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廻る世界の錬金術師(元:面倒事が嫌いな錬金術師)  作者: 空想ブレンド
第一章:土の国ガーランド編
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―005― 魔鉱石と魔剣

―005― 魔鉱石と魔剣


朝になりふかふかのベッドの中で朝の柔らかな太陽の光を感じた聡介の意識は夢の世界から現実の世界へと戻ってくる。


ふぁ~っと大きな欠伸をすると未だ温かさの残るベッドから体を起して1階へと降りていく。


1階へ降りた聡介は工房を通り抜け、裏庭へやってくると水を浴びて身支度を整える。


水を浴びることでさっぱりとし、意識もしっかりと覚醒した聡介は、本日は何をしようかと思案する。


とりあえず工房へと戻った聡介が倉庫の中をみるとダマスカス鋼製の剣が10本と、刀が2本、だいぶ少なくなった鉄のインゴットが置かれている光景が目に入った。


昨日の練成で鉄を大量に消費したことに気付いた聡介は冒険者ギルドへ行き採集の依頼をすることに決めた。


商工ギルドカードを鞄へと放り込み店の戸締りをしっかりと確認してから冒険者ギルドがある方へと歩いていく。


まわりには買い物や、商売の人で賑わっていて元の世界では感じられなかった、人々のいきいきとした様子がみてとれる。


そんな光景を見ながら歩いていた聡介に、まだ幼い女の子が走ってきて勢いよくぶつかってしまった。



「あっ、ごめんね。大丈夫だった?」



後ろへこけそうになる女の子の体を抱えて起こすと女の子は、おにいちゃんありがとー、今度から気をつけるね!と言ってさっきと同じように聡介がきた方向へとかけていく。


素直な子供に少し癒されながら歩く聡介の目の前に、だんだんと冒険者ギルドの建物が見えてくる。


冒険者ギルドへたどり着いた聡介は扉を開け、多くの冒険者がたむろするギルド内へと足を踏み入れる。


真っ直ぐに商工関係の窓口へといくと前の時に受付にいた完璧な営業スマイルが眩しいお姉さんが今日も受付に立っていた。



「おはようございます。依頼にきたのですが、いいでしょうか?」


「はい、大丈夫ですよ。前回と同じ内容の依頼でしたらすぐに発行することができますが、内容が前回と異なる場合にはもう一度用紙に記入していただくことになります。いかがいたしますか?」


「前回と変わりはないので、お願いします。」


「承りました。では、張り出しておきますね。ありがとうございました。」



そういうとお姉さんは席を立ち、冒険者が数人いる掲示板のところへいき依頼所を張り出した。


途中で席にすわっていた男の冒険者数人組が下品な冗談をお姉さんに投げかけていたがお姉さんが営業スマイルを向けると男達は黙り込んでしまった。


完璧な営業スマイルだったが、氷のようなオーラが立ち上っていたのは幻覚か見間違いと信じたい…、怒らせるようなことはしまいと心に誓った聡介であった。


冒険者ギルドから出た聡介は特にすることが無かったので普段よりもゆっくりと店まで帰ったが、そうそうイベントが起こることもなく無事に店へとたどり着いた。




■□■□■□■□■□■□


帰った聡介が店の扉をあけて中へと入り、今日の予定を考えていると袋を抱えた2人組の冒険者が入ってきた。


依頼にしてはまだ承諾もしてないのに袋を抱えた2人組を見て、やけに早いなぁと不審に思っていると片方の男が口をひらいた。



「すいません、まだ依頼の確認もしてなくて悪いのですが鉄鉱石を持ってきました。これにはちょっと理由があって、実は似たような依頼をしていたのですが突然キャンセルになってしまってこれらの鉱石が余ってしまったんです。なので、依頼を見てきてここまできたんですが、買い取ってもらえませんか?」



そういうと冒険者二人組は袋を聡介の前へと差し出した。



「そうだったんですか、それは大変でしたね。あの依頼はまだ誰もとっていなかったので買い取らせていただきます。」



二人の言い分になるほどそういうこともあるのか、と納得した聡介は袋の中を覗き込み鉄鉱石を確認していった。


2つ目の袋をあけた聡介の目に映ったのは、鉄鉱石の形をしているがボンヤリとした白い光を放つ謎の物体だった。



「あの~…こっちのはなんでしょうか?鉄鉱石じゃないみたいなんですが…。」


「あぁ、すいません。そっちのは魔鉱石です。もしよかったら買い取ってもらえませんか?値段は普通より低くても構わないので。」


「魔鉱石?店を準備し始めたばかりで初めて見るので、すいませんがどういうものか説明していただけませんか?」



聡介は魔鉱石ってなんだろう?魔法が何か関係しているのかなぁ…と思いながら困った顔をしている冒険者へたずねるのであった。



「あぁそうなんですか、わかりました。魔鉱石というのはですね。文字どおりに魔力が籠った鉱石なんです。基本的には魔力を抽出すると後に残るのはタダの石ころなんですが、抽出した魔力自体はどの属性にも属さないので、どんな武器にも付与することができ、魔法武器をつくるときに必要とされるんです。あぁもちろん魔力の属性は何にでも変化させることが出来るのでどんな属性の武器もつくることができますよ。」



説明を聞いた聡介は自分に魔力を扱える能力が有ったことを思い出し、それなら活用しない手はないと考えて買い取ることを決める。



「詳しい説明ありがとうございます。ぜひ買い取らせていただきます。それで、報酬なのですがこれぐらいでどうでしょうか?」



買い取りを決めるとカウンターの裏に回り、箱を開けて硬貨を取り出し冒険者2人に150ギルを渡す。


2人組の冒険者は喜んで受け取るとそのまま上機嫌で帰って行った。




■□■□■□■□■□■□



「よし!昨日はできなかったから今日こそアダマンタイトを作ろう!」



2人から魔鉱石を買い取った聡介は昨日疲れて出来なかったアダマンタイトの剣を創る、と意気込んでいた。


大量の鉄鉱石を目の前にもってきて練成をするためにそれらの上に手を重ねて置く。


イメージは薄緑色の大剣で、不要な装飾をつけない実用重視の無骨でありながらも力強さを感じさせる剣。


イメージを保ちつつ練成を開始する聡介。


音は既に聞きなれてきたバチバチという音が工房の中に響き渡る。


しばらくして目を開くと、そこには何も変わらないただの鉄塊しかなく、アダマンタイトが精製された様子は微塵もない。



「あ、あれ!?……失敗…?なんで…?………そうか…アダマンタイトは鉄に見えるけどアレは確か単一元素で構成されるものだっけ…。だから鉄じゃ反応しないのか…。でも、これじゃぁどうやって作るのか分からないし…。困ったなぁ…。」



この世界にない元素をどうしようかと困った聡介が、顔をあげると目の前でぼんやりと白い光を放つ魔鉱石が目に入る。


その様はまるで自分を使えと言っているようで、聡介の手は自然と魔鉱石へと延びていた。



「う~ん…ただ、分解して配列を変えても意味ないだろうし…この魔鉱石の魔力を加えてみたら新しい元素が創りだせるかも…。可能性は低いかもしれないけど、やってみる価値はあるかも。」



魔鉱石を使うことに決めた聡介は魔鉱石を鉄鉱石の隣へと移動させる。


聡介は魔力を操るすべは知らないが、聡介の手が魔鉱石を直接掴むと掌から冷たい水が流れ込んでくるような感覚がした。


きっとコレが魔力なのだろうと思いながら、魔鉱石を効率よく使うために魔鉱石の部分とただの石の部分とに分けて、魔鉱石を一つにまとめる。


一つにまとまり巨大になった魔石へと手をふれると先ほどとは比べ物にならないほどの魔力が一気に体の中へと流れ込んでくる。


体から溢れだす限界ギリギリまで魔力を取りこみ、素早く鉄鉱石へ手を重ねて置き練成を開始する。


頭の中では、鉄の原子の中に魔力をねじ込まれた薄緑色の傷つかず刃こぼれしない最硬の金属をイメージし、体から溢れだしてしまいそうな魔力を鉄鉱石の上に重ねた掌から鉄鉱石へと放出する。


聡介の体からは余剰魔力があふれ出しその全身を神秘的な白い光で染め上げる。


光を発し続ける聡介はまるで聖書に出てくる聖人のように光り輝き、聡介を見るものがいたならばあまりの神々しさに目を奪われるだろうほどである。


溢れる魔力を体に押しとどめる聡介は歯をくいしばり、集中力をさらにあげて練成し続ける。


バチバチという音は既に変化して高圧電流のごとくバチンッバチンッと弾ける。


その音がようやく止み、練成がおわったことを感じると、聡介のひざがガクンと崩れて片膝をつくことになった。



「ハハハ…これは…疲れる…なぁ…。もぅちょっと…慣れなきゃ厳しいなぁ…。」



荒くなった息を徐々に整え、溢れる汗を袖をつかってぬぐうと予想外の疲労に、聡介は魔力を制御する技を身につけることを固く誓うのだった。



「これで出来ていなかったら…考えたくもないなぁ…。」



そういうと膝に力を込めて立ち上がり出来ているであろう剣へと目を動かす。


そこには薄緑色の輝きを放つ、刃渡り95cm全長125cmの巨大な剣がその威容を誇っていた。


余計な装飾をつけないその剣は、使われる時を今や遅しと待ち構えて牙を剥きだす猛獣の姿を彷彿とさせる。


本物の剣だけが放つ迫力に聡介は一瞬気押されるが、その剣を両手にもつとすぐにざわざわと心がざわついた。


今すぐ斬りつけたい。


ふと疑問に思い、何を?と思った瞬間、聡介はあわててその剣を手放した。


聡介は知らずのうちに剣の持つ暴力性という魅力に引き込まれかけていたことを感じる。


剣としての本質までも完成させられた剣は人を魅了する魔剣となりうることを聡介が身を持って知った瞬間だった。


聡介はこの剣は扱う人によってはあまりにも危険すぎると思い、普段は飾るだけで、売る時にはその人の見極めをしなければならないと心に刻み込むとその剣を倉庫へしまうのだった。



「ふぅ…。ちょっと引き込まれそうだった…。剣を創る時は気をつけなくちゃいけないな。…ちょっと休むことにしようかな。」



倉庫へ剣を片づけ、工房から出てきた聡介はベッドへと戻り一休みするのだった。




■□■□■□■□■□■□


1時間ほど休憩すると聡介はすっかり元気になっていた。


かといって、無理をするつもりはなかった聡介はそれからしばらくしてから工房へと戻ることにするのだった。


工房へ戻ると聡介はそろそろ開店にむけて品数を増やさなければいけないことに気づく。


売り上げがないとローンも返せれないし、生活も出来なくなるというのは実に切実な問題だった。


手持ちのお金にはまだいくらか余裕があるが永遠にそれが有るわけではない。


そう決めた聡介は一番数を売り上げることができるだろう普通の鉄剣―もちろん不純物が少ないので鉄剣としては一級品―と、一般的な鉄製の防具―これも耐久力はかなり高い―を製造することに決めた。



「う~ん、これだけ有れば十分かな?」



そういいつつ20本目となる鉄剣をつくり終わると聡介はふうっと一息ついた。


それらを含め全ての武器と防具を倉庫へと片づけ、商品の配置を考えるために店舗部分に移動する。



「…やっぱりちょっと少ないなぁ…。」



店内の商品の配置を考えた聡介だが、どうしても一角が空いてしまうことに悩み、どうするべきか考え込んでいた。



「う~ん…防具も武器も置く場所はきまってるし、このスペースじゃぁあまり置けないし…。」



キャッキャと表の通りで話し合う女の子たちの声に、ふと顔をあげた聡介の目に映ったのは斜向かいに店を構える雑貨屋だった。


雑貨屋の前には木でつくられたアクセサリーを見ている女の子たちがいて、それをなんとなく眺めていた聡介の頭にうかんだのはアクセサリーをつくるということだった。


アクセサリーにしようと決めた聡介は、店から出て―もちろん鍵はした―いき、染料屋と布屋にいった。


様々な色の塗料と布を買った聡介は、店へともどり工房に入ると、鉄を錬金術で成形して様々なデザインをつくり、それに酸化しないように塗料をかぶせると、布から練成した紐にソレらを通して、ネックレスを20点ほど作り上げた。


それだけではあと少しスペースを埋めるのには多少たりなかったので今度は鉄製のバングルを10点ほど作り、染料を上からかぶせて様々な色のバングルを作っていった。


仕上げたネックレス20点と、バングル10点を飾り付けると、悩んでいたスペースがきれいに無くなり聡介は満足した様子だった。


それから工房へ戻り、魔鉱石から魔術師のための魔力回復の魔石の玉を5個ほどつくるとカウンターの上に置いた。


ぼんやりとした白い光を放つ魔石の玉を見て、見た目的にもインテリアっぽくていいと思った聡介はこれまた満足そうに笑顔をうかべるのだった。


これでやっと開店準備が整った聡介は商品を工房の倉庫の中へとしまいこみ、新装開店のために掃除を始めることにしようとホウキを手にした。


遮るものが無い店内で練成を行えば光が外にもれて錬金術をつかっているのがばれるため、大変だなぁと汗を垂らして感じつつもホウキを手に掃除に集中する聡介であった。




■□■□■□■□■□■□


掃除が終わると日が落ちてすっかり暗くなっていたので、聡介は前にエドガー達と食べた酒場らしきところで本日の晩御飯をとることに決めた。


酒場へと向かっているとエドガーが店の片づけをしていたので、声をかけて食事に誘うとエドガーは快い返事を返した。


2人が酒場につくと前回と同じ席へ―どうやらココはエドガーの定位置らしい―と案内され、適当に食事をたのんだ。



「ソウスケは今日は機嫌がよさそうだな、何かあったのか?」



そういえばまだ言ってなかったと思った聡介は明日新装開店をすることをエドガーへつげた。



「実は明日、やっと新装開店するんです。それで今日は気分がよくて…。これもエドガーさんが右も左もよく分からなかった僕を色々御世話してくれたおかげです。」


「いや、人生の先輩として少し手伝っただけだ。ここまで来れたのはソウスケ自身の力だ。俺はなんもしてねぇよ。…それにしても、ついに新装開店かぁ…。良かったな、ソウスケ!」



エドガーは頭をかきながらそうは言ったが照れていることは少し赤くなった顔を見ればすぐに分かった。



「おい、お前らぁ!聞いたか!?明日ソウスケの店が新装開店だとよ!せっかくの新装開店だ、今日は全員で祝いの宴会にしよう!」


「おぉ、その坊主がお前が話してた新人か!よかったな、坊主!」


「ふふ、オープンおめでとう、ソウスケくん。お姉さん応援してるわよー。」


「ふぉふぉふぉ、君がソウスケ君じゃったのか。わしも応援しとるからのぅ。」


「あらやだ!かっこいいわねー、おばさんのお店きたら安くしてあげるからねぇ!」


「経営しっかりしろよー!」


「今日はせっかくのお祝いだ、金はいらねぇから明日に備えてたらふく食っていきなぁ!」



エドガーが突然声を張り上げるとソレに答えるようにして店内にいたほとんどの人が口ぐちにお祝いの言葉をかけてきた。


どうやらここの酒場にいるのはエドガーと深い仲の人ばかりらしく、エドガーとおなじように面倒見がよく温かみのある人ばかりだった。


色々な人から祝いの言葉をかけられていると再度エドガーに話しかけられた。



「ワハハハハ!ここら辺で商売する奴らはこんな奴らばっかりだから安心して営業すりゃぁいい!それにここらの奴らは助け合ったりして商売してるからソウスケも困ったことがあったら誰にでもいえ!きっとなんとかなる!だからガンバレ!」



エドガーさんの応援の言葉に胸が熱くなるがソレを抑え込み、周りの騒ぎに消えないように大声で返事をする。



「僕も!エドガーさんの店に負けないぐらいがんばるんで見ていてください!絶対追いつきますから!!」


「ワッハッハッハッハ!!その意気だ!!今日は飲むぞー!!」



威勢のいい返事を返したソウスケに満足したエドガーは豪快に笑いながら酒を掲げて一気に飲み干した。


騒がしい晩餐はソウスケが明日のために…と言って途中で帰ってからも続き、笑い声が絶えることはなかった。

6324字でございます。ついに累計PVが1万をこえました♪

書き手としてはこれほど嬉しいことはないです。

ユニーク数ももうすぐ2000に到達しそうな感じなのでとても嬉しく思います。

でも、その分期待にこたえなきゃという重圧は強くなる一方で…。

これからも皆様に満足していただける作品がかけれたらいいなと思います。

次回から商売が始まります。お楽しみに!

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