどの笑顔での回答。
いや、出力最大とか意味分からん。
火事が起きそうだから、止めていただきたいのは俺だけか?
「そうじゃなくて、人型だと何かと世間体とかがな。分かるだろ。」
「人型だと、いけないのですか?」
可愛らしく、小首をかしげる。
常識をインストールし忘れてんぞ製作者!
「いや、普通は人型の家電は存在しないから、いきなりそんなのが現れるとさっきの自分みたいに慌てると言うか。」
「なるほど、ここでは人型の家電は確かに、私以外は有りませんね。」
しきりにうなずくエアル。
今頃、気づくなよ
「分かりました。驚かせないようにすればいいのですね。」
妙に強い意気込みを見せる。
「分かってくれればいいのだが…。」
「ところで、どうすれば驚かせずに済むのでしょう。」
少しは考えろ。
つうか、馬鹿なのか?
無駄にいろいろ機能があるのに、こう言う思考関係はコスト削減か?
「選択肢は主に二つ。一つは、お前が人間である設定で生活する。もう一つは、お前が家電である事を叔父に正直に言う。これが、大まかな選択肢だ。でお前はどっちがいい?」
するとエアルの眼差しが、真剣になり真直ぐ健二をとらえる。
「私は私。エアコンであることは事実で、自分を偽ることに何のメリットも有りません。こんな自分を恥じる理由も、隠す理由も私の中には有りません。」
なんだかこのエアコンには自我と、意思が存在していることを、健二は実感しそれらを出来るだけ尊重したいと思った。
どのような仕組みでそうなっているのかは、全く理解不能だが。
世間が考えている枠など、所詮人間の考えた古い浅知恵で成り立っている。
それを、新しい時代に生まれた彼女に当てはめるのはナンセンスだ。
これからは、この子の様な存在が増えるかもしれない。
科学技術は日々進歩している。
その先駆けとして、こうして巡り合ったのだ。
これから、自分とエアルの関係は手探りでも、一歩ずつ築いて行こう。
健二がそう決意を固めると、玄関が開く音がした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
どうやら、私の小説で初めて1000pvを超えそうな作品になりつつあります。
これも、皆さんの応援があってのことだと思います。
そこで、理系教科が得意な私が、エアルを作ってプレゼントしたいのですが、残念ながら予算と技術、運送ルートの都合上、不可能と判断され・・・。
小説にてサービスできたらなと思っています。
登場人物への要望や質問コーナーなど。
強い要望であれば、登場させてほしい人物像、擬人化してほしい電化製品も…
と考えております。
書き込みは、感想の欄でも、メッセージボックスでも、活動記録の欄でもOKです。
また、のろまな投稿になりますが、今後ともよろしくお願いします。