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廻る世界の錬金術師(元:面倒事が嫌いな錬金術師)  作者: 空想ブレンド
第二章:土の国デザートランド編
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―031― 盗賊団と討伐

―031― 盗賊団と討伐


最近商人を襲撃したところで略奪した強力な武器と、同じく最近になって加わった傭兵くずれの冒険者を盗賊のグループに引き入れたことで、盗賊団「荒野の猟犬」(デザートハウンド)は活気づいていた。


傭兵崩れの冒険者の腕前は存外に良く、商人を襲ううちに目潰しや、砂かけといった盗賊団らしい卑怯な技を習得していくうちにどんどんとその腕前が上がっていった。


その腕の良さと、卑怯なことにも躊躇しない様にほれ込んだ盗賊団のリーダーは、その元傭兵達に手に入れたばかりの聡介の武器を数点与えた。


強力な人材を得た盗賊団は以前にもまして勢いづき、山中に構えたアジトから頻繁に街道周辺に出没するようになっていった。


そして、今夜も盗賊団は商人の馬車を襲い、警護のために雇っていたのだろう冒険者達の装備や持ち物もろとも一切合財をアジトに持って帰っていった。


今回の商人の馬車の積荷は、地方の町の商人の物だったのか食料や、調味料、酒などといったものが多く、それらの全ては今晩の宴のためにとアジトの中の荒削りの木のテーブルの上に並べられていた。


その中でも酒の減りは特に早く、調子にのって用意された酒をガブ飲みしていた数人は既にその意識をまどろみの中へと落としている。


もちろん、外には見張りのために最低限の人間を配置しているが、その見張りの様子を見ると自分たちも参加したくてたまらないというような様子だった。


盗賊団というものに属している荒くれ者達が暴れださずにガマンできているのは、あとでしっかりと飲み食い出来ることをリーダーから保証されているのもあるが、一番はリーダーの統率力によるものだ。


リーダーは各々に嫌がる仕事を押しつけることはせず、盗賊団に入る前にしていた仕事などで適材適所に人員を配置し、それでもまわらない時は負担にならないように考えて人を配置したり、襲撃時に的確な指示を出し、被害を最小限にとどめるなどといった面を見せ、盗賊団に属する者たちからの信頼を得ている。


しかし、だからといって誰にでも優しくしているわけではなく、自分勝手な行動ばかりを繰り返す者や、襲撃対象に対しては一切の慈悲も見せず冷たい目をして文字通り斬り捨てるなど冷徹な面も持っているので、リーダーが甘くみられるということはない。


そんなリーダーを擁する盗賊団だが、一人だけ例外がいる。


それがニールだった。


妹のサーシャが盗賊団によって人質に取られてしまっているためニールは盗賊団に抗うことが出来ないでいるが、心中ではいつかサーシャを助け出してこの場所から逃げてやるという思いがいつもあった。


そして、その最大のチャンスがこの日やってきた。 




■□■□■□■□■□■□


宴の会場の片隅で片膝を抱えて座り込んでいたニールが最初に耳にしたのは見張り役の言葉だった。



「ふもとの方から何かきやがった!きっと騎士団の連中だ!すげぇ数だ!」



宴のために外に出てほどほどにだが酒を飲んでいたリーダーがその言葉に反応して顔を上げ、情報を伝える伝達役としてやってきた男から詳細を聞く。


「まぁ落ち付け。ふむ……そいつらは松明をしっかりと持っていたか?」


「暗闇で人影はあまり見えなかったが持っていたぜ!松明炊いて集団でびっしり固まって動いてやがった!」



伝達役の言葉を聞いたリーダーは何か閃いたのか、酒で程よくほぐれていた気分を引き締めて指示を出し始める。


「なるほどな。そいつらは恐らく陽動だ。大方両手に松明を掲げて人数を多く見せているだけだろう。まずは後方と側面に警戒。ただし東側は谷だ。最小限でいい。後方からは上から矢を射られないように開けた高台を警戒しろ。西側では…、そうだな、下手に突っ込まずに様子を見ておけ、そうそう相手から突っ込んではこないはずだ」


「お頭!正面からのはどうすんだ!?」


「焦るな、今言う。正面からの奴らは坂を登ってくるから突破力は薄い。こちらも西側同様構えてまっておくか、こちらから矢でも射ってしまえ。相手が数の差で突破しようとしてきたときは防衛用に積んでおいた木材を転がせ。勢いが落ちたり怪我を負ったところで上から襲ってやればいい」


「了解、お頭ぁ!まかせてくれや!」



お頭の支持を聞いた盗賊団の男は伝達のためにすぐにその場から飛ぶようにして去って行った。



「さて、今のうちに用意をしておくか……」



慌ただしくなってきたアジトの中で一人口元を隠してニヤリと笑うリーダーのキース・オルグレンは、周りにいる他の盗賊団に指示を出しつつ、元傭兵達へさりげなく視線を飛ばしながらアジトの中へと入って行った。




■□■□■□■□■□■□



「さて、どうしたものか……」



賊討伐のために選抜されたベルナルドは今の状況からどう手を出そうかと悩んでいた。


当初、ベルナルドの立てた作戦として、夜中に松明を両手に抱えて集団で迫るイメージを相手に与えつつ、実際はごまかした人数分を敵の後方に送り込み、上下から挟撃させるというものがあった。


しかしそれは盗賊団のリーダーによってすぐに悟られてしまったのか、後方に回り込むつもりで動いていた騎士達は予定外のタイミングで接敵し、足場の悪い山の森の中での戦いを強いられていた。


騎士用の甲冑を着た騎士達は馴染みのない足場の悪い山の斜面で鎧の重さで微妙にバランスを崩したり、森の根っこに足を取られたりと精彩を欠いていたが、その反対に盗賊団は身軽な装備のため、練度で劣っていても互角以上の戦いを繰り広げていた。


後方へ回るはずの部隊が接敵したことで挟撃という作戦は使えなくなり、必然的に正面を攻める予定だったベルナルドの部隊は人数的な面でも地理的な面でも突破力が足りなくなり、敵への散発的な攻撃を行いながらのにらみ合いの最中だ。


初めの方こそ、興奮した賊の方から数人が飛びだしてきて武器を構えつつ突っ込んできたが、それ以来盗賊達の方からは特にこれといった攻撃らしいものはない。


盗賊側は砦があるのであくまでも守りの姿勢を崩さなかった。


攻める側としては地理的にもきついので今の何倍かの人数がほしいところだが、砦の後方へと回した部隊は混戦状態のため使えず、西側の部隊はコチラと同じく膠着状態らしく動かせられないので、圧倒的に人数が不足していた。


予想以上の敵の動きを見て、一旦引いて作戦を練り直した方が得策か?と考えるベルナルドだったが、首を振ってその考えを頭の中から追い払う。



「どうしたものか…。」



部隊を預かる身のベルナルドは戦場にて一人ごちた。




■□■□■□■□■□■□


ベルナルドはその日国王へと謁見することが予定に入っていた。


手負いとはいえ、一人でオーガを討伐し訓練部隊を危機から救ったことや、その他にも多くの討伐などの手柄を立てたことで表彰されるとのことだった。


騎士として、王から表彰されるということはとても名誉なことなため、謁見するための最上級の騎士用の礼服へと着替えたベルナルドは緊張の色を隠せないまま、自宅をでた。


表彰式自体は、ベルナルドの声が途中で裏返ったことを除けばスムーズに進み、無事に終了することができた。


しかし、それからがベルナルドにとってまさに寝耳に水の事態だった。



「日ごろ政務でお疲れでしょうから騎士殿の話でも聞いてみるのはいかがですか?たまには息抜きも必要かと…」



国王のそばに控えていた宰相が国王にそう進言すると、国王もそれもそうだな、たまにはそれでもいいかと、宰相の言葉にうなずき、そのまま部屋を移しての歓談となったのだ。


もちろん最初はベルナルドの活躍した時の話などを語ってみろと言われて、不敬にならない程度に冗談を織り交ぜつつ、楽しい歓談となっていた。


しかし、ベルナルドの話が一区切りしたころ合いを見計らっての宰相の発言が問題だった。



「そういえば、最近王都から地方の村へと続く街道の近くで賊が出ましてね。これがただの賊だと思っていたら存外に強く、少々手を焼いているのですよ。」



この宰相の言葉を聞いた瞬間に、ベルナルドはざわっ…とイヤな予感を覚えていた。



「ベルナルド殿。この賊討伐の件をアナタにまかせようと思います。活躍を聞く限り、今のベルナルド殿なら適任でしょう。もちろん、いきなりの任務なので特別に報酬も用意しておきましょう。どうですか?国王も彼が適任だとおもいませんか?」


「そうだな。クラックスもいいことをいうではないか!成功の暁には特別に報酬を君の部隊分送ろう。期待しているぞ、ベルナルド」



国王の言葉にベルナルドは片膝を立てて跪きながら了解の言葉を返したが、内心では冷や汗ものだった。


もしかしたら王都から精強な騎士を派遣するのがイヤなだけかもしれないが、もし本当に手こずるレベルの賊ならばベルナルドも当然手こずることは間違いないだろう。


それに活躍を語ってしまったばっかりなので、下手な成果を上げて戻ってくることも厳しく、特別報酬も出すとのことなので失敗は許されない。


そして、なによりも一番の問題は国王の発した言葉だった。


国王自体は期待しているぞ!と気軽にいったつもりなのだろうが、もし成功しても、相討ち寸前のボロボロの状態で勝ちを拾うようなに情けない結果だったならば、期待を裏切ったということで国王から処分があるかもしれない。


流石にそこまで怒るようなことはないだろうが、万が一ということも考えると、国王の気分次第で営倉送り、騎士剥奪、死刑まで罪の重さなど思うがままだ。


もし、国王の気分を損ねずになんとか許してもらえたとしても、田舎者だった自分を面白く思わず引きずり降ろそうとする勢力に国王の期待を裏切ったと持ち出されれば、反論は難しく状況は悪くなるだろう。


ベルナルドにとってもはや負けることも、引き分けることも、ただ勝つことも出来ず、良い結果を出して任務を成功させるだけ、がこの難題における達成条件だった。



■□■□■□■□■□■□



「ベルナルド殿ー!」



敵のアジトを前にしてこれからどう攻めようかと考えていたベルナルドの耳に後方から声が飛び込んできた。


ベルナルドがその声に反応して後方へと首を回すと、そこには50人ほどの人数の小隊が整列している。



「やぁ、ベルナルド殿。私はこの小隊を率いるルミナスです。実は私も宰相閣下から命を受けましてね。本来ならば共同の任務にあたる者として顔合わせをしなければならなかったのですが、命を受けたのがつい先日で準備の方にかかりきりで時間が取れなかったのですよ。小々遅れましたがよろしくお願いします」



小隊の先頭からベルナルドの方へと甲冑をガチャつかせながら歩いてきたルミナスは、スラスラと言い切ると、よろしくと言いながら手を差し出してきた。



「あぁ、こちらこそヨロシクお願いします。貴殿が来て下さったおかげで攻めるのがだいぶ楽になりそうですよ」



思わぬ増援に内心驚きつつ、ルミナスと握手を交わしたベルナルドは、これで攻め込むのに人手が増えると思うと気が楽になった気がした。



「そうですか、それはよかった。では、早速ですが戦況を聞かせていただきますか?」


「そうですね、では……」


ベルナルドは各場所の状況を地面に簡単な図を書きながら説明をしていき、ルミナスはその言葉を聞きながらふむふむと頷く。



「なるほど、戦況は膠着していますね。私の隊を散らしてもそうそう状況は変わりそうにないですし…。ふぅむ、敵のアジトの門はここから正面に一つだけですか…。となるとこの人数で攻めるにはこの正面から攻めるしかないようですね」


「しかし、相手もそのことは分かっているのだろうな。まだまだ丸太を落としてこれるようにそこら中に丸太が転がっているし、弓もこちら側に向いている」


「そうですね。しかし、いつまでもこうしているわけにもいかないでしょう。どこかで仕掛けなければただ消耗するだけです。……落ちてくる丸太に注意しつつ一気に攻め込むことにしましょう。数も勝っていますし、鎧も来ているから矢も下手なところに入らなければなんとかなるでしょう」


「やはり、それしかないか。それではなるべく散らばるようにして一斉に攻めるとしますか。固まって1つの丸太で大勢が立ち止まるよりはこの方がいいでしょう」


「そうですね、ではその作戦で5分後に」



ルミナスはそういうと自身の部隊のところへと戻り、自分が連れてきた部下達へと命令を出し始めた。


その様子をチラッとだけ見たベルナルドも、すぐに自身の部下達へとこれからすることへの命令を出し始めた。


5036文字です。とても久々の更新ですね。申し訳ありません。

最後の投稿から3カ月ほどたちましたね。待っていて下さる方がまだいたのならば、お待たせいたしました。

私は実は今夏休みでゆっくりと時間がとれているのでこうして更新したわけなのですが、夏休みが終わってしまうとまた更新がかなりかかりそうです。

それと理想通りの物語が作れないことへの不満というか、自分への苛立ちというべきもののせいでなかなか机に向かうということもできません。

本当に不定期更新になってしまって申し訳ございません。

更新が止まっている現在でも一日に約400件のユニークがあるのを見ると、少し涙が出そうになります。


これからも不定期になると思いますので、期待せずにお待ちください…。

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